12 ミスによる大怪我
「――お姉さま!」
私は慌ててお姉さまの方へと駆け寄ります。
命までは奪わない程度に威力を加減していたお陰で、お姉さまは死んではいません。
けれど、これ以上の戦闘続行は不可能でしょう。
なにしろ、無数のプリズムブリッツを身体に受けたのですから。
手足は骨が折れ、身体中に打撲の痕があります。裂傷による傷や出血も多く見られます。
この世界、ファンタズムでは命に関わるほどの怪我ではありませんが……それでも、身動きはほぼ取れないでしょう。
ここまでするつもりはありませんでした。
集中力を欠いたせいで、攻撃が苛烈になってしまいました。
結果として……望んでも居ないのに、お姉さまに大怪我を負わせてしまいました。
「あはは……負けちゃったね」
お姉さまは、苦しそうに表情を歪めて言います。
ライフはゼロになる寸前で、怪我もひどいのでかなりの大怪我と言えます。
むしろ……ライフは、一度ゼロになっていたのでしょう。
自然治癒の技能があるお蔭で、少し回復しているようです。
ライフがある限り、かなりの大怪我でも命に別状はありません。
それはこの世界、ファンタズムのルールです。
でも……だとしても、私は想定以上の大怪我をお姉さまに負わせてしまいました。
リリーナ先生の治癒魔法があるのでこの大怪我でさえ安全圏ではあるのですが……私の感覚が、前世の記憶が後悔を強めます。
私はお姉さまに、治癒魔法をかけながら謝罪します。
「ごめんなさいなのです、お姉さま。……とっさのことだったので、威力の加減に失敗してしまいました」
私が謝罪している間にも、怪我はどんどん治癒されていきます。
折れた骨は治って、血は止まって、傷は塞がります。
私が治療しているところに、リリーナ先生も駆け寄ってきて、治癒魔法を一緒に使ってくれます。
やがて、お姉さまの身体は癒え、怪我らしい怪我は無くなります。
それでも、まだライフは半分も回復していません。
あれだけのダメージを追ったのですから、内蔵にも負担があるでしょう。
これでもまだ、お姉さまは辛いはずです。
「2人とも、ひとまず医務室に行くといい。クエラ君は当然だが……ファーリ君もアーマーの上からとは言え、あれだけの攻撃を浴びたのだ」
「はい、わかったのです」
私はリリーナ先生の言葉に従います。
強い魔力を込めたアーマーはダメージを軽減してくれますが……それでも、私のライフは残り2割弱ほどです。
身体に痺れのようなものも感じますし、医務室で休憩するのがいいかもしれません。
「お姉さま、立てますか?」
「……ああ、大丈夫だよ」
私が訊くと、お姉さまはゆっくりと、自力で立ち上がります。
身体を重そうにしてはいますが、歩いて医務室に向かうぐらいは問題なさそうです。
「私も肩を貸すので、一緒に行きましょう」
「……そうだね、よろしく頼むよ」
私は、肩にお姉さまの腕を回し、歩きだします。
なんと、ブックマークはついに1000件を突破しました!
めでたい! そしてありがとうございます!
皆さん、これからもよろしくおねがいします。




