別光
別光【べっこう】
恋人同士の目の前に現れる別々の光に照らされた道、分かれ道のこと。
*檸檬月Ⅱにて、百嶺ちゃん(@mikagemone )がつくってくれました。
満月が東の方、ビルの木立を抜けて光を落としている。
その公園の入り口は西手で、しずしずと無表情に外灯が限られた範囲でそこを照らしている。
植樹の陰に隠れて、自然の光も人工の光も避けるように、その光たちによってその姿がさらされないように、二人の男女が向き合っている。
会話はもう終わった。
結論は二人で共有した。
納得はそれぞれの胸の内で済まされた。
少なくとも、この場にこうして留まる意味は、今の時、この二人の間にはひとつもなかった。
だから。
男は西へ、人の生み出した煌々とまばゆい光へと足を向けた。
女は東へ、天から普く辺りを濡らして潤す光へと足を向けた。
二人して振り返ることはなく。
二人して同じリズムで無感情に足音を鳴らし。
二人して光の中へ進んでいった。
男は歯を食いしばり、歩みの痕に涙を溢した。その黒い点を外灯は当たり前のように照らしていた。
女は胸を握りしめ、細く息を吐き出して気持ちを抑えていた。その吐息は満月にも明らかにすることはできなかった。
別光に進んでいった。
その後の人生はを二人はお互いに知らない。




