シーン3
今回はグダグダ仕様となっております。ご注意ください。
犬が現れた。
遅刻ギリギリで校門を潜った女生徒は、背後の気配に気づかぬままである。
「せーふ、だね。はぁ……」
大分息を荒げている。この状態で気付けるはずもない。
8時24分。
少し肌寒くなってきて、木々も緑の衣を落としつつある。
まだこの時は、静かな秋の風景が広がっていた。
時と場所ががらりと変わって昼間の教室。
「なあ、どうした」
背の高い方が、不意に声をかける。
「いや、別に」
と言いながらも、変わらず窓の外を眺め続ける背の低い方。
「そっちこそどうしたんだ、急に話しかけてきて」
「それはだな」
一息おいて、背の高い方が笑顔を作りながら話す。
「校庭に犬なんていたっけなー、いやいる訳無いよなーっていう顔をしてたからさ」
背の低い方は、若干顔を強張らせる。
「たまにお前が本当にMPとか使うように思えてくるよ」
「まさか」
「だよな」
二人は顔を見合わせて笑った。
「いや、読心術が得意なだけさ」
「別の意味でかなり怖いからやめてくれ、そういう冗談」
昼休み明けの体育授業。
どこか気だるい気もする。
女生徒は空を見上げ、容赦なく照りつける太陽を恨めしく思った。
朝夕は涼しいものの、まだ夏は終わったばかり。
汗が止まらない。
と、そこに。
犬が現れた。
「え!?」
犬? だってここは校庭で動物持ち込み禁止で……禁止だったかは知らないけど犬が何でここにいるのー!?
パニック寸前の頭を何とか落ち着かせた女生徒は、現状を把握した。
突進してくる。
自分に向かって、一直線に走ってくる。
「いやぁ!」
女生徒は犬から逃げる様にして走り出した。
尚、彼女が犬に追いつかれたのは言うまでもない。
「散々だったよ」
鄙びたような声で女生徒は語る。
「それは傑作だな」
数学教師は笑う。まるで仕返し。
「大変だったんだからね」
女生徒はしかめっつらをする。
あの後犬は校舎外に追い出され、犬騒動は幕を閉じたのだが、女生徒に懐いていたと言う事もあり、あらぬ疑いを掛けられたりして……。
結果、痛い目を見たわけである。
秋の放課後。
夕焼けが映える。
女生徒は、しきりに後ろを気にしつつ、帰路につくのであった。
次回、数学教師が大失態をします。