月の蜜
月の蜜【つきのみつ】
「蜂」にかかる枕詞。
月の光は、とろりと甘いハチミツのよう。
これもまた、未言の前の未言。
月の満ちた上光は、とろりと甘い蜜のよう。
そんな月の蜜を浴びて、まだ蕾の花たちは、その奥に忍ばせ秘した壺に溜めるのでしょう。
月の光を浴びるたびに溜めたその命の滴で。
命を繋ぐ営みを、未来を継ぐ交わりを、手助けしてくれる愛の御使いを呼ぶのです。
その御使いは、黄色と黒の縞模様が特徴的な蜜買いで。
蜜を集めて、巣の仲間の命を支えるものたち。
花に精製された月の蜜は、彼女らの胃で濃縮させて発酵させて、酔うことのない神の酒へと熟成される。
けなげに花と花の間を行き交い、その恋を成就させる蜂の奉仕は、月の女神によって与えられたのか。
月の慈愛を口にするからこそ、彼女たちは仲間のために献身して、家族そろって子どもを慈しみ育てるのか。
月の蜜をその源にする故に、蜂の蜜はあんなにもあまく、やさしく、恋を思わせて。
その蜜を口にするたびに、愛しさ溢れて逢いたくなるのか。
この蜜が、月のように恋心を惹き立てるのなら。
この蜜が、月のように魅了の魔力を持っているのだとしたら。
あなたの口に、ひと匙突っ込んで。
その唇に垂れる一滴を、舐めとって。
わたしだけに夢中にさせたい。
わたしだけを、みつめてほしい。
あの月が、太陽の光でだけ輝くように。
あの花が、決まった季節だけに咲くように。
あの蜂が、蜜だけを頼りに生きていきように。
わたしだけを、じっと、ずっと、みつめてほしい。




