妖す
妖す【あやかす】
妖怪がやったとしか説明できないような、ふしぎなこと、不可能なことを引き起こすこと。
「ケータイがない!」「妖精があやかしたよ」のように使う。
なお、わたしの家で頻発します。
あれがない!
あれはどこにいったの?
明日、使うのに!
妖精はもう、この世界からいなくなって、常春の世にひきこもっていると思ってますか?
夜中にこっそりと靴を造ってくれる職人さんは、いないのかもしれません。
一目を忍んで家をキレイにしてくれるいい人たちは、いないのかもしれません。
でも、モノを隠すイタズラ好きは、あちこちに。
そして、その隣人たちは、よくよく考えれば、どこにいるのかと言えば。わたしたちの、この頭の中で、ひっそりと暮らしていて。
ときどき、その記憶をさらりとさらっていく。
取られた記憶の中に、探し物の場所がはっきりと残っているのに。
それでも、彼らが取っていくのは、わたしたちにとってなんでもない、日常の中の些細なこと。
大切な想い出には、けして手出ししない。
怪盗は紳士に、ふまじめに、はしゃぎながら、尊厳を守りながら、その好奇心を満たして去っていく。
ああ、今日もまた、ケータイが妖された……ま、いっか。そのうち出てくるでしょ。




