31 マーキング
私は光の玉から逃げながら、自分の持つ技能の中に、上手く使えるものが無いか考えてみます。
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剣術(S) 弓術(S) 槍術(S) ストレージ(S)
精密ダメージフロー(S) カウンターコード(S)
コード強制(S) 即死強制(S) 即死カウンター(S)
ゴーストピアス(S) マーキング(S) ストールダメージ(S)
スーパーアライブ(S) スーパーフリーズ(S)
レリック(S) スーパーフロー(S) スーパーサーチ(S)
コード強制耐性(S) 食らい判定消失(S)
喰らい偽装(S) デリート耐性(S) アーマー(S)
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スーパーサーチで自分が持つ技能をチェックしながら、その内容を確認していきます。
すると、その中の1つが目に止まりました。
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マーキング:攻撃の当たった相手のことをコード上で記憶しておくコード。
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マーキング、という言葉を見ると同時に、カミさまから流し込まれた知識の1つが蘇ります。
マーキングしておけば、例えばマーキングした相手をコード強制するコードや、ライフを減らすコードなどが使えるようになります。
そう、ファンタズムにはマーキングしている時だけ使える特別なコードが存在するのです。
そして、マーキング中のコード強制は攻撃によるものではないので、白真龍の耐性を突破できます。
問題は、マーキングの条件です。
相手を記憶しておく、といっても、マーキングは永久ではありません。
マーキングした相手が体勢を立て直したり、私自身が新たな攻撃を放ったりすればマーキングは外れます。
また、攻撃を当てなければマーキングは成立しないので、無敵の相手にはマーキングができません。
さらに、アーマーのある相手を攻撃してもマーキング出来なかったりします。
なので、アーマーを持つ白真龍はマーキングできませんし、光の玉はレリック魔法ですが、攻撃を受ける為の判定領域を持っていないので、そもそも攻撃が当たりません。
つまり、単純なやり方ではマーキング不可能、ということです。
――けれど、私の頭の中には勝利のための道筋が見えていました。
マーキングを利用すれば、勝てると確信しています。
カミさまからもらった知識を活かし、うまくマーキングやレリックを使えば……白真龍をコード強制で即死させることが可能です。
私はさっそく、勝つために必要な行動をとることにしました。
「ふふ、こんなものなのですか?」
私は、白真龍の光の玉のブレスから逃げながら、あざ笑うように言います。
「何だと?」
私の言葉に、白真龍は反応します。
「この程度のブレス、なんの驚異にもならないのです。何十発でも、何百発でも回避してみせるのです。それに、こんなよわよわブレスなんか当たったところでどうせ大した威力も無いのです」
「ふん……小癪なことを言いおるわ。良かろう、そこまで言うなら、その言葉が嘘でないことを証明してみせよ!」
白真龍は怒って、光の玉のブレスをさらに吐き出します。
2つに増えたブレスを、これもまた私は余裕で回避します。
2つの光の玉は、私の敏捷性の前には意味を成しません。
「ぬう……ならば、こうだ!」
白真龍はしびれを切らし、更に光の玉を吐き出します。
それも、次々と。
無数の光の玉に追われることとなった私は――ニヤリ、と笑います。
そうです。これこそ、私が望んだ状況なのです。
光の玉が、次々と増やされていきます。
それは――言うなれば、次々と新しいレリックを光の玉に変えている、ということでもあります。
では――例えば、白真龍が新たに光の玉に変えたレリックを、既に私がマーキングしていたとすればどうなるでしょうか?
その答えが、ようやく見れるようになりました。
「――ッ!?」
白真龍がさらなる光の玉を吐き出そうと口を開いた時、それと同時に白真龍の顔が驚愕に歪みます。
そして、次の瞬間。
「――ギャオオオオオォン!」
白真龍は、巨大な咆哮を上げ、大きくうねり、のたうち……最終的に、ドシィン! と大きな音を立てて倒れます。
その巨体は、もうピクリとも動きません。
当然でしょう。
白真龍は……コード強制によって、自分自身が持つ即死コードを実行してしまい、ライフがゼロとなって戦闘不能になったのですから。
「……ふぅ。うまくいったのです」
いつの間にか、私を追いかける光の玉も消滅していました。
放った白真龍が意識を失い、倒れているせいでしょう。
ともかく、これで私の勝利なのです。




