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最果てのクロニクル~サヨナラ協定~  作者: 呑竜
妖精戦争

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「死闘の末」

 ~~アンバー~~


「『レ・ゲナム・テ・モラム・ト・リセイル!! 愛する気持ちを胸に秘め、邪悪を力で打ち砕く――世界の平和を守るため!! 無辜むこの民を救うため!! 魔法少女ラジカル☆アンバーただいま参上』!!」

 ぴちぴちぴちぴちぴちっ。

 ビニール地が体に張り付く音。巨大な魔法力が鳥頭の杖から引き出され具現化し、ひ弱な自分を過保護なまでにアシストしてくれる感触。

 どうにも恥ずかしいけれど、いつまでも慣れそうにはないけれど、いまはただ敵と戦える力があることが、ひたすらにありがたい。


「ギギギギギッ?」

 裏ピースで決めポーズをとっているアンバーに対し、機兵が目玉代わりの単眼レンズを向けてくる。「ジジーッ」と、アンバーの爪先から頭までを舐め回すように見る。

「な……何見てんのよいやらしい!!」

 杖の頭で打ち上げると機械兵の頭は首ごとちぎれ、天井までぶっ飛んだ。

 アンバーはその場で回転すると、残った胴部に勢いをつけたローリングソバットを打ち込み、粉々に蹴り砕いた。

「ギッ!?」

「ギギギッ!?」

 可愛らしい見た目と相反するえげつない破壊力に、感情の薄い機械兵たちもさすがに動揺している。


「ひっひっひー……」

 キリエがいやらしい笑いを浮かべている。

「マドロアには見たものを記録する技術があるっていうからね。持って帰って鑑賞会でも開くつもりだったんじゃないかい?」

「か……鑑賞会!?」

「マニアが多いんだろ? 『マニア』がさ」

 キリエはアンバーの胸元を見てくる。

「な、なにが言いたいんですかもうっ!!」

 思わず胸を隠すアンバー。

「えー? 聞きたい? 聞きたーい?」

「もう……!! もういいですよ!! この話題やめ!! しゅーりょー!!」

 アンバーは顔を赤くしながら機械兵たちを指さした。

「と・に・か・く!! あんたらみたいな破廉恥極りない悪党どもは、1体たりとも生かして帰さないわ!!」

「おーおーおー、さっそく正義の味方しちゃってー」

 キリエが茶化す。冷静に考えると正義っぽい発言ではないが。


「キリエさん、うしろ!!」

 キリエの背後にトンカチ状の手を振り上げた機械兵が迫る。

「わぁかってるよ!!」

 キリエは瞬間移動じみたスピードで横へ移動した。

 ついさっきまでキリエがいたところに機械兵がトンカチを振り下ろし、床に深く突き刺さって抜くに抜けなくなる。

 そこへキリエは突撃ラッパを突きつけた。

 深く息を吸い込み頬を膨らませ、吹きこみ口に唇を当てる。

 ――パッパァーッ!!

 高音がまともに直撃し、振動が機械兵の内部に浸透する。

 ガチャ……、バラバラバラッ。

 おそらく中で何かが壊れたのだろう。機械兵はそのままの体勢で活動を停止した。


「芸術は爆発だ!! よね」

「なんですかそれ……」

 得意顔のキリエに、アンバーは冷めた顔でつっこむ。

「……芸術っていうかただの騒音ですよね。振動兵器というか」

 ちっちっちっ。キリエは人差し指をゆらゆら揺らした。

「お子ちゃまにはわからんのですよーお子ちゃまにはー」

「そんなのわかりたくありませんー」

 アンバーは「べー」と舌を出し――これまた背後からきた機械兵の大鎌を跳んで躱した。躱しながら大鎌の刃の上に着地した。

「ギギ……!?」

 困惑する機械兵の顔面をサッカーボールキックの要領で蹴ると、頭だけが勢いよく飛んでいった。


 さらに左右から2体ずつ突っ込んできた。

「どっせい!!」

 アンバーは1体をかっ飛ばし、もう1体の懐にもぐりこんだ。

「そうれい!!」

 杖の石突きで顎をかち上げ、のけ反り露わになった喉元にそのまま突きこむ。

 石突きは金属の装甲をたやすく貫いた。

 ぴくぴく。ぴくぴく。死後硬直のように機械兵は二、三度全身を痙攣させた後、動くのを止めた。


「わあお、残虐ぅー」 

 キリエは軽口を叩きながらも機械兵の攻撃を冷静に見極め、安全なポジションからラッパを音高く吹きこみ、音波で1体ずつ活動停止させていく。

 一見アンバーよりスマートに見えるが、外部を破壊するか内部を破壊するかの違いだけで、容赦のないことには違いない。


「へっへーん。……って、向こうはそれどころじゃなさそーだね」

 キリエの目が鋭くなる。

 コデットが危険な状況に陥っていた。

 バックラーを構えたメリダに動きを止められているところに、片手片足のヤスパールが迫っていく。ローラーブレードで滑走し、腕と一体成型された槍斧ハルバードを叩きこもうとしている。


「――あたしの演奏に聞き惚れな!!」

 指向性をもった音波が遠距離からヤスパールに直撃するが、止まらない。

「音波が効かない……!? 距離が遠すぎるのか!?」


「――わたしに任せてっ!!」

 アンバーは助走をつけてジャンプすると、密集する機械兵の頭を踏み台にしてさらに跳び、上空からヤスパールに襲い掛かった。

「止っまれえええっ!!」

 杖を振りかぶり、全体重を乗せて振り下ろす。 

 

「……ン?」

 ヤスパールは攻撃を察知したようだが、一本足では急制動が効かない。曲がるには勢いがつきすぎている。

 だが諦めはしなかった。勢いに逆らわずに跳んでくるくると前方回転し、タイミングを合わせて槍斧ハルバードで杖を打ち払ってきた。


「き……器用な真似を!?」

 着地したアンバーが身構えると、視線の先では方向転換したヤスパールがお返しとばかりに突撃してくる。槍斧を体ごと突き込んできた。

「――っ!!」

 動きが早すぎて避けられない。 

 ――ギギギィッ!!

 杖と槍斧が接触し、火花が散る。

後方へ受け流そうと試みるが、勢いの乗った槍斧は重く力強く、上手くいかない。

「――つああああっ!!」

 なんとか直撃は免れたが、肩を切り裂かれた。


 ヤスパールは大きく孤を描くように方向転換し、ローラーブレードを「フィイインッ」と音高く鳴らしている。

 ――これはヤバいかも……!!

 肩を押さえるアンバーの背筋が粟立つ。

 あんな重い攻撃を再び受けられるのかどうか、自信がない。

 さっきは上手くいったが、今度は直撃するかもしれない。巨大な刃で貫かれた自分を想像すると体が萎縮する。


「なにやってんだい!! 横へ動くんだよ!!」

 キリエが苛立った声を上げる。

「片手片足のやつが自由に横移動なんて出来るもんか!! そいつには縦斬りと突きしかないんだ!! 横移動してたらそうそう当たるもんじゃない!!」

「な……なるほど!!」

 アンバーが左右にステップを踏むと、ヤスパールは明らかに戸惑い始めた。突撃の方向が定められないでいるのだ。


「ホントだ!! これならいける!!」 

 アンバーは目まぐるしくポジションを移動しながらヤスパールに接近する。

「ありがとう!! キリエさん、大好き!!」

「けっ、勝手なこと言ってまあ……」

 照れくさそうに頬をかくキリエ。


 体勢を低くして遠間から一気に間合いに飛び込むと、ヤスパールは真っ向から斬り下ろしてきた。

 ──計算通り!!

 あらかじめ決めていた通り、左へ跳ぶ。

 槍斧は床をえぐる直前で方向転換し、バックハンドブローのようにアンバーを追ってきた――思わず出たのだろう横への攻撃――。

 これも躱すと、ヤスパールは空を切った槍斧のモーメントで自ら体勢を崩した。回転を制御できず、床に背を打ち付けた。


「――もらったぁ!!」

 すかさず間合いを詰めると、思い切り杖を振り下ろした。

 胴中央を捉えた。

 ──ゴッ……!!

 見た目に反した威力の強さに、ヤスパールの目が驚き見開かれる。

 続けて2撃、3撃――ミスリル銀の装甲が悲鳴を上げる。

「……ア!! ……アア!!」

 ヤスパールは滅茶苦茶に槍斧を振り回すが、見当もつけずに繰り出した斬撃など当たるわけがない。


 ――オオオオオオォン!!

 勝利を確信するアンバーの横合いから、メリダのバックラーが咆哮を上げた。

「い――!?」

 音の波がアンバーの全身を打つ。

 意識が飛びそうになった。耳を押さえ目を閉じてしゃがみこんだ。

 ──オオオォン!! オオオォン!!

 アンバーを同胞から遠ざけようと、双頭の獅子はしつこく吠え猛る。


「あんたの相手はこっちだよ!!」

 キリエが突撃ラッパを吹き鳴らす。音の波がメリダのそれとぶつかり合い打ち消し合う。

「……オト……オナジ?」

 似たような武器の使い手の登場に、メリダの声が戸惑う。


「よくやったよあんたら!!」

 ミスリル機械兵2体に封じ込まれていたコデットが歓喜の声を上げている。


「どういたしまして!!」

 アンバーが返事を返すと、ちょうどヤスパールが起き上がったところだった。片手片足では起き上がるのにも難儀するらしく、床に突き刺した槍斧を杖代わりにしてなんとか立ち上がったところだった。


 ――再び、真っ向から対峙する。

 杖と槍斧。互いに必殺の武器を振り上げて。

 左右へ動く?

 しゃがみこむ? 

 そうじゃない。もはや小細工を弄するような距離じゃない。

 おそらく次は、雌雄を決する一撃となる。

「――わたしは、負けない!!」

「――ン!!」

 正面から打ち合った。

 ふたりの攻撃がぶつかり合い、火花を散らす。

「んぎぎぎぎ……!!」

「……ンンンンン!!」

 鍔迫り合いになった。

 アンバーの額に汗が浮かぶ。

 ヤスパールは表情こそ変えないが、駆動部をギシギシと軋ませている。


 ――ドズン!!

 

 凄まじい音が、大広間に響いた。

 誰もが動きを止めた。

 

 みなの視線の先には──

 コデットと向かい合うギーラがいた。

 ギーラの手には筒先から煙を上げる銃が握られていた。

 コデットは血の吹き出る腹をおさえ、驚きに目を見開いていた。


『──コデット様!?』


 ~~コデット~~


 メリダが相手の動きを止めているところにヤスパールがとどめを刺す。わかりやすい役割分担だ。

 ……だが何か変だね、コデットは疑問に思っていた。

 ギーラの役割だ。

 銃士ガンナーであるギーラは開戦からこっち、まったく何もしていない。声高に指示は出しているが、自ら銃を抜こうとしない。援護のひとつもしてこない。

 策士タイプだからと言われればそれまでだが、お飾りにしては銃から異様なプレッシャーを感じる。黒いエボンウッドの地に銀の装飾を施した一発銃。

 撃鉄は起きていないが、「早撃ち(クイックドロウ)」は銃士の得意技だ。侍の「居合い斬り」と並んで、FLC最速の技だ。

 いつ何時でも油断はできない。コデットは乱戦の中にありながら片時も、ギーラの挙動から目を離さなかった。


 そうこうするうち、アンバーとキリエふたりの奮闘で、ヤスパールとメリダがコデットの周りからいなくなった。

「よくやったよあんたら!!」

 周囲がクリアになった。

 ヤスパールとメリダがいなくなり、機械兵と妖精たちの戦場は遠くへ移った。


 ──急に周囲がクリアになった。

 

「……!!」

 ぞくりと、背筋に寒気を感じた。

 早撃ちの最大の敵は、その命中率の低さだ。もともとが銃士同士がスピードを競い合う中で生まれた技術で、早く抜き撃つことに特化させるあまり、精度が著しく低い。

「魔法や遠隔攻撃の必中」のルールの枠外にある技術なのだ。

 命中率の低下を招く諸要素──彼我の距離、障害物の有無、ターゲットの移動速度──を鑑みるなら、この状況はギーラにとっておあつらえ向きといえる。


 ──仕向けられた……!?


 ギーラが嘲けるように低く笑った。

「……やっと、ふたりきりになれましたね」

「……そういう台詞は、もう少しロマンチックな状況で言ってもらいたいもんだね」

「いやいや、十分ロマンチックでしょうよ。敵対関係にある国の有力な男女がパーティー会場で相対する。これをロマンチックと言わずしてなんと言いますか」

「絶体絶命、って言うんじゃないかい?」

 コデットはじりりと間合いを詰めた。

 絶命銃とやらがどれほどの威力か知らないが、こっちの攻撃は必殺だ。ちょいと触れれば片がつく。

 

「……さても、銃士ごときがずいぶんと調子に乗ったもんだよ。遠間から狙撃するしか能が無いくせに、こんな至近距離まで近寄らせてくれて。切れ者って噂はありゃ嘘だね。あんたの前任者のイーゴイールなら、絶対こんなことはさせてくれなかった。ミスリル機械兵、なんて奥の手があったとしてもね」

「遠間からの狙撃……。それだとダメなんですよねえ。一発目が当たっても逃げられてしまう。確実に殺すなら至近にいないと。遮蔽物のない環境で、邪魔者も入らない環境じゃないと」

「ふうん……よっぽど自信があるみたいだけど、逃げられない位置にいるのはあんたのほうなんだがね」

「……どっちが正しいかはすぐにわかりますよ。前任者も似たようなことを言ってました」


「──抜かせ!!」

 すさまじい速さでコデットが飛び込んだ。


「――甘いんですよ!!」

 同時にギーラが動いた。

 銃把を握る。親指で撃鉄を起こしながらのけぞるように後傾になって射角を立て、腰のあたりで引き金を引いた──始まりから終わりまでが一挙動に見えるほどの、熟練の早撃ちの技。


 ――ズドン!!

 閃光が閃いた。轟音が一発、鳴り響いた。


「――なんだその銃……その威力!?」

 震える声で、コデットは呻く。

 メリダの音波攻撃で剥がれかけていたとはいえ、コデットの呪装の防御力は半端なものではない。機械兵の攻撃くらいならそれだけで跳ね返すだけの防御力がある――はずだ。

 はずなのだが、いまそこには風穴が開いている。絶命銃の弾丸はたやすくコデットの腹部を貫通し、煙を上げている。


「隠し玉ですよ。一発撃つたびにしち面倒くさい『チャージ』がいるし、お世辞にも実用的とはいいがたいんですがねえ」

 ギーラはこともなげに銃を放り投げる。弾倉に一発しか入らない特別製の銃だ。

「強敵専用と言いますか……絶命銃パニッシャーっていうんですけどね」  

 ギーラは腰に吊るしていたもう一丁の銃──絶命銃を手に取った。

「……命を弾丸にするんですよ。生物のHPやMPやSPや、ようは生命力そのものを撃つんです」

「命を……弾丸に……だと!?」

「誰だって生きたいと思うでしょう? 死にたくないと願うでしょう? 痛いのは辛いでしょう? 苦しいのは嫌でしょう? ――それを弾丸にしたんです。だから耳を澄ましてみてください。あなたのお腹に空いた穴――そこから、何かが聞こえてくるでしょう?」


 それは微かな声だった。意識を集中していなければ聞き取れないような声だった。

 だがたしかに言っていた。嘆き悲しみ叫んでた。


 ――ああああああああ!!

 ――痛い痛い痛い!!

 ――死にたくない!!

 ――助けて!! 誰か!!

 ――おおおおおおお!!

 ――殺してやる!! 殺してやるぞ!!

 ――おまえも一緒に、こっちに来い!!

 

 死者が生者を恨む――その声だ。

 弾丸に閉じ込められていた今わの際の叫び声が、まるで生き物のようにコデットの腹を蝕んでいる。肉をみ血を啜り、骨を砕いている。


「……んっぐうううううう!!」

 コデットはたまらず跪いた。腹をおさえ痛みに耐える。


 絶命銃を弄びながら、ギーラはこれ見よがしにため息をつく。

「『チャージ』するの大変なんですよ。なにせ一発一発に数十人もの命を籠めてますからね。集めるには色々とツテも必要でして……」

「……てめえ!!」

 立ち上がろうと力をこめたコデットの足の甲に、絶命銃が穴を穿った。

「あっがあああああ!!」

 穴の開いた足の甲をおさえ、コデットは悲鳴を上げる。


「もともと機械人の技術ってのはですね、精巧に造られた魂のない器に魂を持って来て宿すってものなんです。動物型だったら動物でいいんですけど、人間型だったら人間がいい。自明の理屈でしょう? だから私たちは魂の扱いに慣れてた。この銃はそうして生まれた──」

 ギーラはガシガシと頭をかいた。

「よく喋るとお思いでしょう? 自らの行いをべらべらべらべら。でもしょうがないんですよ。そういう風に『創られた』もんですから。手引きを受けて王都に乗り込んで。あんたを追い詰める。適度に痛めつける。どんなに憎くても殺しちゃダメなんですって。これからのために」

 あーあ、ギーラは衝動をこらえるように大きく伸びをした。

「……それにつけても」

 欲望隠しきれぬ充血した目で、コデットを見た。

「……殺したいですよねえ」

 ギーラは空になった絶命銃を放り投げた。

 ゴム製のコートをばさりとめくる。

「――!!」

 見上げたコデットは凍りついた。

 コートの内側には、ずらり十数丁もの絶命銃がぶら下げられていたのだ。

「適度に痛めつける。それって、死なない程度だったらいいってことですよね。……でも、ねえ? 加減って難しいじゃないですか。だから色々試してみましょうよ……ね?」


「――機軍総督きぐんそうとくギーラ!! いますぐその銃を捨てなさい!! このコがどうなってもいいの!?」

 うつぶせに倒れたヤスパールの背に足をかけ、アンバーが声高く叫んでいた。

 片手片足を欠損した状態ですら古代兵装である魔法少女と互角に戦った、総ミスリル銀製の機械兵。その価値は計り知れない。容易く見捨てられるものではないはずだ。だが――

「コデット様と引き換えよ!! 今なら命だけは助けてあげるわ!!」


 ギーラは目を丸くしてアンバーを見つめた。

「へえ~。こりゃあ驚いた。卿のところは面白い娘を飼ってますねえ。この状況で人質交換を要求してくるなんて。それじゃあまるで……」


 ――人間みたいじゃないですか……。


 皮肉を嘆じるようにつぶやいたギーラは、すぐに気を取り直したように続けた。

「――ご主人様と下僕、そんな取引が成り立つと思いますか? 命の価値が違いすぎる」

「じゃ……じゃあこのコがどうなってもいいって言うの!? 名前までつけてるんでしょ!? ヤスパールって!! 機械兵だけど大事なコなんでしょ!?」

「お嬢ちゃんは飼ったペットに名前をつけませんか? そんなもんですよ。名前なんて個体を識別するためだけの記号です。もともと私がつけた名前じゃありません。遥かな先代から受け継いだお下がりです」

「そんな……だって……!!」

「もっとはっきり言いましょうか? ――生かすも殺すもご随意に」

 ギーラは片手を胸に当て、恭しく礼をした。

「……つ!!」


 ――おおおおお!!

 ――コデット様のピンチだ!!

 ――乗り込め!! みんな!!


 大広間の扉が開いて、たくさんの魔法少女たちが雪崩れ込んできた。猫耳や尻尾を生やしたの、全身タイツみたいなの、カラフルでゴテゴテでラブリーな衣装を着た女性──少女たちが機械兵を蹴散らし、ギーラに迫る――。


「形勢逆転ってやつだね。余裕こきすぎだよあんた」

 コデットの指摘に、ギーラは低く笑った。

「……まあしょせんは、悪役ヴィランのすることですからね」

 すべて悟ってでいもいるかのような――それはどこか自虐的な笑みだった。


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