始まり-樹-
「………」
目を疑うとはこのことだろう
見知らぬ女性が倒れている
俺の部屋の前で
…少し遡る
珈琲の残り香を感じながら、いつもの帰路を行く
夢追うギターの音、サラリーマンの火照った顔、仲睦まじい男女の声
いつもと変わらない
どこにでもあるような光景
よく、なにも変わらない日々はつまらないというが、決して嫌いではなかった
むしろ、いつも通りの方が…
エレベーターから降りる
ポケットの中の鍵を探りながらふと前を見れば…
「………誰だ?」
女性が倒れている
いや、正確には寝ている
俺の部屋の前で
それも、明らか酔いつぶれている
近くにはピンクのキャリーバックが1つ
「…同じ学校」
女性が着ているのは高校の制服
胸ポケットには今自分が着ている制服と同じ校章が
高校生?…なのに酔いつぶれ?
「…くさい」
しゃがみながら近づけば、アルコールの匂いが鼻をつく
こいつ…文字通り浴びるほど飲んだのか?
「おい」
ぺちっ
ほっぺたを叩くが効果なし
「おい」
グラグラ
両肩を持って揺らすもダメ
しまいには…
「あぁ?…らいじょうぶだってぇ…ふふん」
にやけながら払いのけられた
呂律が回ってない…
「…はぁ」
ため息しか出ない
とりあえず…
「ほっとくか」
ガチャッ…バタン
………
「………」
ガチャッ
「んっと」
軽くてよかった
「今日は…ソファで寝るか」
しかし…気持ちよさそうな寝顔だ
ベット…酒の匂いつくかな…




