11 言葉の真意
パパの言葉に私は顔をしわくちゃにして泣きました。
「ごめんなさい! ごめんなさい! ……許してくださいとはいいません。でもどうか、パパのお体が良くなるまででいいですから、お屋敷に残ることを許して下さい! どうか……いえ、私、パパが元気になれるよう尽くします、ですから、家を出ろなどと言わないで下さい――!」
私は泣きながら、必死に懇願しました。すると、パパの大きな手が、私の頭を包み込むように撫でます。
「すまない、ファーリよ。そういう意味で言ったのではないのだ。……言葉が足らなかった。許してくれ、愛する我が娘よ」
「パパっ!」
私は安心のあまり、また涙を流してしまいました。そのまま、パパの太い腕を強く抱き締めます。
「ファーリよ。家を出ろと言ったのは、お前を嫌ってのことではない。お前に、望んでいるのだ。希望を見たのだよ、俺は」
パパの言葉の意味が分からず、私はパパの顔を見つめます。
「いいか、よく聞け。お前が使ったのは、間違いなく魔法だ」
「魔法……?」
その言葉を私は信じきれませんでした。
魔法。それはファンタズムにあまねく存在する力です。
そして、魔法を扱うには才能が必要です。
その才能は、多くの場合非常に幼いころから開花します。
魔力、という形で感知できる為、大人がすぐに気づくのです。
特に、私のような貴族の場合は。
けれど――私は、今日まで一度も魔法の適性があると言われたことはありませんでした。
実際、魔法らしい力を使えたことなど一度もありません。
なのに、パパは私が魔法を使ったと言います。
――確かに、あの光の力は魔法と言う他ないものでしたけど。
「ファーリ。恐らく、お前はあの勝負の最中、何らかのきっかけをもって魔法の適正に目覚めたのだ。それも、この俺を一撃で死の淵に追いやるほどの莫大な力」
パパの言葉に、私はびくりと肩を震わせます。未だに、恐ろしいのです。パパを殺してしまっていたかもしれないという事実。
それを察してくださったのか、パパは私の頭をいっそう優しく撫でてくれます。
「お前の力は、いずれ英雄と呼ばれた存在にも匹敵するほどになるだろう。それだけの才能を、あの戦いからは感じたのだ。……このまま、屋敷に縛り付けて腐らせるにはあまりにも惜しい」
そこまでパパの言葉を聞いて、私もようやくパパの言いたいことを察しました。
私も、ダズエル家の娘。力を持った者が、何を望まれるかぐらい、理解できます。
「故にファーリよ。家を出るのだ。領地も出て、王都に向かえ。そこで――ハンター学園に入学し、研鑽を積むのだ」
パパの口から出てきた言葉は、私の想像した通りのものでした。




