16 出発と凶報
「――荷物は持った? 食料と水は余分に用意したかしら?」
「はい。一ヶ月は大丈夫な量をストレージに入れてあるのです」
私はリグの入念なチェックを受けながら、王都周辺の外壁のうち、白真龍の山へと続く方角の門がある方向へと歩いていました。
後ろからはお姉さまと、アンネちゃんがついてきています。
もちろん、みんな私を見送りに来てくれたのです。白真龍の山までついてくるわけではありません。
「モンスター避けの魔道具に、侵入者の探知結界用の魔道具、それと簡易の防御結界の魔道具は持ったかしら?」
「もちろんなのです。三つとも、普段からストレージに常備してあるのです」
「なら――」
「リグレット様。心配なのは分かりますが、もう同じ質問を三周は繰り返していますよ」
後ろから、お姉さまが呆れ混じりの口調で注意します。
言われて、リグも恥ずかしそうに頬を染めて、口をつぐみます。
「……だって、私は私のファーリが心配で仕方ないんですもの」
リグがぼそりと呟いた声は、不意打ちで私の心臓をドキリと跳ね上げました。
私の、ですか。ふふふ。嬉しいことを言ってくれるのです。
心配されるのも、所有されるのもリグなら悪い気はしません。
胸の内がくすぐったくて、つい笑みを零してしまいます。
「安心して下さい、リグ。ちゃんと準備はしたのですから。朝も一緒に荷持の確認をしたのですよ?」
「ええ、それは分かっていますけれど、でも……」
リグは言い淀んで、その直後に私を抱き寄せ、ぎゅっとしてくれます。
「でも、何日もファーリと離れ離れなんて、やっぱり辛すぎますわっ!!」
「うっ。リグぅ……私もなのですぅ~!」
ひしっ、と私もリグを抱きしめて返しました。
「できるだけ早く帰ってくるのです!」
「ええ! そうしたら、何よりも真っ先に、抱きしめてさしあげますわ。そのためにも、明日から毎日こちらの門の前まで迎えに来ますわっ!」
「ありがとうなのです!」
「当然のことですわ。一刻もはやく会いたくなるに決まっていますもの!」
「リグっ!」
「ファーリっ!」
ぎゅうっと、二人で抱きしめあいます。
人の往来もあるなか、私とリグはらぶらぶ仲良しオーラを撒き散らします。
でもまあ、私がまだまだ子供の年齢というのもあって、ただの仲良し二人組って感じでしか見られていないはずです。
リグも、世間的にはまだまだ子供の年齢ですし。
若いからこそ、人目を気にせずイチャイチャできます。
これも若さの為せる技なのです。
――と、そんなこんなをしているうちに、門の前まで到着してしまいます。
「では、行ってきます!」
私は見送りの3人に敬礼するような格好で挨拶をしました。
「わたくし、待っていますからね」
リグは微笑んで言います。
「上手くいくといいね、応援しているよファーリ」
お姉さまは私の背を押すように言ってくれます。
「美味しそうなモンスターのお肉、期待してるにゃ!」
アンネちゃんは……えっと、何でしょう。お土産を頼まれてしまいました。
こうして、私は門を潜り、3人の視線を背に受けながら、白真龍の山へと向かっていくのでした。
――そこを丁度、慌てた様子で王都に戻って行くハンターの女性が通り過ぎました。
何かあったのでしょうか。
まあ、大きな事件でもない限り、私には関係ないはずなのです。
気にせず行きましょう。
私は膨大なステータスを活かし、人とは思えない速度で街路を走っていきました。
その後方で、どんな会話がされているかも知らずに。
「――大変だッ! 白真龍の『転生』の予兆が現れたぞッ!」




