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54話 合同昇級試験

 昇級試験当日。

 ロイヤルブラッドの訓練場。

 本日の試験会場となるこの場所には関係者が集まっていた。


 で、この場に俺以外の誰が居るかというと――。



「やほー。今日はよろしくねー」



 合同で昇級試験を受けることになったリースと。



「ご機嫌よう、イーノレカの皆さん」



 そのギルドマスターであるシエラさんと。



「今日の仕事休みにしてあげたんだから絶対合格しなさいよ」



 業務に関連する資格試験は休日に受験しろ、という素晴らしい気遣いをしてくださる我が上司のファルと。



「……なんであたしなんだろう」



 トマスさんの指定でサポートメンバーに選ばれた我が後輩のルミエナと。



「オレも……完全に場違いッスよ」



 そして意外なことに同じくサポートメンバーに選ばれたカマセイ君。

 サポートメンバーの選出基準もその役割も謎だが、結局のところ俺に割と関連のある人達が集まり、試験の開始を待っていた。

 まだ試験開始時刻より少し早いこともあり、ガイウスさんとトマスさんの姿は見えない。



「キミは緊張してないみたいだねー」

「そういうリースこそ」



 俺の顔を覗き込むようにして話しかけてきたリース。その表情に緊張はまったく見られず、むしろ俺と初めて模擬戦をする前の時のような、むしろ楽しみで待ちきれないといった様子が感じられる。

 実際に試験を受ける俺とリースは別に心身共に問題なさそうだ。

 そう、俺とリースは別に問題なさそうなのだが――。



「いやほんとオレ、マジ何で選ばれたんスかね。SランクとAランクの昇級試験なんか完全に別次元の話なんスけど……絶対やばいッスよこれ……」

「……あたしもうぷれっしゃーでだめになりそうです……足引っ張っちゃったらって思うと……うぅ……」



 サポートとして選ばれた2人のメンタルが瀕死状態だった。

 2人ともランク不相応な力を持っているとはいえ、わざわざ俺達の昇給試験に協力してもらうのは不自然。試験内容と何か関連があるとみて間違いないだろう。

 となると()()()()()()()()()()()()()()()()()というところも試験で見られることになりそうだな……。

 そんな風に試験についてあれこれ考えていると――。



「うむ、全員揃っておるようだな」



 野太い声が会場に響く。ガイウスさんが来たようだ。

 そしてその隣にはトマスさんもいる。

 2人は当然というべきかシエラさんと面識があるようで、軽く挨拶を交わした後。



「それでは本日の試験について説明します」



 トマスさんから改めて今日の試験についての説明が始まった。

 俺とリースの合同での試験だが評価基準はそれぞれ異なること。トマスさんの指定したサポートメンバーと協力すること等など……と、ここまでは先日聞いた話。



「では、本日の試験内容については――ガイウスさん、お願いします」

「うむ」



 大きく頷いたガイウスさんが一歩前に出て。




「我と戦うこと。以上だ」




 それだけ言い放った。

 ……ガイウスさんと戦え、か。"勝て"でも"倒せ"でもないのは俺とリースで合格基準が異なるからだろうか。まぁ想定していたよりも試験内容自体はわかりやすくて良いのだが――。



「……それは少々手厳しいですわね」

「だねー……」



 いつになく真剣な表情になったシエラさんとリースを見る限り、相当厳しい試験になりそうな予感がする。



「今回はどちらも特殊な試験ですからね。それ相応の基準を用意させて頂いたまでですよ」



 ガイウスさんがどれだけ強いのか俺は知らないが、SランクとAランクの昇級試験ともなると相応のモノを求められて然るべき。大丈夫、何が来ようと俺は上司の期待に応えるだけだ。



「説明は以上です。それでは各自試験の準備を始めてください」





           ◇





 ありがたいことに試験前に作戦タイムを貰えるらしい。

 何事においても準備は重要。早速4人で打ち合わせを始めたのだが――。



「いや無理ッス、やべえッス、ヤバイッスよ、生きて帰れねえッスよ……」

「あば、あばば……えすらんくと……あたしがたたかう……」



 さっきまでよりも2人のメンタルが酷いことになっていた。

 ここまで酷いことになってしまった理由なのだが。



「む、むり……リースさんが秒で負けちゃった人があいてなんて……し、しにますぅ」



 作戦決めの為にガイウスさんがどれぐらい強いかをリースに尋ねたところ、渋々答えてくれた内容が「以前戦ったときに瞬殺された」というものだった。リースといえばロイヤルブラッドの最高戦力。一時期ロイヤルブラッドに移籍していたルミエナも間近でその力を見てきた筈だ。だからこそなのか、そのリースが瞬殺されてしまった事実がよほど衝撃的だったらしく、ルミエナもカマセイ君も完全に怯えきってしまっていた。



「もーだからそれけっこー前の話だって。今やったらどーなるかわかんないじゃんかー」



 リースが不満そうに声を挙げるが、2人にはあまり響いていないようだ。

 まぁ2人が恐怖を抱いてしまう気持ちは理解出来る。低ランクの俺たちがSランクの、しかも見るからに戦闘タイプなガイウスさんを相手にするのは無茶・無謀もいいところだろう。ここでフォローを入れておくべきだ。



「2人とも」



 ここで掛ける言葉選びは非常に重要。2人をこれ以上追い詰めないように且つ、これからの試験に全力で取り組んで貰えるような、そんな言葉を掛ける必要がある。

 だからこそ、今こそ2人にはこの言葉を贈ろう。



「――これも仕事だ」



 なんと心地良い響きだろうか。どんなに無理難題なことであっても「仕事だから」の一言で済ませられ、仕事ならばやらなければならないという気持ちにさせてくれる。俺だけは休日扱いになっているようだが、2人はそれぞれ上司の命令としてここに来ている。これ以上の言葉はないだろう。



「おしごと……だったらがんばらなきゃ……」

「そスね……やらなきゃッスね……」



 微妙に表情とか言葉に感情がこもっていないような気もするがまぁ気のせいだな。

 よし、2人のメンタルも回復したところで作戦決めだ。

 ……といっても相手がリースの上をゆく戦闘能力の持ち主なので取れる選択肢は少ない。正面から挑んだところでまず勝てない相手。となると。



「不意を突くしかないな」

「そだねー。でもそれがむずかしーんだけど……ってあれ? もしかして何か思いついたの?」

「まぁ一応案はあるが所詮は素人の考えだ。それに今回の試験は俺だけのものじゃない。作戦はリースが決めるべきだと思う」



 経験の浅い俺よりもリースの方が効果的な策を色々知ってそうだ。加えて試験についても評価基準が異なる以上、作戦を立案した方が評価にも繋がるのではないかと思っての提案だったが――。



「ううん。なんとなくだけどキミの考えたやつのほーが不意突ける感じがする」

「……わかった。なら俺の案でいこう」



 正直なところ俺の案はリスクは高い。

 しかしこの試験が今後の仕事に繋がっていくものである以上、成功させるまでだ。



「これから作戦を説明する。質問があったら遠慮なく聞いて欲しい」

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