押し雪
押し雪【おしゆき】
押し込んで固めた雪。
かまくらにしたり、寝ころんで固めたり、雪玉にしたり、通り道をつけたり。
押し雪は雪遊びの基本かも。
朝起きて、玄関が開かない。
ぐいぐい押して。
ぎゅむぎゅむと音が鳴る。
わずかに開いた扉の隙間から見えるのは。
白銀の世界。
白雪の絨毯。
積雪の土嚢。
全てを飲み込み、鎮める、一晩の雪。
ぎゅむぎゅむ。ぎゅむぎゅむ。
雪を押し固めて、扉が開く空間をつくって。
やっとやっと外へ出る。
雪、雪、風花、雪、羊雪、つらら、屋根から雪崩れた雪、車の轍、除雪車が掻き分けた道路の端にこんもりとした捨て雪。
つまり……遊び放題だっ!
まずは、朝の任務をしなくては。
みんなが通れるように、雪を固めて道を作るのだ。
雪の中へダイブ!
ごろごろ。ほふく前進。でんぐり返し。
ふぅ。道路までの道は確保した。
ここからは、自由な時間。
雪をひとつかみすくって、ぎゅっ、ぎゅっと握る。
できた雪玉を、地面に転がして。
ごろごろ。ごろごろ。
雪だるま……にしては不格好だから、やめて、穴を掘って、かまくらにしよう。
おっきいのは、むずい。
今度は俵型に握って。
南天の実の赤い目。
南天の葉の耳。
ゆきうさぎ。
みんなみんな、雪を押し固めて、形にしてる。
雪は押されて始めて、遊べる雪になる。
押し雪になるまで、雪は自然のもの。天から降ってきたもの。わたしのものじゃない。
でも、押し雪になったら、もうわたしのもの。わたしと遊んでくれるもの。
ねぇ、押し雪。あなたがわたしのお友達だよ。




