08 模擬戦の授業にて
翌日。
パッとしない頭のまま、私は授業に向かいました。
昼頃までぼんやり過ごして、気づけば昼食も終わっていました。
そして、午後で最初の授業、模擬戦です。
「――それでは、模擬戦の組み合わせを発表する」
リリーナ先生が、紙を持ち、その内容を読み上げます。
模擬戦の授業は、基本的に先生の方で組み合わせを決めます。
というのも、生徒にまかせていたら、いつも同じ組み合わせばかりになってしまいます。
あるいは、極端に強いひとが、自分より弱いひとを虐めるような状況にもなってしまいます。
生徒からの要望も加味してくれますが、最終決定はすべて先生の方でやっています。
組み合わせは、基本的に実力の近い者同士となります。
なので、私はお姉さまやアンネちゃん、リグとよく模擬戦をすることになります。
といっても、それは半分ぐらいで、もう半分はクラスの成績上位者のうち誰かと、という形です。
実力的にはわりと差がありますが、それでも同じ生徒とばかり組み合わせるのは良くないのでしょう。
さて、今日は誰と組み合うことになるのでしょうか。
「――次に、第六試合。ファーリとクエラだ」
今回は、身内と組むこととなりました。
「お姉さま、よろしくおねがいします」
「こちらこそ。手加減はしないからね」
「望むところなのです!」
私とお姉さまは、軽くお互いに声を掛け合います。
そして――模擬戦は順調に進みました。
第五試合はちょうどクラスの成績上位者同士の戦いだったので、なかなか白熱した、見どころある試合になっていました。
けれどまあ、私たちから見れば拙いものではありましたけれど。
というのも、動きが明らかに『試合』の動きなのです。
相手に何が何でも勝ちたい、という動きではありません。
良く言えば正々堂々。悪く言えば馬鹿正直な戦い方でした。
それは、他のクラスメイトの模擬戦でも同じでした。
そういう戦い方では……正直言って、いざハンターとして活動する時に、足元を掬われかねません。
格下にさえ倒される危険があります。
「では続いて、第六試合。ファーリとクエラは前に出なさい」
リリーナ先生に言われて、私はお姉さまと共に前へ――試合を行う舞台の上へと上がります。
「授業だからって、手加減はしないからね、ファーリ」
「はい。私も全力を出すのです」
私はそう言ってみせます。
全力、とは言っても、それはスーパーコードを駆使して作った私の最大限の実力で、という意味ではありません。
というのも、その秘密は今の私のステータスにあります。
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ファーリ・フォン・ダズエル(Fali Fon Dazzuel)
状態:アバター
ライフ:32098
パワー:55483
攻撃力:2015
防御力:1402
魔法力:5472
敏捷性:2155
技能:剣術(A) 弓術(B) 槍術(B) ストレージ(S)
魔法適性:火(S)、水(S)、土(S)、雷(S)
風(S)、光(S)、闇(S)、命(S)、無(S)
魔法耐性:火(S)、水(S)、土(S)、雷(S)
風(S)、光(S)、闇(S)、命(S)、無(S)
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状態のアバターというのが、実は重要だったりします。
というのも……今、私が使っている肉体は私自身のものではありません。
レリック魔法で作った、仮の肉体なのです。
なぜそんなことをしているかと言うと……1つは、私自身の修行のためです。
スーパーコードさえあれば最強かとも思えますが、油断をするつもりはありません。
もしも同格――つまり私と同じくスーパーコードを使える相手と戦うようなことがあったなら。
そう考えると、ただ力があるだけでは意味がありません。
勝負を分けるとしたら、恐らくは戦闘の経験や勘。
つまり、同レベル以上の相手と戦うことで培われる能力というわけです。
それを育てるには、同格以上の相手と戦うのがベストです。
そのためには……Sランクに偽装したステータスや、私の本来のステータスは不適切と言えます。
そこで作り出したのがこの肉体、アバターです。
レリックアーマーに、さらに私の肉体と同じものを受肉させる要領で生み出した、もう一つの身体。
それがこのアバターです。
能力的には、私がカミさまの封印を解除してもらう以前の私をベースに作りました。
ざっくり言えば、かつての実力のまま生まれたもうひとりの私、といったところでしょうか。
ちゃんと訓練をすれば、その分成長もします。
仲間であるリグやクエラお姉さま、アンネちゃんにとってもいい修行仲間にもなりますし、ちょうどいいのです。
ちなみに、みんなには修行のためにカミさまの力で封印してもらっている、と説明しています。
さすがに……既に私はスーパーコードによる存在改造の結果、実体を持たない存在となっていて、普段の身体は映像の上にレリックアーマーを重ねているだけで、同じ要領でいくつでも自分の肉体を生み出せる、なんて説明をするのは無理なのです。
ぶっちゃけ、我ながらなんでもあり過ぎてビビります。
ファーリさんはナメプ……じゃなくて手加減して周囲に合わせたレベルで修行するようです。
強くなるために余念がないのでしょうね!
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