06 放課後の呼び出し
今日も無事、一日の授業が終わりました。
私は荷物をまとめて、帰る準備をしてしまいます。
「――ファーリ。少しいいかな?」
不意に、クエラお姉さまが話しかけてきました。
「どうしたのですか、お姉さま?」
「ちょっと、話したいことがあってね。この後、少しだけ時間を作ってくれないかな」
「いいのですよ。えっと……リグが一緒にいてはダメなお話ですか?」
「うん、そうだね。僕とファーリの二人だけで話したいことがあるんだ」
お姉さまに言われ、私は隣で帰る準備をしているリグに視線を向けます。
「いいですわよ、ファーリ。わたくし、先に帰っておきますわ」
「分かったのです、リグ。ありがとうなのです」
「うふふ。一緒に帰りたかったのですけれど。この分はどこで埋め合わせしていただこうかしら?」
「あう、えっと……」
「ふふっ、冗談ですわよ。気にせず行ってらっしゃいな」
リグがそう言ってくれたので、話は決まりました。
今日は大好きなリグと一緒に帰るのはおあずけです。
その代わり、帰ったらいつもよりたっぷりと甘えてしまいましょう。
「では、お先に失礼しますわ」
リグが先に帰っていきます。
「アタシも先に帰っちゃうにゃ~。さよならにゃ!」
アンネちゃんも帰っていきます。
私は、お姉さまと二人で教室の人が減るのを待ちました。
放課後になれば教室には誰も用事が無いので、すぐに人は居なくなります。
私とお姉さま、二人っきりが残りました。
「それで、お姉さま。お話というのは何なのです?」
私が訊くと、お姉さまはなんだか難しい顔をします。
「……そうだね、単刀直入に訊こうか。ファーリは、リグレット様のことは好きかい?」
何を、当たり前なことを訊くのでしょう。
そんなの、答えは決まっています。
「はい。大好きなのです。リグは、私の1番のお友達なのです」
「本当に?」
お姉さまに疑われて、私はなんだか悲しくなります。
私がリグを好きだという気持ちを、お姉さまはなぜ疑うのでしょうか。
「本当に、大好きなのです」
「ああ、いや。そうじゃないよ」
お姉さまは苦笑いを浮かべます。
私が首をかしげると、お姉さまははっきりと言います。
「ファーリは、本当にリグレット様のことを『友達』として好きなのかい?」
友達、という言葉を強調して言われました。
どきり、と心臓が跳ねて、緊張が走ります。
「もういいや、率直に言うよ。ファーリ、君はリグレット様のことを、一人の女性として好きになってしまったんじゃないかな?」
お姉さまは優しく、なるべく問い詰めるような言い方にならないように訊いてきます。
ここまでバレていれば、言い逃れはできません。
私は、正直に頷くことにしました。
「はい。私、リグのことが好きです。世界で1番、誰よりも好きです。大好きなのです」
お姉さまは、私の答えを聞いて、頷きます。そして、一つため息をついてから、話を続けます。
「ファーリの気持ちは分かった。でも、それがどういう意味を持つのか理解しているかな?」
「え?」
お姉さまは諭すような言い方で、私には理解できないことを話だしました。
「君がリグレット様を好きであるということ。リグレット様と、そうだね……例えば結婚して、一緒になって、どちらかが入嫁になるとしたら。それがどういう意味を持つか、理解しているかい?」
「えっと……リグと結婚したら、毎日リグと一緒で、毎日夫婦でイチャイチャできて、とっても幸せなのです」
「はぁ……うん。なるほど」
私の答えが何か悪かったのか、お姉さまは深くため息をつき、呆れたような声を漏らします。




