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最果てのクロニクル~サヨナラ協定~  作者: 呑竜
妖精戦争

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「バトル・イン・サバト」

 ~~~コデット~~~


機軍総督きぐんそうとくだぁ? ポンコツどもの親玉がこんなとこまでのこのこと、いったいなにしに来やがった!!」

 コデットは腰に手をあて牙を剥いた。


 機械都市マドロアはキティハーサ北方に位置する街だ。多くの鉱石や燃石を産出するため一大工業都市として発展している。魔法と科学技術が高度に影響を与え合い、総督府の統治のもと、機械人と呼ばれるロボットの労働者を生み出す革命を成し遂げた。

 機械人には簡単な命令を理解できるだけの小さな脳しかない。生産専従で、複雑な命令はこなせない。

 その機械人にドリルやトンカチや飛び出し刃のような武器をくっつけ装甲を厚くしたのが機械兵で、機軍という名称はそこからきた。


 ご主人の言いなり。指示待ちマシーン。

 自由を謳歌し、複雑であることを美徳とする妖精たちと、彼らはまさに真逆の存在だった。自由と理性、奔放と束縛、両者が敵対するのは自明の成り行きといえた。

 ロックラント帝国という外敵を迎えても両者の対立は止まらず、むしろマドロアは帝国と同盟関係を構築した。

 その敵国の軍務の長が直接王都に乗り込んできたのだ。当然、無事に済むわけがない。

 場は弾けそうなほどにヒートアップしていた。 

 

 ──ギチギチ、ガチャガチャ、ブーン。

 金属の擦れる音、歯車の噛みあう音、モーターの回転する音が近づいてくる。鈍く無数に。

 それらはやがて、妖精たちの羽音や騒ぎ声を圧するほどの音量になる。


「──機械兵ポンコツども!!」

「どこから入って来やがった!?」

「ここをどこだと思ってやがる!! おまえら誰ひとり、生きちゃ帰れねえぜ!?」

 ギーラの周囲を固めるように現れた機械兵の一群に対し、妖精たちが忌々しげに叫ぶ。


 機械兵一体一体の大きさは丸耳族の1.5倍程度。それがギーラの周囲に壁を作るように並んでいる。大広間に入りきれていない分も含めると60か、下手すると70はいる。

 これだけの手勢を王都中心部に位置するレイ・ボワル邸へいったいどうやって引き込んだのか?

 帝国との決戦を間近に控えた時期を選んだのも、偶然ではあるまい。

 

「どこから来たのか、なんのために来たのか──聞いても答えるつもりはないんだろうねえ?」

「……答えてほしくなさそうな顔してますよ?」

「そうかい? そんな顔してたかねえ」

 あらまあ、コデットはわざとらしく驚いて見せる。

「どっちにしても、帰してくれる気はないんでしょうし。お互いに無駄な行為だとは思いますね」

 あっはっは、コデットは快活に笑った。

「──最初から腹は括ってるってことかい。いいね、いーい度胸じゃないか。新任の総督は切れ者だって話を聞いてたが、頭デッカチのボクちゃんだったらどうしようかと思ってたんだ。なるほどなるほど、物わかりのいいやつでよかったよ。たしかに喉元へ刃を突きつけられてんのはお互い様だしね。アタシがやられれば夜会の活動は停止する。あんたがやられれば機軍そのものの動きが頓挫とんざする。わかりやすくて結構なこった」

「同意しますよ」

 ギーラは肩を竦める。

「そして同情します。もちろんあなたに──」


 ――すううううっ。


 コデットは深く息を吸い込むと、スイッチを切り替えたように陽気に歌い出した。

「──どうしよどうしよ、オモチャの兵隊迷子になった♪」

 予測していたかのように、みなが唱和する。

 愛らしい小鳥の輪唱のような──しかしそれは、敵意のこもったわらべ歌だ。

『こまったこまった、帰り道がわからない♪』

「ザアザアザブザブ、綺麗な小川が流れているぞ♪」

『ザアザアザブザブ、綺麗な小川が流れているぞ♪』

「流れに乗ってどんぶらこ♪」

『流れに乗ってどんぶらこ♪』

「おうちに着いたはいいけれど♪」

『赤サビだらけで動けない♪』

「腕も足も動かない♪」

『パッツクラック♪ パッツクラック♪』

「パッツクラック♪ パッツクラック♪」

『ゴミと間違えられて捨てられちゃった♪』

 機械人の知能の低さを揶揄やゆするわらべ歌を歌うと、みな一斉に笑った。


 わらべ歌が終わるまで待って、ギーラはにやりと口元に笑みを浮かべた。

「……戦闘開始の合図、ということでよろしいので?」

 コデットは「はっ」と嘲るように笑い返した。

「眠たいこと言ってんじゃないよ小僧。とっくに始まってるよ――」

 

 コデットが宣言した瞬間、シャンデリアにぶら下がっていた妖精たちが一斉に呪文を詠唱し始めた。

「『轟く者なり。怒れる者なり。耳を澄ませ、は起源の声なり──雷撃ライ・ヴォルトぉ!!』」

 小さな手から放たれた雷撃が無数に枝分かれし拡散し、広範囲の攻撃魔法となって上から襲いかかる。

 属性攻撃耐性のない──とりわけ電気抵抗の低い機械兵にとって、雷属性の攻撃魔法は最大の弱点だ。


「──出の早い雷魔法を指示無しで打ってくるか。さすがに練度が高い……!!」

 周囲を固めていた機械兵が大ダメージを負いばたばたと倒れ煙を上げるが、しかしギーラに慌てる様子はない。

 バチバチと跳ね回る雷をゴム製のコートで防ぎつつ、後方に声をかける。

「剣には剣!! 矛には矛です!! ヤスパール!! 前へ出なさい!!」


「……ン」

 指示に従い、一体の機械兵──ヤスパールが前へ出てくる。

 性別のない機械兵の中にあって異質なことに、ヤスパールは女性タイプだった。丸耳族の短髪の女性にそのまま金属コーティングを施したような、なめらかなフォルムをしている。腰が胸が、豊かに丸みを帯びている。目鼻立ちの整った顔をしている。

 機械人としての性能に直結しない、無駄な凝り方。

 足の裏に車輪がついていてローラーブレードになっていたり、腕の先が槍斧ハルバードになっているという仕掛けがなければ、倒錯的な目的で造られた奉仕型人形に見えたかもしれない。


 ――シュオオオオッ!!

 ローラーブレードの車輪が高速で回転し、床との摩擦で煙を上げる。

「……ワカッタ……マスター」

 たどたどしい言葉で答えると、ヤスパールは高速で滑走し、妖精たちを槍斧で切り倒し突き刺していく。


 同時に他の機械兵たちも攻撃を開始し、妖精たちがこれに応戦し――大広間は戦場と化した。

 物理に弱く魔法に強い妖精。魔法に弱く物理に強い機械兵。 

 防御という言葉は存在しない。互いに全力で魔法を打ち、武器を振るい、やられる前にやるのが作法だ。

 

 瞬く間に、両軍とも1割にも及ぶ戦力を失った。悲鳴や破壊音が大広間に響き渡った。

 中でも目立つのはヤスパール。総督府とっておきの機械兵が機動力を生かして走り回り、一振り一殺、ばさりぶつりと雑草でも刈るかのように妖精たちを葬っていく。


「……なかなかやるじゃないか!! よしあんたら!! やつを徹底的に狙いな!!」

『あいよ姐さん!!』

 コデットの指示に従い、妖精たちの照準がヤスパールに向けられる。

 FLCにおける魔法は必中だが、高機動タイプの相手だと発動までに射程範囲内に逃げられることがある。

 だからまず、足を止めなければならない。

「『氷壁アイスウォール』!!」

 一匹の妖精が作り出した特大の氷の壁がヤスパールの行く手を遮る。

「……ン」

 迂回しようとローラーを寝かせてエッジを利かせたヤスパール──動きが鈍ったところへ四方からの飽和魔法攻撃。

 これはさすがにかわせない。

 ヤスパールは何発も直撃をもらい、なにせ機械兵なので成すすべなく沈む……ように思われたが、意外なことに無事だった。

 終わってみれば、外装に傷の跡すらうかがえない。


「――ミスリル銀のボディだと!?」

 コデットは驚いた。

 属性攻撃に弱いのが機械兵の弱点だ。だが強固な不変性を持つ金属であるミスリル銀を素材として使用すれば、弱点は払しょくできる。あとには機械兵としての強みしか残らない。

 理屈としてはたしかにそうなのだが……。

「……こいつぁ御大層なものを出してきたもんだね。レジェンドクラスの個体だろうに」

 金属としての希少性や加工の困難さから、ミスリル銀を素材とする機械兵というのはほとんど神話か、夢物語の世界だ。コデット自身はその例外を知っているが、それとてただ一体だけに過ぎない。


「……ふん!! じゃあこれならどうだい!!」

 妖精たちに魔法攻撃を続けさせながら、自身は半眼になると、呪文の詠唱に入った。

「『――蜿蜒えんえんとうねる者。影の中を這いゆく者』」

 蝋細工のように白くなめらかな四肢に、宙から生じた黒い霧がまとわりつく。

「『その牙には毒がある。鱗にはとげがある。触れればただれる。内から腐る……』」

 白銀の鎧も赤いドレスも、燃えるような色の髪の毛も白い肌も、すべてが毒々しいほどの黒に染め上げられていく。

「『偉大なる蛇の王の亡骸なきがらには、今もなお滅びの呪いが宿っている――』」

 複眼以外のすべてを蛇の鱗のような黒い紋様が覆い尽くす。

「『蛇骸結合じゃがいけつごう』!!」

 羽根まで鱗で覆われているので、もう羽ばたくことは出来ない。

 コデットは床に降り立つと、すさまじいスピードでヤスパールに向けて駆け出した。


「邪魔だよあんたら――腐っちまいな!!」

 進路上にいた機械兵に触れる──触れたところからボロボロと、腐れるように崩れ落ちていく。

 殴ったわけでも蹴ったわけでもない。ポンと肩を叩くだけで、そろりと腿を撫でただけで、滅びの呪いが全身に伝播していく。


「禁じられし滅びの呪装……!?」

 ギーラの気づきは少し遅れた。注意喚起が間に合わない。

 機械兵は次々と倒れ、ついにその手はヤスパールにまで伸びる――。

 

 コデットは風車のように振り回される槍斧の一発目を冷静に見極めて避けると、

「三下が!! お呼びじゃないんだよ!!」

 二発目をかいくぐるようにしながら、掌底でヤスパールの肘をかち上げた。


「……ア……ア?」

 ヤスパールの肘が黒く変色し、みるみるうちに腐っていく。前腕部に転移し、槍斧がゴトリと腐り落ちた。


 ──FLCのすべての攻撃には属性がある。物理だったら打・突・斬。魔法だったら地水火風雷。

 ミスリル銀は、それらの攻撃すべてに対し圧倒的な抵抗を誇る金属だ。

 だが例外もある。それは正と邪だ。正義の光と邪悪なる闇。神の裁きや魔の呪いの力は、ミスリル銀の抵抗をもすり抜ける。


 崩壊していく我が手をなすすべなく見下ろすヤスパールに、ギーラが鋭い声をかける。

「――今すぐその腕を切り落としなさい!!」

「……ワカッタ……マスター」

 ヤスパールは指示通り、自らの片腕を切り落とした。

 位置としては二の腕の半ば。一瞬でも遅れれば、呪いは胴部へ食い込んでいたことだろう。

 ためらいの無さに救われた形だが……。


「しつけのいいポンコツだこと!!」

 仲間たちの仇だ。片腕一本で済ます気は無い。コデットはさらに追撃する。

「……ン!!」

 ヤスパールの反撃が飛んでくるが、片腕だけでは凄みも半減だ。

 身を縮めてあっさりと躱し、ついでにちょこんと太股に触れた。


「……ヤスパール!! 今度は脚を!!」

 悲鳴のようにギーラが叫ぶ。

「……ワカッタ……マスター」

 淡々と、ヤスパールは脚部を切り離す。左腕と左足を失ってもまだ立っているあたりはさすがの高性能ぶりだが、もはや戦力としては数えられまい。


「とどめだよ!!」

 満足に回避運動をとることすらできなくなったヤスパールの胴部に、とどめの手刀――。


 ――ウオオオオオオオオオンッ!!


 突如、横合いから凄まじい吠え声がコデットを襲った。

 骨まで響くような、恐ろしく不愉快な獣の咆哮。

 脳内でチカッと閃光のような何かが弾け、一瞬、視覚と聴覚を奪われた。

「――な、なんだいこりゃ……!?」

 たまらず跳び退すさる。

 ぶんぶんと頭を振りながら、霞む目でコデットはそいつを見る。

 ──新たな機械兵がそこにいた。ヤスパールに似た印象の、長髪の女性タイプ。素材もおそらくミスリル銀。手足の形状は一般的な人間種そのもの。武器は所持せず、両腕にくくりつけたバックラーをこちらに向けている。

 バックラーにはスパイク代わりの顔が刻まれている。左右ともに獅子。鋭く牙を剥いた双頭の獅子が、勇ましく口を開けている。

 先ほどの吠え声は、つまり物理効果を及ぼすほどの音波兵器だったわけだ。呪装したコデットを退かせるほどの。


「ふざけんじゃないよ!!」 

 新たな機械兵に対して突撃するコデットは、しかし再び音波の壁にはばまれる。一定の距離から先に近寄れない。


 ――オオオオオオォン!!


「たかが音ごときで……!!」

 歯ぎしりしながらなおもにじり寄ろうとするが叶わない。爪先がむなしく床を蹴る。

 触れれば腐るとっておきの禁呪も、触れられないのなら意味をなさない。

 音の集積はさらに、呪装にも影響を及ぼし始める。黒い鱗がひび割れ剥がれ落ちていく。

「ぐく……っ!! こんな……こんな獣どもに……!!」


「よくやりましたメリダ!!」

 ギーラの言葉に、バックラーを抱えた機械兵――メリダは無表情でうなずいている。

「……マカセテ……マスター」

 

「――コデット様!!」

 誰かが叫んだ。

 誰の声かわかった時には、すでに変身が始まっていた。

 壁際、乱戦からもっとも遠い位置にキリエがいた。バトントワリングのように黄金色の突撃ラッパをクルクル回している。

「『パラクラリラテラ。パラクラリラテラ』」

 呪文を唱えてから天に向けて「パッパー!!」と甲高く吹くと、どこからともなく光の粒子を纏った風が流れ来た。

「『水のように流れ、風のようにそよぐ』」

 キリエの服は塵のように消え──すぐに純白の衣装が取って代わった。茶髪のおさげが自然にほどけてさらさらと風に揺れた。

「『我は指なり、声なり、導き手であり助け主なり』」

 丈の長いブーツ。ひらひらとフリルの豊かなミニスカート。金刺繍やモール装飾の施されたシャツ。頭に筒形の楽帽をかぶっているところを見ると、楽隊の奏者をイメージしているのか。

「『魔法少女パラクリート・キリエがお相手いたします』!!」

 突撃ラッパを胸に抱き片膝をついて、魔法少女パラクリート・キリエ(20)が現れた。


 ~~~アンバー~~~


「ず……ずっるーい!!」

 アンバーは全力で不満をぶち上げた。

「ずるいずるいずるい!! 絶対ずるい!!」

「な……なんだい藪から棒に……」

 戸惑うキリエにずかずかと詰め寄る。

「だってだって!! キリエさんの変身そんなにかっこいいのおかしくないですか!? わたしなんて……わたしなんて……らじかる……!!」


「……ま、まあいいじゃないか。可愛いんだし」

 ぽんぽんと頭を叩いてあやそうとするキリエの手を振り払う。

「可愛くないですよ!! というかそういう成分求めてないんですよ!! もっとすぱっとすきっとした衣装でいいじゃないですか!! スカート短すぎなんですよ!! おへそ出しすぎなんですよ!! 胸にでっかいハートマークまでついてるんですよ!? 愛と平和を歌っちゃうんですよ!?」

「あ、あたしだって似たようなもんだし……」

「はあああぁっ!? どこがですか!! どぉこぉがぁですかぁっ!? キリエさんすっきりしてるじゃないですか!! 恥ずかしいのなんてせいぜい絶対領域くらいじゃないですか!! マジックワードだってなんか神聖っぽいし!! 名前だってパラクリートとかいってかっこいいし!! そもそも武器がラッパだし!! 鈍器じゃないし!! 可愛いとかいうならわたしのと交換してくださいよ!!」

「え。いやそれは……」

「ほらあっ!!」

「だってさ……」

「口だけ!! 口だけなんだもん!! 大人ってほんっとにずるい!!」


 キリエがむっとした顔になる。

「だ……だったらこっちも言わせてもらうけどねえ!! あんたいったい何歳よ!?」

「へ? 12……ですけど……」

「ほらな!? いっとくけど、あたしなんて20なんだよ!? 20!! 20歳!! この歳でやるこっちゃないんだよ!! 着るもんじゃないんだよ!! もっと落ち着いてて然るべきなんだよ!! 説明文があったら絶対パラクリート・キリエ(20)って書かれてるレベルだよ!?」

「……でも☆ついてないし」

「でもも何もあるか!! あんたはお子ちゃまなんだから、そのぐらいのでいいんだよ!! ☆くっつけてラジカルぅーって言ってりゃいいの!!」

「あ、あー!! いまバカにしたでしょ!! バカにしましたよね!? ラジカルぅーってわざわざ口すぼめて悪く言いましたよね!? やっぱり恥ずかしくてかっこ悪いと思ってるんだ!!」

「あー思ってるさ!! いい歳こいた大人にゃ絶対できない衣装だと思ってるさ!! はっきり言って、よその知り合いに見られたら恥か死にするね!! よくあんた、平気であんな格好できるよね!?」

「そ……それを言いますか!? それを今ここで言いますか!? それを言ったら戦争ですよ!? 戦争になりますよ!?」


「――はっはっは!! あーっはっはっは!!」

 コデットの笑い声で我に返った。

「やっぱり面白いねあんたたちは!! 戦場のど真ん中で言い争いとは!!」


『あ……っ』

 顔を見合わせる。

 忘れてたわけではない。見失っていただけだ。自分たちの争いに集中しすぎた。

 気がつけば、全員の手が止まっていた。

 突然現れ変身し、大騒ぎを起こして仲間割れしてるふたりを見て、妖精も機械兵も敵方のお偉方も、みな戸惑うように立ち尽くしていた。


「……あんたのせいだよ。ほら」

 キリエがつま先を踏んでくる。

「な……キリエさんだって……!!」

 反撃するが、キリエの素早い動きを捉えられない。

「ぐ……っ」

「ほれほれ、ラジカル☆アンバーに変身しないとあたしにゃ当たらないよ? ほらへーんしん♪ へーんしん♪」

「ぐぐぐ……っ」

 拍子をつけたキリエの煽りに、かっと全身が熱くなる。


「――ま、冗談はさておき」

 キリエは急に真顔になった。

「おっつけ魔法少女みんなも駆けつけるだろうさ。それまではあたしとあんたでコデット様を支えないとな」

「……はい」

 アンバーは胸に手を当て深呼吸を2回した。

 冗談のように言っていた戦争が、他人事のように思っていた戦争が、今始まろうとしている――



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