18 国境への道
リリーナ先生から貰った休学届は、お昼休みには書き終わっていたので、すぐに提出しました。
そして午後からは、国境へと向かう旅の為の準備です。
と言っても、食料関係は日頃から十分すぎるほどストレージに貯蓄してありますし、野営道具もしっかり揃っています。
主に、自分たちの部屋を片付け、1ヶ月不在となってもいいように支度しただけでした。
他にも、長期の旅程で役に立ちそうなものをいくらか買い求めたり、国境までの正確な地図を買ったりということはしました。
そして翌日。
私たち3人は、早朝に寮を出ました。
向かうはゴルトランドとの国境。
お姉さまが……モンスターと戦っているはずの場所。
ステータスではAランクハンターで通用するものがある私たちであれば、馬車を利用するよりも走ったほうが速くなります。
特に私は……全力であれば、数日あれば目的の場所に到着できるでしょう。
けれど、今回はそこまではしません。
リグやアンネちゃんと一緒にお姉さまのところへ行くことが、目的だからです。
私一人では心細く、お姉さまとしっかり話し合えるのかが不安です。
だからこそ、リグとアンネちゃんがついてきてくれるのはとてもありがたいのです。
それに、リグとアンネちゃんもお姉さまに言いたいことがあるようですし。
結果として、私たちは3人でペースを合わせて進むこととなりました。
馬車で3週間かかる距離ですが、この調子なら2週間ほどで到着できそうです。
そんな道中、私はリグに問われました。
「ファーリ。クエラさんと会った後はどうするつもりですの?」
「どうって……それは、お姉さまとよく話して、あの日どういうつもりであんなことをしたのか、聞き出すつもりです」
「違いますわ。その後です。聞き出して、どうするつもりですの?」
言われて、私は首をかしげます。
「それは、その時考えようと思っているのです」
私が答えると、リグは首を横に振ります。
「それでは恐らく、時間がかかってしまいますわ」
時間がかかる、という言葉の意味がわからず、私はリグの方を見ます。
リグは、しっかりと説明をしてくれるようです。
「いいこと、ファーリ。クエラさんは恐らく、貴女を襲ったのも決して悪意あってのことではなかったはずですわ。そしてもちろん、純粋な善意でも、善行でもない。クエラさんの行動は、はっきりと白か黒かに分別することができないのです」
言われてみれば、確かにそのとおりです。
私は白黒はっきり付けて、そうすればお姉さまを許すか、それとも恨むかを決めるつもりでいました。
けれど実際には、そうもいかないみたいです。
「ファーリが何も決めていないまま話を聞いたところで、結局は何を決める判断材料にもならないでしょう。それでも、貴女はすぐに決断できるのかしら? 無理ですわね。間違いなく、迷いますわ。そして……何も決断できないまま、時間ばかり過ぎていくことでしょう」
リグに言われた通りの未来が、私にも容易く想像できました。
今この段階で何も決められない私が、白にも黒にも決まらないお姉さまの心を聞いたところで、結局は何にも変わらないでしょう。
せっかく会いに行っても、何も変わらないまま帰るような羽目になりかねません。
だから、リグは訊いたのでしょう。
どうするのか、と。
「……そうですね。分かったのです」
私はリグに言われたことをよく受け止めて、決断しました。
「まだ少し怖く思いますけれど、それでも私にとって、お姉さまはお姉さまです。このまま、嫌な関係のまますべてが終わるなんて嫌なのです。ちゃんと仲直りしたいのです。だから――お姉さまの本心がどうであっても、関係なく連れ戻したいと思います」
そもそも、お姉さまを追いかけて旅にまで出たのです。
なのにもう一度会って、拒絶してそれっきりもう会いません、と言うわけにもいかないのです。
怒るにしても、遠く国境に行かれたままでは怒る対象がいなくて困ります。
だから、お姉さまを連れ戻すのは当然の選択なのです。
そんな私の決断を聞いて、リグは頷きます。
「そう。なら、わたくしは当然ファーリのやりたいことを手伝わせていただきますわ」
「当然、アタシもにゃ!」
アンネちゃんまで一緒になって、私の助けになってくれることを約束してくれます。
「……ありがとうございます」
私は、自然と感謝の気持ちのあまり、ありがとうと口にしていました。




