19 深夜の問いかけ
国境を目指す旅の初日。
かなりの距離を稼ぎましたが、まだまだ目的の場所は遠いです。
この日は太陽の沈むギリギリの時間まで走り続け、その後になってようやく野営の準備をしました。
しっかり食事もとって、あとは眠るだけです。
リグとアンネちゃんは走り続けていたのもあって、すぐに眠ってしまいました。
私だけが、眠れずに目を瞑ったまま寝転がっています。
今日はリグに訊かれて、お姉さまと会った後、どうするのかを考えました。
私は、お姉さまを連れ戻すつもりで覚悟を決めました。
でも、やっぱり今でも少し怖いのです。
私がどれだけお姉さまを許そうと考えたところで、お姉さまはそうでないかもしれない。
何かよくないことを考えていて、そのせいでまたひどい目に遭うかもしれない。
どんなに頑張ったって、元通りには戻れないのかもしれない。
そういうことを考えるほどに……いえ、勝手に頭が考えてしまって、私は苦しくなります。
「――カミさま、聞こえますか?」
私はふと、カミさまを呼びます。
「聞こえてるよ」
カミさまの声が返ってきます。
気付くと、眠る私の傍らに座っていました。
「カミさまは、私はどうしたらいいと思いますか?」
私はつい、そんなことを訊いてしまいます。
私のことをずっと見ていて、私の心もすべて覗いているはずのカミさま。
そして、私よりもたぶんずっと長生きで、いろいろ知っているはずのカミさま。
だったら、私よりもずっと適切な答えを選んでくれるような気がしました。
「ずっと、考えているのです。お姉さまとは、もう一度ちゃんと話をして……返ってきて欲しいって思っています。でも、それでいいのかわからなくなるのです。私はお姉さまを、もっと壊してしまうかもしれません。そして私も……お姉さまに、もっとひどいことをされるかもしれません」
私は、胸の内を正直に告白します。
「無理やりされた時みたいに、お姉さまは私を自分の都合で好き勝手するつもりなのかもしれません。そうじゃない、って私は信じたいのです。でも……怖い気持ちは消えないのです。不安なのです」
「ユッキー……」
私の言葉を聞きながら、カミさまは私の頭を撫でます。
そして、なぜか悲しそうな声で言います。
「……ごめんね、ユッキー」
「えっ?」
私はなぜ謝られたのか分からなくて、驚いてしまいました。
そのまま目を開き、身体を起こしてカミさまと向かい合います。
「どうして、カミさまが謝るのですか?」
「んっと、それは、まあ。理由はあるんだけど……」
カミさまは歯切れ悪く言いつつ、視線を反らします。
「そ、それはともかく。私は、ユッキーの選択ならそれが一番だと思うよ」
「なんだか、話をはぐらかされた気がするのですが」
「……ごめんね」
「いえ、その、はっきり理由も分からないのに謝られると困るのです」
カミさまは謝るだけで、理由は言ってくれません。
私はカミさまが何か言ってくれるのを待ちます。
けれど、次にカミさまの言った言葉は謝罪の理由ではありませんでした。
「とにかく私は何があっても、どんな時でもユッキーの味方だから! ――それだけ、信じてほしいな。私が、ずっとそばにいるから」
カミさまはそれだけ言うと、フッと姿を消します。
逃げるように姿を消したカミさまに、私はつい苦笑してしまいます。
謝られた理由は分かりませんが、とりあえずそれは置いておきましょう。
今はお姉さまのことが先です。
そして……カミさまも私の選択を応援してくれるんでしたら、やはり迷っている場合ではないな、と思います。
覚悟を決めて、お姉さまと向かい合います。
そしてお姉さまを連れ戻し、そこから何をどうするのか――よく考えておこう。
そう、はっきり決意して再び横になり、目を瞑るのでした。
少しずつ、ファーリの内面がハーレムへ前向きな感じになりつつあります。
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