14 強要と後悔
私は、突然血を吸われても拒否することが出来ませんでした。
もしもここで、お姉さまを拒否して嫌われてしまったら。
そう思うと、拒否するつもりになれませんでした。
着実に、お姉さまは私から吸血していきます。
その量はとても多く……普段からたまに吸われる時もありますが、そういう場合の倍以上の血液が吸われていきます。
そしてその分、吸血の効果で私の頭はほわほわ、ふわふわと暖かくなって、何が何だか分からなくなっていきます。
気持ちよくて、もう何も考えなくてもいいや、というような感覚に陥ります。
やがてお姉さまが吸血を終えた頃には、私は身体を動かすのもままならないほどの状態になっていました。
少し手足を動かすだけで、ピリピリとしびれるような快感が全身を駆け巡ります。
こんな状態で身体を動かせば……それを考えると、恐くて動く気になれません。
というか、身体を走る快感に反射して、全身がこわばってしまうので実際に動けもしないのでしょう。
お姉さまはそんな状態の私を、ゆっくりと医務室のベッドに寝かせます。
そしてそのまま、私の上に覆い被さるように伸し掛かります。
「ファーリ。……僕は、今から君を愛する」
言って、お姉さまの手が私の頬をするりと撫でます。
それだけで、腰がびくりと跳ねるぐらいの快感が走ります。
「この愛を……行為を望まないというなら、拒否して欲しい。嫌だ、と一言言ってくれるだけでもいい。そうでないなら……最後にするから、どうか受け止めて欲しい」
どこか泣きそうな表情で、お姉さまは言います。
その言葉に、私は返事を決めかねてしまいます。
私はリグと愛し合っているから……そういう、不貞な真似はできません。
でも、今お姉さまを拒否してしまうと……お姉さまに嫌われてしまいそうで、それが恐くて否定もできません。
どうすればいいのでしょう。
それを必死に考えます。
でも、頭がぽわふわのおバカになっている今の状態では、正解がわかりません。
私が何も答えられないでいるのを見て……お姉さまは、それを肯定の意味だと勘違いしました。
「――じゃあ、触るよ」
その一言と共に、お姉さまの手がするすると私の身体を這います。
そして、制服のボタンが1つ、また1つと外されていくのでした。
――ようやく身体の自由が戻ってきた頃には、既に全ての行為が終わった後でした。
私は、医務室にあったシーツの1つを羽織るようにして……ベッドの上で呆然としています。
勝手に涙が、いくつも流れ落ちてきます。
既に、医務室にはお姉さまの姿はありません。
お姉さまは行為を終えると、こう言いました。
「ごめん。もう二度と、こんなことはしないよ」
その一言だけを言い残して、お姉さまは医務室を去っていきました。
去り際のお姉さまの表情は……多分、後悔をしていたように見えました。
罪悪感かなにかで、とても気まずそうにしていました。
そんな顔をするなら……なんで、こんなことをしたのですか。
どうして、無理やり私を抱いたのですか。
全く、意味がわかりません。
理解できません。
ともかく……意識がはっきりしてきた今、私の胸の中には不快感と、罪悪感、そして嫌悪感が残りました。
無理やり行為に及んでおきながら、自分が被害者みたいな顔をしていたお姉さまへの不快感。
リグ以外の人としてしまった、行為を拒めなかったことへの罪悪感。
そして何より――そんな状況でも、たとえ吸血されていたとしても、身体がお姉さまの指に喜び震えていたことによる、自分自身への嫌悪感。
生まれて初めて感じた、というぐらい真っ黒な感情で、胸の中も頭の中も、ぐちゃぐちゃのどろどろになっています。
「……帰りましょう」
私はぽつり、とつぶやきました。
もう、この部屋には居たくない。
それに……今は、誰とも合いたくない。
その条件を満たすには、寮に帰って引きこもるのが1番です。
私はそこらに散らばった自分の衣服を集め、着直してから、ゾンビのように重い足取りで寮へと帰っていきます。
レズは女の子を襲うからね、仕方ないね!
うん、偏見ですね。
ファーリちゃんかわいそう! 元気だして! って方はブックマークや評価ポイントで応援してあげてください!




