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雪ひら
雪ひら【ゆきひら】
風花ひとひらのこと。
雪ひら、ひらひら。
雪ひら、ひらひら。
辺りには、風なんてない、はず。
もしかしたら、この暑いジャンパーで風を感じなくなっているの?
ううん、さらけだした頬にも、風なんて感じない。髪もさらりとも揺れない。
風がないのに、風花はどこかへ運ばれていく。
どこから散ったのか、青空を流れて、風花はどこかへ運ばれていく。
ふしぎ。
風は止まっているのに。空は流れてく。
辺りは静かなのに。世界は流れてく。
風花、ひとひら。
ゆくりと、降りて、舞って。
ふありと、昇り、躍る。
雪ひら、ひらひら。
木の葉よりも身軽にステップを、冬の青空、澄みきった空気の中で。
音よりも静やかにリズムを、冬の寒空、凍てついた空気の中で。
ゆたりと、静謐なメロディを、目で辿る。
風花ひとひら、散って舞って、流れてく。
雪ひら、ひらひら、ありもしない風の中で、ワルツを踏んで、どこか遠くへ消えてった。