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42 誓いの夜景




「リグ。目を開けて、下を見て下さい」

「ええ……分かりましたわ」


 私に言われ、リグは恐る恐る目を開けます。

 そして、眼下に広がる光景に目を向けました。


「まあ――素敵」


 そこには、王都の街中の明かりが敷き詰められた、まるで星空のような景色が広がっていました。


 まだ夜遅い時間ではないので、商店や一般家庭の明かりがちらちらと光っています。


「ファーリは、この景色をわたくしに?」

「はい、それもあります」


 私は頷きます。

 実際、この景色はいつかリグに見せたいと思っていました。

 噂に聞いていたのは展望台からの景色ですが……時計塔の頂上なら、全方位を見渡せます。

 実際に、リグも前後左右を見回して、楽しそうに笑っています。


「ただ……ここに来たのは、伝えるならこういう場所のほうがふさわしいかと思ったからなのです」


 私は言いながら、お姫様抱っこしたままのリグを、ゆっくりと下ろします。

 リグも足元に気をつけながら、慎重に時計塔の屋根の上に立ちます。


 私がここに来た理由は……告白するなら、どうせならロマンチックな場所がいいな、というそれだけの話です。

 夜景を見ながらプレゼントをして愛をささやく……定番のシチュエーションです。


「それで、その伝えたいことというのは?」


 リグが、私と向かい合います。


 私は、緊張しながらも、言葉を選んで口を開きます。


「……ずっと、本当にずっと伝えたいと思っていたことがあるのです」


 ゆっくりと、少し遠回りをしながら話していきます。


「リグは、私たちが初めて出会った日のことは覚えていますか?」

「もちろんですわ。……あの時は、年下のくせして私よりも強さで目立つなんて、生意気だと思ったものですわ。今では、そんなこと少しも思いませんけれど」

「そうですね。勝負して、お互いを認めあって……私がおバカなので、少し遠回りをしましたけれど、あの日二人はお友達になりました」


 私は思い出しつつ、胸の中の思いを確かめます。


「それからずっと、リグと一緒でしたね。朝から夜まで、寝ている時までずっと一緒でした。私は、リグに触れて、リグの温度に包まれて、とっても幸せでした」

「ふふっ。そう言ってくれると、嬉しいですわ」


 リグがはにかみ、微笑みます。

 そうやって、リグが喜んでくれるから、私ももっと嬉しくなります。


「私に、かけがえのない幸せをくれたのはリグなのです。特別で、何があっても手放したくない。そう思える時間を私に与えてくれたのは、リグなのです。だから……これからも、ずっとリグと一緒がいいのです」


 私は言うと、すっとストレージの中から1つのものを取り出します。

 白真龍の山の山頂で手に入れた、宝石の花です。


「だから――私は、リグに伝えたかった。知ってほしかった。そして、受け止めてほしかったのです。大好きだ、ってこと」


 そして、私はリグに、宝石の花を差し出します。

 リグは、すっかり驚いたような表情で私と、そして宝石の花を交互に見ています。


「え? あの、ファーリ……?」

「リグ、どうか受け取って下さい。これは、私の気持ちの証。私とリグが、出会えたこと。そして……私が、リグのことを、何より一番大好きだって思っていること。それを私が――この世界で、どんな奇跡よりもずっと素敵だと思う証です」


 私は、一呼吸置いて、決定的な一言を言います。



「愛しています、リグ」



 私の言葉をじっと聞いていたリグは……不意に、ぽろりとひと粒の涙を零します。

 そのまま、リグは微笑みます。


「わたくしも……貴女のことを愛していますわ」

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