表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
みことエッセイ  作者: 奈月遥
22/94

雨花

雨花【あまばな、うか】

雨が水面にあたって開く波紋を、花に例えた呼び方。

 しとしと。

 さらさら。

 春に続く長雨は、眺めのどこまでも雨浸しにしてる。

 道も、空き地も、玄関先まで。

 浅く、排水路へと流れて行くせせらぎ。

 どこにも乾いたところがなくて、雨が張ってないところがない。

 そこに、ひたすら、絶え間なく雨が降り続ける。

 しとしと。

 さらさら。

 天から降る雨が、地に注いだ雨と出逢うたびに。

 雫が、波紋を開く。

 開いた紋は、同心円で大きく咲いて。

 咲いた円と円が、出逢い、その形を変えて。

 なめらかな、曲線が描く妙なる紋様は、まさに花のよう。

 雨が降って、降って、降り続けて、世界を満たして。

 そうして雨が普く世界で。

 その先の雨と、後の雨とが、境界で出逢うたびに。

 縁を紡ぐたびに、円を描く。

 その円が、また別の円と縁を結んで花となる。

 雨の花。

 咲いては閉じる、刹那の花は。

 摘むことなどできなくて。

 触れることもできなくて。

 愛でようと指で撫でれば、それは花を散らして、新たな花を咲かす。

 不思議で不思議な雨の花。

 雨花は、手折って持っていくことは叶わないから。

 ねぇ、あのね。

 わたし、いっしょに、この美しい花を見たいと思うの。

 けれど、どうしても。摘むことも、手折ることも、掬うこともできないの。

 だから。

 どうか、あなた、ここまで。

 ここで、いっしょに、天から降る花を愛でましょう?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ