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最果てのクロニクル~サヨナラ協定~  作者: 呑竜
妖精戦争

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「魔法少女ラジカル☆アンバー」

(長老。自分はまだ信じられません。あのブロミーが……)

(バカか。そんなわけがないじゃろう。あれは良くも悪くも素直な男じゃ。はかりごとなどできるタマではないわい)

(な……それではなぜあのような……!?)

(──大いなる使命のためよ)

(……大いなる……使命?)

(ふん、貴様ごときが知る必要はない)

(……ちょ、長老。何をなされるので……ちょっと……やめ……やめ……うわああああっ!?)

(騒ぐな。綺麗に食してやるから、おとなしくしろ――)


 ~~~モルガン~~~


 内輪もめを起こした鎧喰らい(アーマーイーター)の群れが去ったあとに、モルガンは動き出した。

 最後に残った偉そうなのともう一匹を片付けて宝探しをする……はずだったのだが。


 モゴモゴモゴ!! ゴワゴワゴワ!! 


 よくわからぬ言葉を繰り返すそいつらは突如仲間割れを引き起こし、偉そうなのが大口を開けて偉くなさそうなのを呑みこんだ。


「内輪もめに仲間割れに、まったく忙しい連中ね……」

 ぽりぽりと頭をかきながら、めんどくさそうにモルガンは姿を現した。

 透明化していたバドとふくちゃんも、同時に姿を現す。


(な、な、なんじゃ貴様ら!? いったいどこから現れた!?)


 長耳族の魔女ウィッチとお供の妖精、樹皮人ドライアドという奇妙な一行の出現に、偉そうなのは驚き慌てている。


「んー……細かいいきさつはわかんないけど、あんたが悪役ヴィランだってことだけはわかったわ」

ね!! 不浄の者よ!! ここは我らが聖域!! 貴様らの立ち入っていい場所ではない!!)

「……なに喋ってんだかわかんないのよね。わたしには拳で語ることなんてできないし」

(何を言ってる!? 野蛮な冒険者め!!)

「まーでもとりあえず、これだけははっきりしてるわ。あんたは悪役。しかもやられ役」

(ええい面倒な!! たかだか冒険者の一匹や二匹、このわしの敵ではないわ!! かつて一族最強と言われた男よ!! ひと息に呑みこんでくれる!!)

「……あら意外とかっこいい名前なのね。――でも止まりなさい『シカント・グラウ』」


 ぴしっ。


 名を縛る者の指輪で動きを束縛した。

 シカント・グラウはモルガンを呑みこもう大口を開けたまま、凍り付いたように動きを止めている。

「『火柱フレイム・ピラー』」

「『火柱フレイム・ピラー』」

「『火柱フレイム・ピラー』」

「『火柱フレイム・ピラー』」

 消費効率のよい火柱の魔法を連発すると、もともと火属性攻撃に弱いシカント・グラウはあっさり沈んだ。

 相性の差もあるが、あまりに無惨であっけない最後だった。抱えていたであろう秘密とともに焼け焦げた。

 

「ひっでえ……」

 バドが戦慄しながら後ずさる。

「じじょうもきかずにぎゃくさつとか~、どっちがあくやくなのかわかりません~」

 のんびりとした口調ながら、ふくちゃんも引いている。

「……むしろ悪役同士引き合ったみたいに見えるよな」

「それわかります~。るいともといいますか~」

 ため息をつくふたり。


「……なんであんたら、あっちの肩持ってんのよ」

 モルガンはじと目でふたりを見る。

「肩持つってわけじゃねえけどさ。なんちゅうか、盗人にも三分の理というか……」

「じょうじょうしゃくりょうのよちが~、あったかもしれません~」

 ふん……、モルガンは鼻を鳴らした。

「どうあれ最後は殺すんだから同じじゃない。言葉も通じないみたいだし、だったら有無を言わせず速攻あるのみよ」

『……』

 あまりに明確かつドライな言い様に、二の句がつげないふたり。


 シカント・グラウからのドロップアイテムは地下水道の地図と宝物庫の鍵だった。

 前者はそのままずばりのアイテムで、マップ画面から自分の位置と、ついでに地上への出口や隠し部屋の位置もわかるようになった。

 後者も名前まんま。鎧喰らいの一族の宝物庫の鍵だ。

「あの形状で鍵使うとかわけわかんないけどまあ、これでしばらくの間資金難にはならなそうね」

 アンバー捜索の情報集めのためにまとまった資金が必要だった。宝物庫というからにはそれなりの金やアイテムが期待できそうだが……。


 ――と、皮算用しているモルガンの視界に何かが映り込んだ。


 一匹、二匹、三匹。水管に潜り込んでいた鎧喰らいが戻ってきたのだ。

 彼らは倒れたシカント・グラウの亡骸を見て、怒りの声を上げている。


(ちょ、長老がやられてるぞ!?)

(バカな……一族最強の戦士がこうもあっさりと……!?)

(やはりブロミーが敵を引き込んでたのか……)

(……こいつらどうする? 宝物庫の鍵を持ってるぞ……?)

(知れたこと!! 一人たりとも生かして帰すな!!)

(そうだそうだ!! いかに苦手な唱える者(スペルキャスター)とて、この数で一斉に襲いかかれば……!!)


 モルガンはため息をついた。

「間に合わなかったか……はあ。面倒だなー。こっちはやる事やったらすぐ帰りたいのに……」

 ぼやきながらも、探知ディテクトで名前を調べることは忘れない。全員動きを止め、範囲魔法でまとめて始末するつもりだ。


 まる子、まる太、さん吉……。

(意外と和風なネーミングが多いのね……)

 みすず、よしと、パリューカ……。

(ゴールキーパーみたいな名前しやがって……)

 サントス、ベネット、アンバー……。

 サントス、ベネット、アンバー……。

 あん……ばー……?


「――はあああああっ!?」

 モルガンが驚きの声を上げると同時に、水管の中からひとりの少女が飛び出した。

 簡素な衣服を着ているその少女に、育ちの良さそうな顔立ちをしたその少女に見覚えがあった。


 少女は――紛れもないアンバーは、空中でくるくると回転しながら、手に持っていた鳥頭の杖を振るった。


「『レ・ゲナム・テ・モラム・ト・リセイル!! 愛する気持ちを胸に秘め、邪悪を力で打ち砕く――』」 

 マジックワードと共に、杖の先端の鳥頭から2匹の光の鳥が飛び出した。

 鳥は短く光速で旋回し、ぐるぐるとアンバーの体に衣装を巻き付けていく。

 ――ぴちぴちぴちっ!!

 ビニール地のロングブーツと腿上までのタイツ。

 ──ぴちぴちっ、ぷりんっ!!

 同じくビニール地のタイトスカートが薄い尻肉にぱっつり張り付き、タイツと合わせて絶対領域を形成する。

 ──ぴちぴち、ふにょんっ!!

 なだらかで繊細な双丘を覆うチビティーには、二羽の鳥に挟まれたでっかいハートマークが描かれている。

 ――ぐるぐる、バッチーン!!

 2羽の鳥は最後に鳥の髪飾りに変化して、髪の毛におさまった。

 全体的にぴちっとした衣装だった。淡くピンク色に発光していて、強力な魔法が宿っているのが見て取れた。


 アンバーは鎧喰らいの真ん中に軽やかに着地すると、

「世界の平和を守るため!! 無辜むこの民を救うため!! 魔法少女ラジカル☆アンバーただいま参上!!」

 ものすごい笑顔をしながら裏ピースをキメた。


 ~~~アンバー~~~


(な、なんだこいつは……!?)

(なぜだ……見てると顔が熱くなる……!?)

(なんだか恥ずかしい……恥ずかしいぞ!?)

(種族の差を超えた恥ずかしさってあるんだな……)

(待て待て、愛を胸に秘めてちゃダメなんじゃないのか? もっと前面に押し出してかないと。力ずくで打ち砕くんじゃなくてさー)


 ざわざわと騒ぐ鎧喰らいたちに、アンバーは赤面しながら鳥頭の杖を突き付けた。

「うるっさいわね!! わたしだって、できればこんな格好したくなかったのよ!! これにはやむにやまれぬ事情があるの!!」

 片手でスカートの裾を伸ばして必死に露出を減らそうとするが、いかんせんぴちっとした生地なので伸びない。幼い肢体のラインは傍目にも明らかで、意識するとますます恥ずかしさが募る。


(おお……言葉が通じるぞ……!!)

(こいつ……人間のくせに……!!)

(それなら話は早い!! 命惜しくば立ち去れ!!)


「無理よ!! 無理無理!! 命令なんだから!! 指示なんだから!! わたしは魔法少女として、あなたたちを倒さないといけないの!! あなたたちには夜会サバト襲撃の嫌疑がかかってるんだからね!?」


(夜会襲撃……?)

(なに言ってんだこいつ……)


「し、知らないとは言わせないわよ!! 王都地下に縦横に張り巡らされた地下水道!! 整備の人間ですら全貌を把握していない複雑怪奇なダンジョンを知り尽くしたあなたたちでなければ、あんな綺麗な襲撃は出来ないはずなんだから!!」


(こいつ……なんやかやで聞く気ねえな!?)

(もういい!! なんか知らんがやっちまえ!!)

(ぶっ倒したらこの格好のまま大通りに晒して、恥ずか死にさせちまえ!!)


「あ……悪魔みたいなこと考えるやつらね……!!」

 アンバーは鳥肌をたてながらかぶりを振った。

 王都はなんといったってアンバーの地元だ。カロックの村にいた期間と同じかそれ以上の時を過ごした。

 当然知り合いだって多い。見られたくない人は大勢いる。親だっているし、友達だっている。晒し者にされれば死ぬしかない。


 ――尊厳に賭けても、負けられない。


 決意を固めると、アンバーは鳥頭の杖をちゃきりと構えた。

「いいわ。その勝負、受けて立つ。愛の使徒たるこのわたしが、あなたたちに愛の素晴らしさを教えてあげる!!」

 きりりと表情を引き締めると、迫りくる鎧喰らいたちの間に分け入った。


 ズザザアッ!!


 ――肩幅より広くスタンスをとった。

 ――鳥頭の杖の根本を両手で握り、テイクバックを大きくとった。

 ――野球のバッティングの要領だ。腰の回転を意識し、手近にいたのを思い切りよくぶん殴った。

「っ飛んでけええええええぇ!!」


 ゴオォォォォン!!


 寺の鐘を叩いた時のような、長く間延びした音が辺りに響く。

 叩かれた鎧喰らいは地面と水平にすさまじい勢いでぶっ飛び――それこそフェンス直撃ぐらいの勢いで遠くの壁にぶち当たった。

 威力はすさまじく、物理耐性のある鎧喰らいのHPを一撃で半分がたもぎ取った。


(物理……!?)

(物理だと……!?)

(いま飛んでけっつったか……!?)

(そういや『力で打ち砕く』って言ってたな……)


 鎧喰らいたちがざわつく。


(どこが魔法少女だよ!! 完全に前衛アタッカーじゃねえか!!)

(杖って絶対そんな使い方するもんじゃねえよ!!)

(さっきの闘女バトルレディといい、こいつらいったい全体なんなんだ!! 魔法使えよ!! 頭使えよ!! なんでも物理で無理くり解決しようとすんなよ!! 野蛮人か!!)


「ひ、人を脳筋扱いするんじゃないわよ!! しょうがないでしょ!! そういう武器なんだから!! 仕様なんだから!! あ……愛は時に痛みを伴うものなのよ!!」


(ちょっと言いよどんでるじゃねえか!!)

(そんなんで愛を語るとか、逆にこっちが恥ずかしいわ!!)


「ううう……うるさいうるさいうるさーい!! 愛のもとに死ねええええぇえ!!」


(いま明らかに「死ね」って言ったぞ!?)

(愛の使徒が来るぞ!! 逃げろおおおー!!)


 アンバーが杖を振りかぶると、鎧喰らいたちは蜘蛛の子を散らすように逃げ去っていく。


 そんな中、逃げ遅れた個体が必死で命乞いをする。

(すまん、ごめん、悪かった。許してくれ……!!)


「だーめ、絶対許さない(にっこり」


(お願いだ。あんたに心があるのなら、その広い心と小さな胸で許してくれ!!)


「あんたそれ謝ってるフリして煽ってるだけでしょうが!!」


(違う!! すまん!! 言葉の綾だ!! 見たままのことを褒め称えただけなんだ!! あんたの長所だと思って!! 世の中には絶対そういう趣味の人もいるからむしろ売りにしていくポイントだと思って……!!)


 ぎり……、と奥歯を噛み締めるアンバー。

「――うるさい黙れ!! っ星になれえええええええええぇ!!」


 ホームランで天井まで打ち上げると、鎧喰らいのHPは一撃でゼロになった。

 他の鎧喰らいたちは全員水管の奥に逃れ去り、あとにはアンバーと、無辜の民──冒険者の一行が残された。


 やりきった感満載のすがすがしい顔で、アンバーは冒険者のほうに振り向く。

 裏ピースでキメポーズを作りながら、

「大丈夫だった? あなたたち、けがはない? 怖い目にあったわね。でももう大丈夫。この魔法少女ラジカル☆アンバーが、人の傷口に塩を塗り込む悪魔どもを滅殺してあげたから♪」

 

 しかしその目に映りこんだのは、思ってもみなかった人物で……。


師匠せんせい……なんでここにいるの……?」

 アンバーの声は震えた。

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