12 神の意図
パパから、ハンター学園に向かえと言われた、その日の夜。
私は落ち着きも取り戻し、自室でこれからの事を考えていました。
そして、冷静になった頭で考え込んでいれば、自然とある存在、ある可能性に気付きました。
「カミさま。聞いているんでしょう?」
私は、どこにともなく呼びかけました。
すると、白髪赤眼の少女が、ふわり、と姿を現しました。
その姿を睨みながら、私は様子を伺います。どうやら、カミさまは浮かない表情をしていました。これから私に何を言われるのか分かっているのでしょう。
私は、カミさまを問い詰めます。
「言いたいことは色々ありますが、とりあえず私の魔法適正について、知っていることを全て教えてください」
私に問われて、カミさまは言いづらそうにしながらも、ちゃんと口を開きました。
「……ユッキーの魔法適正は、全属性そして無属性に高い適正があるよ。それに全属性、無属性に耐性がある」
カミさまの言葉に、私はつい項垂れてしまいます。
魔法。そして属性。
ファンタズムに存在する魔法という力には、8つの属性があります。
火、水、土、風、雷、光、闇、命。これに加え、どの属性も持たない魔法も存在し、それを特に無属性魔法と呼びます。
通常、普通の人は魔法の適正を持ちません。そして、四人に一人ほどの割合で、どれか一つの属性を操る力があると言われています。
ちなみに、実際には平民には十分な教育が行き届いていないこと、適正と扱う才能は別であることから、魔法を使える人間は十人に一人程度しかいません。
そして、複数の属性を操る才能となれば貴重になります。
2つの属性を操れるだけで、魔法使いとしては飛び抜けた才能を持っていると言えます。
3つの属性を操れるとなると、王宮に使えているレベルの人でもなかなかいません。
古代の英雄の一人、大賢者様でさえ扱える属性は5つまでだったそうです。
なのに――私には、8つの属性の適正がある。
加えて、無属性魔法の適正もある。
無属性魔法は、どの属性にも属さない魔法のことです。
これを扱える人は非常に稀で、魔法使い千人に一人、とも言われるぐらい珍しい才能なのです。
極めつけには、耐性まで持っています。
耐性とは、その属性の力の影響を軽減する力です。
普通は、防具や魔法で意図的に付与するものです。
それが――私には、生まれつき全ての魔法に耐性があるというのです。
確かに、魔法適正と魔法耐性は同じ属性を持って生まれやすい、とは言われています。
しかし、それも必ずというわけではありません。適性があっても、耐性が無い場合も多いのです。
ですから、生まれつき全ての魔法に耐性を持っている、というのは規格外です。
こんなにも、飛び抜けた能力、私は望んでいませんでした。
私の願望、平穏に幸せに暮らしたいという条件を考えても、あまりにもやりすぎな能力です。
「どうして私に、そんなにもずば抜けた魔法適正、魔法耐性があるのですか」
「それは……ユッキーの要望通りにした結果です」
「平穏に、幸せに暮らす為の力ですか? それにしては、やり過ぎではありませんか!?」
私はつい、語気を荒げてしまいます。パパを傷つけてしまったことで、自分の想像以上の鬱憤が溜まっているようです。
「違うよ! 私が無理にあげたんじゃない。ユッキーには、元から魔法の才能があったんだよ」
怒りに歪む私の顔が、とたんに驚きの表情に変わりました。
元から?
それは――前世の、南条雪穂の頃から?




