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異世界転生してもステータスはそのままでって言ったのですが!?  作者: 桜霧琥珀
一章 初めてのおともだち
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14 勝負ですわ!




 私が呼びかけると、なぜかリグレットさんはニヤリ、と笑みを浮かべました。


「ファーリ。貴女、なかなかの才能をお持ちですのね」

「は、はい……えっと?」


 どうも、様子がおかしいのです。

 全属性魔法の適性やストレージの技能レベルがバレているにしては、『なかなかの才能』という評価はちっぽけすぎます。


「あの、リグレットさん」

「何かしら?」

「私のサーチ結果って、皆さんに見えていたのですか?」

「いいえ。恐らく、教員の方々以外には見えないようになっていましたわ。正確にステータスが見えた人はいないでしょう……それが何か?」

「いえいえ!」


 どうやら、私に集まった注目は『たくさんの教員に囲まれて、大規模なサーチをされている10歳の少女』に対してのもので、『全属性魔法適性と耐性、ストレージの使えるバケモノ』に対してのものではなかったようです。

 私から見えていたのは、私に隠す必要が無かったからなのでしょう。


「ステータスが開示されていなくとも、教員の方々があれだけ集まっていれば、相当なものであったことは想像がつきます。……悔しいですが、前期試験でのわたくしよりも騒動が大きかったようですもの。ファーリが実力者であること自体は、既にほぼ全ての受験者に知れ渡っていることでしょう」

「うっ……嫌なのです、私、目立ちたくないのです……」


 私は頭を抱えてうずくまります。

 魔法適性やストレージのこと、そして名前もバレてはいない様子ですから、思っていたよりはずっとマシな状況です。

 けれど……だとしても、既に私は受験者の間では注目の的でしょう。


 現に、既に私の方にいくつも視線が飛んできます。行き交う受験者の視線がちらり、またちらり、と何度もこちらに向かってきます。


「目立ちたくないとは……ファーリ、それは無理というものですわ。ハンター学園の試験をその歳で受け、あまつさえ合格などしてみせれば、誰もが注目しますわ。諦めなさいな」

「うう、でもでも、私はできる限り普通に、目立たず平穏にことを終わらせたいのです……」

「でしたら試験など受けなければよろしかったのですわ」

「そうもいかないのです。パパに言われて、修行の為に身一つ後ろ盾無しで立派なハンターになる必要があるのです」

「なるほど、それがダズエル家の教育方針ですのね。それでファーリがここにいる、と。ようやく理由もはっきりしましたわ」


 うっ。つい、流れで本当のことを話してしましました……。

 私が不安に揺れる目でリグレットさんを見ると、リグレットさんは笑います。


「安心なさいな。秘密をわざわざ他言するつもりはありませんわ。わたくしだって、人に言えぬ事情の一つや二つ、ありますもの」

「ありがとうごじゃいましゅ……」

「そ、そんな涙目で感謝されるほどのことではなくてよ!」


 ともあれ、ひとまず私の秘密が公然とバレる心配は無さそうです。


「そんなことよりも、ファーリ。貴女の才能を見込んで、わたくしからお願いがありますわ」

「はい?」


 リグレットさんのお願い。

 これは喜んで聞きたいところです!

 私の秘密をちゃんと黙っていてくれる素敵な人なのですから、私にできることなら何でもやるのです!


「いえ……お願いというよりは、そうですわね。申し込み、という方が良いかしら」

「はあ、どのようなお願いなのでしょう」

「勝負ですわ」

「はい?」

「ですから、勝負です。わたくしとファーリで、この後の試験の成績を競うのですわ」


 そ、それはまずいのです。

 私は目立ちたくないのです。

 リグレットさんと競い合って、10歳の女の子がリグレットさんに匹敵する、場合によっては勝っちゃうような成績を出すのはまずいのです。


「あ、あのリグレットさん。私、できればそういう目立つようなお願いはよしてほしいのですが……」

「諦めなさい。貴女はどうあがいても目立ちますわ。それならわたくしと共に目立てば良いのです。1人で目立つよりは、2人で目立った方が貴女に集まる注目も散らせるというものですわ」


 そうだろうか。

 いや、むしろリグレットさんに向いていた分の注目まで私に集まってくる気がするのですが……。

 そもそも、リグレットさんの言った理由など方便でしょう。恐らく、私と勝負をする為の。


「……あら、これだけ説得してもまだお願いを聞いてくださらない?」

「はいなのです。目立つのは嫌なのです」

「それは残念ですわ」


 リグレットさんは諦めたような口ぶりで言います。

 でも、なんかわざとらしい言い方でした。


「わたくし、残念すぎてちょっと心に油断が出来てしまうかもしれませんわね。そうなると、ひょっとすれば、極めて低い可能性の話なのですが、うっかりファーリをフルネームでお呼びしてしまうこともあるかもしれませんわ」

「うっ」

「それも衆目の集まる場で、大きな声で。わたくしがつい、そういう気分になってしまっても、仕方ありませんわよね。ファーリが勝負を受けて下さらないんですもの」


 悪魔です。リグレットさんは素敵な人ではなく、素敵な悪魔さんでした。

 まさか、私の秘密を脅しに使ってくるとは。


「……分かったのです。勝負を受けるのです」

「あら、心変わりしていただけましたの? 喜ばしいかぎりですわ」


 わざとらしく、リグレットさんはニコニコ笑いながら言いました。

続きが気になる、面白い! ええやんけこの作品! などと思って頂けたらブックマークや評価の方をよろしくおねがいします!

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