19 捜索活動
森から駆け込んできた子は、リリーナ先生に宥められながら、少しずつ、ゆっくりと事情について話し始めました。
ケントくんは、どうやら意地でも私たちに対抗したかったようです。
直接勝負でダメなら、今回の課外授業で上回りたい。
つまり、私たちが狩ったモンスターよりもすごいモンスターを狩ろうと躍起になっていたそうです。
そうして、ケントくんは森の奥地へ足を進めました。
そこまでは、取り巻きの子も一緒で、まだ危険もそれほどではなかったようです。
モンスターに苦戦はしますが、腐ってもケントくんの魔法適正は土のC。ここいらのモンスターを倒すこと自体は可能でした。
しかし――『そいつ』が現れてから、状況は一変しました。
そいつは、ゴーレムのように見えたそうです。しかし、見たことのない色のゴーレムだったとか。
そのゴーレムは、圧倒的な防御力で、ケントくんの渾身の一撃でさえダメージを受けなかったそうです。
そしてそのまま――ゴーレムは、ケントくんだけを連れてさらなる森の奥地へと姿を消しました。
と、いうのが、逃げ帰ってきた取り巻きの子の証言です。
「しかし、ゴーレムか。この近隣には、ゴーレムの自然発生するような環境は存在しない以上、人為的な出来事だと考えて相違ないだろうね」
リリーナ先生は、顎に手を当てて考え込みます。
ゴーレムというのは、普通は人が魔法で作り出すものです。
いちおう、自然発生もします。
ですが、それはダンジョンと呼ばれる特殊な場所でのみの話です。
リリーナ先生の言葉から察すると、森の近辺にはゴーレムの発生するようなダンジョンが存在しないのでしょう。
そう考えると、ケントくんをさらったゴーレムは誰かが人為的に生み出したものということになります。
そして、おそらくは生み出した人の指示によって、人をさらっています。
誰でもわかります。これは、事件です。
それも、とても危険な部類の。
「――よし。私はこれから、ケント君の捜索に出る。生徒の諸君は、これまで隠れて護衛を続けて貰っていた教員の方々に任せておく。みんな、指示に従って大人しく王都へと戻るように」
リリーナ先生が言うと、森の中から数名の大人が姿を表しました。ハンター学園の先生で、顔を見たことのある人ばかりです。
私たち4人はその存在を察知していたので驚きもしませんでしたが、他の生徒は驚いている様子でした。
「では、これにて課外授業は終了だ。成績は後日報告する。では、解散!」
リリーナ先生は、号令をかけるとすぐさま森の中へと姿を消しました。
後ろを追いかける者は、誰一人としていませんでした。
いえ、正確には、誰一人として、後ろを追いかけた4人の姿に気づけなかったのです。
 




