27 ケント……ちゃん?
さて、ケントくんの問題よりも、今はライゼンです。
「ほう、人探しでここまで来たか。して、その一応大切な生徒とはどんな生徒であったのだ? 吾輩も、そやつを探すのを手伝ってやってもよいのだが」
ライゼンはニヤニヤ笑いながら、白々しく言います。
まずそもそも、ケントくんをさらったのは濃縮オリハルコンゴーレムです。
そして、そのゴーレムが自分のものだとライゼンは主張しました。
つまり、ライゼンは自分がケントくんをさらったのだとほぼ自白したようなものなのです。
おそらく、こっちがライゼンを疑っていることも理解しているでしょう。
その上で、こうしてニヤニヤ笑っているのです。
何が狙いか分かりませんが、気分が悪いのです。
「ケント君は、茶髪でそれほど背の高くない、太り気味の少年だった。今日はそれなりに上質な革装備で身を固めていたが、その下の服は平民では手が出ないほど高級なものであったように思う」
「ふむふむ、それで?」
話を聞きながら、ライゼンは中に浮かぶのを止め、地上に降ります。そして、抱きかかえていた女の子も降ろします。
そして、女の子はなぜか逃げようともせずに、どこか不満げな視線をリリーナ先生に向けていました。
「あと、ケントくんは無闇な自信家であったからな、勝てない相手と分かっていても、無謀にも得意な土魔法を駆使して勝負を挑んだだろう。また、事あるごとに貴族であることを鼻にかけた物言いをする。一度会話をすれば、悪い意味で忘れることのできん少年だ」
リリーナ先生の言葉が続くほどに、なぜか女の子の顔が真っ赤になっていきます。口なんかは真一文字にむすんで、拳は強く握ったままぷるぷる震えています。
「さて、これだけ特徴を挙げたのだ。知らぬとは言うまい、ライゼンシュタイン伯爵よ」
「はっはっは、当然である。吾輩がよもや、そのようなせこい言い逃れをするわけがなかろう?」
ライゼンは、何やら愉快そうに笑います。
その笑い声には、どこか無邪気なものがあるように感じられて、一瞬だけですが、敵であることを忘れてしまいそうになります。
「では、ケント君の居場所を教えてもらおう」
「くっくっく……そうだなあ、そやつは今、すでにここにおるぞ」
「なにッ!?」
ライゼンの言葉に驚いて、リリーナ先生だけでなく、私たちも辺りを見回します。
しかし、どこにもいません。スーパーサーチを駆使して周辺を見回しますが、人っ子一人いません。
「ふはは、どこを見ておる! お主らの眼の前におるじゃないか!」
ライゼンの言葉を聞いて、全員がライゼンの方へ向き直りました。
そして、どう見てもライゼンと、女の子しか居ないのを確認して、みんなライゼンを睨みつけます。
ですが――ああ、私だけは、スーパーサーチを使いながら振り向いてしまったので、見てしまいました。
なんて……なんて恐ろしいことでしょう。
私の目には、ライゼンが連れてきた『女の子』のステータスが飛び込んできました。
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ケント・エル・リザース(Kent El Lizzarth)
状態:女体化
ライフ:1215
パワー:1352
攻撃力:108
防御力:125
魔法力:297
敏捷性:85
技能:
魔法適性:土(C)
魔法耐性:
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そう――他ならぬ、その女の子こそが、まさかのケントくんだったのです!
ナマイキな少年は女体化して萌やしちゃいましょうねぇ~(闇のTSおじさん)




