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最果てのクロニクル~サヨナラ協定~  作者: 呑竜
妖精戦争

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63/118

「王都決戦」

 ~~~~~ハチヤ~~~~~


 王都近傍のカラバル平原。地平を埋め尽くすのは人馬の群れだ。ロックラント帝国自慢の騎馬兵が横一線に並んでいる。その数は500騎。並みのトレインなら最初の突撃だけで粉砕してしまう、帝国自慢の騎兵隊。

 逆Vの字の偃月えんげつ陣形の先頭、禿頭の巨漢は丸耳族のベルゼルガ。2本の戦斧ウォーアックスを操る怪力無双の騎士だ。

「チビっ子どもがどたばたじたばた逃げ回りやがって!! ようやく追い詰めたぜ!! ここがてめえらの墓場だ!! この斧の前に、おとなしく首を差し出しやがれ!!」

 巨大な戦斧を重さがないかのように振り回すベルゼルガのパフォーマンスに、帝国兵の指揮が上がる。


 対するは、真紅の長髪に隼の翼を備えた女妖精オデッサの率いる牛騎兵ボンゴナイト700騎。帝国騎兵に比べると耐久力攻撃力の両面で見劣りするが、魔法による能力の底上げも期待出来るし、数や機動力面では帝国騎兵に勝る。

「黙れ!! 図体がデカいだけが取り柄のうつけが!! ――よいか者ども!! 我ら妖精族の自由の巣を守るのは我ら自身だ!! 剣をとれ!! 牙を剥け!! 彼奴らが二度とこの地に足を踏み入れようなどとは思えぬよう、徹底的に叩きのめせ!!」

 高々と突き上げたレイピアの剣身に圧倒的な光量の魔素マナが輝く。白い光。正義の色が閃光となって辺りを照らした。


 ――オオオオオオォー!!


 ――戦いは、士気軒昂な両軍騎兵の突撃から始まった。ベルゼルガとオデッサ。両エースを先頭に、真正面からぶつかり合った。


「喰らえ小虫!! 双斧竜巻ダブルアックス・トルネード!!」

 ベルゼルガが戦斧を竜巻のように振り回すと、

「なんの!! ――秘剣!! 稲妻突き!!」

 オデッサが稲妻のような突きを返す。

 ベルゼルガは耐久力と有り余るHPで凌ぎ、オデッサは圧倒的なスピードで攻撃を回避する。

 エース同士の激突はまず互角――。


 差が出たのは騎兵同士の戦いだった。

 帝国騎兵と牛騎兵、1対1の戦いでは基本的に帝国騎兵に分がある。耐久力と攻撃力に勝る帝国騎兵に押され、牛騎兵はじわじわと後退せざるを得ない。

 だが即座に決着のつくほどの差ではない。その間に牛騎兵は、余った兵力200をを帝国騎兵の背後に回り込ませた。

「挟み打ちだ!! 一騎たりとも逃がすな!!」

 オデッサの指示に応え、軽捷な牛騎兵が帝国騎兵を挟み込んだ。前後に敵を迎えては、精鋭揃いの帝国騎兵もたまったものではない。一騎、また一騎と討ち取られていく。


「歩兵戦列前へ!! 弓兵!! 魔法兵!! 援護せよ!!」

 ベルゼルガの大音声に、統率のとれた帝国軍が応じる。


「皆!! 前へ出ろ!! 総力戦だ!!」

 オデッサの指示は単純だ。直属の部下でない一般の妖精兵は、なにしろ能天気な連中なので、「行け」とか「戻れ」ぐらいの指示しか聞かないという事情もある。


 騎兵突撃以降の戦いは、明らかに帝国側に分があった。

 前衛に盾役である槍兵歩兵を配し、後衛から弓兵魔法兵で遠隔攻撃という基本をしっかりと守っていて、これが地味に強い。

 妖精側のNPC連中たちが何度か敵後衛への突撃を試みるが、前衛に邪魔されてなかなかたどり着けない。長年キティハーサの支配権を争ってきた両者の戦いは、未だ明らかな答えを出さない。


 ~~~~~


 エース同士の激闘とか戦局の推移そのものとは一切関係のないパンピーな俺たちは、牛騎兵から遠く離れた歩兵戦列の中にいた。

 一口に歩兵といってもそこは妖精族なので、体の大きさも武装もまちまちだ。剣や槍だけでなく、鞭やら鎌やら棍棒やらと一通り揃っていて、よく言えばバリエーション豊か。悪く言えばバラバラだ。遠隔攻撃部隊との区別もなく、牛騎兵以外を適当に寄せ集めただけなので、戦列としてのまとまりは帝国に劣る。

 帝国側が、騎兵の後ろに槍兵。そのすぐ後ろに歩兵。最後尾に弓兵と魔法兵を集め、非常に統率がとれた衆を成しているのとは真逆だ。


「あいつら、上手く稼げてるといいけどな~」

「そうですね~。援護ポイントの割合ってけっこう高いですもんね~」

 コルムとアールはポイント稼ぎに行っているので、俺とルルは留守番していた。

 俺はすでに、堅身バディで物理耐性、祝福ブレスで精神耐性、韋駄天ゴッドスピードで移動速度アップをアールとコルムにそれぞれかけてもらっている。魔法の使えない俺には開戦を待つ以外に他に何もできることはないが、尼僧ナンであるアールや斥候スカウトであるコルムには、自分たち以外の味方に強化魔法をかけて回るという選択肢がある。

 戦に貢献した度合いに応じてポイントが加算され、ポイントによって経験値やお金やアイテムがもらえる戦争システムでは、敵を倒すことの期待できない回復役や補助役用に味方の援護のポイントを高めに設定してあるので、強化魔法行脚がかなり効果的なのだ。


「おー。どうだったアール? ポイント稼げたか?」

 強化魔法行脚から戻って来たアールは、しかし暗く肩を落としていた。

「……ダメだった。パナシュって人に邪魔されて……」

「げげ、あいつら邪魔までしてきやがるか……」

 サーディンのPTメンバーである長耳族のパナシュは司祭ビショップだ。当然のごとくレベルはカンスト。レベルに応じて弱から強への上書きができ、その逆は出来ないという強化魔法の設定だから、先回りされて強化された場合、アールには何も出来ることがない。


「こっちもだ。ええいちくしょう、ずっと張り付いて来やがって。いやらしいやつらめ」

 憤慨しているコルム。メイルーの職業クラスである精霊使い(シャーマン)は、斥候の上位職だ。アールの時と同様、ことごとく先回りされたらしい。

「くそっ。サーディンの指示だな。あいつ、ほんとにこういう嫌がらせだけは天才的だな……」

 歯噛みするが、今さらどうにかなるものでもない。

「しかたない。戦闘で挽回しよう」


 なんてフォローしてみても、花形NPCのような派手な戦闘が出来ない俺たちに出来ることなんて、たかが知れている。乱戦の中で味方の援護をして回るか、敵の雑魚を複数で囲んで地道に倒していくか、敵主役級NPCが倒れるのにとどめだけ合わせて漁夫の利を狙いにいくか。そんなところが関の山だ。情けないけどこれが現実。

「焦らずマイペースで行こう」

 コルムの指示で、俺たちは迷惑スキルに巻き込まれないように戦場の隅に移動した。コルムが弓で歩兵を一体引っ張って持って来て、3人でボコる。引っ張って来てボコる。引っ張って来てボコる。センターに入れてスイッチ。……うーん、地味だ。

「ほんと、モブってやだよなあ……」

「いーじゃないですかあるじ様。それともなんですか? あの中に混じりたいですか?」

 ルルが指さした先ではちょうど、どこかの妖精あいかたの「極限状況強制転移エクストリーム・ジョウンター」が発動したところだった。周辺一帯が敵味方ごと空間転移して、いきなりクリアになっている。うわあ……恐ろしい……。

「戦闘が煮詰まって来ると、どんだけ余力があってもあれですもんね。怖いですよねえ」

「……おまえが言うのは反則だと思うぞ?」

 反則だが、ルルの言ってることはおおむね正しい。HPが50%を切ったら発動。というタイプの迷惑スキルはけっこう多く、両軍疲弊して迷惑スキルが発動しやすい時間帯のことを、俺たちは「魔の時間帯」と呼んでいる。君子危うきに近寄らずだ。ぶるぶるぶる。


「ハチ。あれ――」

 見れば、極限状況強制転移のおかげで空いた敵前衛の隙間に、妖精族がなだれ込んでいる。接近戦に弱い敵後衛を狙うのだ。

 怪我の功名というべきだろうか、ともかく局面が動いた。

「よし、俺たちも行こう」

 同じことを考えた冒険者は多いらしく、一気に人が集中した。敵味方入り混じり、一瞬わけがわかんなくなる。

「アール!! はぐれるなよ!!」

「わかった!! ハチヤ!!」

 乱戦の中、俺たちは慎重に自分たちの居場所を探った。上手いこと敵中で暴れられればいいが。他人の妖精あいかたの迷惑スキルに巻き込まれたり、ひとりだけはぐれて孤立死する、といった状況だけは避けたい。


「――は!! 素人が邪魔くせえ!!」

 見れば、サーディンが雷光のような速度で次々と敵後衛を斬り捨てていく。自慢の両手剣トゥーハンデッドソードオーラセイバーの威力もあるが、乱戦の中で弱った敵を見抜き、一振り二振りで確実に仕留めていく洞察力がすごい。

「サーくん後ろ!!」

 サーディンの後ろに回った敵歩兵を、メイルーが弓技「影縫い」で足止めする。

「サーくん!! 頑張って!!」

 連戦で減ったサーディンのHPをパナシュが回復。持続時間の迫った強化魔法を絶妙のタイミングでかけ直すことも忘れない。

 長年戦争屋を続けてきた3人のコンビネーションは伊達じゃない。乱戦の中でも乱れない連携は見事の一言だ。


「……悔しいが、あいつら腕はたしかだな……」

 歯噛みしている俺の横で、コルムが弓を射かけて敵魔法兵を一匹打ち倒した。

「おいハチ!! 降伏か!?」

「バカ言え!! あんなやつらに負けるかよ!!」

「そりゃそうだよな!! だったら気合入れろほら!!」

 にやり笑って、コルムが韋駄天をかけ直してくれる。

「――ルル!! 探知ディテクトだ!! 敵の名前を俺に教えてくれ!!」

「あいあい!! あるじ様ー!!」

 ルルの教えてくれた敵弓兵に向かって、俺は魔剣をーー「名を穿うがつ者の剣」を構える。

「『剣よ!! 剣よ!! 我が声を聞け!! 我が敵の名を知れ!! は汝の敵なるぞ!! 地の果てまでも追い駆けて、討ち果たさねばならぬ者なるぞ!! 知らざるならば胸に刻め!! 憎き其の名は――アイザック!!』」

 パァアアアー。

 鏡のように磨かれた魔剣の表面に、光の文字が浮かび上がる。

 閃光は刀身すべてを覆い、身を焦がすような鮮烈な光になった。風が巻き起こる。重力を振り切るほどの強い風で、俺の体が浮き上がる。

「――!?」

 サーディンの間抜けづらが良く見える。はっはー!! とくと見やがれ!!

「行っけえええええー!!」

 俺は一本の剣となって宙を飛んだ。アイザックを自動追尾し、直線状に並んでいた敵後衛をまとめて貫いた。5匹まとめてぶっ倒して、アイザックまで倒してようやく止まった。


「な――なんだそりゃあ!? 汚えぞ!?」

「はっはー!! 身の程知らずに俺に勝負を挑んだのが運のツキだったなあ!?」

「課金アイテム!? いや……見たことねえぞ!! マジでなんなんだよそれは!!」

「絆だよ絆!! 絆のアイテムだ!! 戦争しかしてこなかったおまえにはわからねえだろうけどよ!!」 

「チートだ!! ずっけえぞ!!」

 わけもわからず悔しがるサーディンを一方的に言い負かす快感!! 最高だ!! 最高の気分だ!!

「ハチヤ……ノッてるな……」

「あるじ様って基本お調子者ですからねえ……」

 なぜか呆れられてるみたいだが、気分がいいので今は許す!! どうとでも言いたまえ!!


「ルル!! 次だ!! 次に俺の魔剣の錆になるのはどいつだー!?」

「え? えっとじゃあ……リノラ」

 ルルの教えてくれた名前を呼ぶ。今度は魔法兵だ。リノラごと6人。ピロピロピローンと連続してポイントが加算される。

「はっはっはっは!! あーっはっはっはっは!!」

 敵が密集しているという状況のせいもあって、面白いほどに倒せる。以前参加した時とは比べようもないほどの大戦果に、俺のボルテージは最高潮に達する。

「次!! 次はどいつだぁ!!」

 無双系ゲームの主人公みたいな気分になって振り向く俺の目の前に、なぜか紫色の煮こごりのような巨大なスライムがいた。

鎧喰らい(アーマーイーター)……の、群れ?」

 ルルの声が震える。

 スライムは一匹だけじゃなかった。一匹一匹が小山ほどもあるようなのが、視界いっぱいにひしめいていた。帝国側、妖精側のNPCを軒並み倒し押しのけ、ぐわりぐわりと弾むような奇妙な動きをしていた。


 戦争イベントが行われているフィールドの配置モンスターは、戦争イベントと関係なくPCに絡んでくる。範囲技を使えば戦争イベントのキャラにも絡んでくる。だから強力なレアモンスターのいるフィールドでは、ちょっとしたタイミングですさまじい激戦になることがある。

 鎧喰らいは特殊なモンスターだ。王都のメインストリートに突如ポップするのだが、巣は地下水道の奥にあり、王都の外へ、つまりカラバル平原へ通じているという噂を聞いたことがある。

 これだけたくさんの――見渡す限り100体はいるだろう――がいるということは、誰かが地下水道を通り、ここまで連れてきたのだ。だがいったい誰が――


「おー、なんだよハチコー。おまえらこんなとこにいたのかよ」

「――なんかそんな気はしてたけどね!!!?」

 気楽な様子で手を上げるイチカに、俺は全力でツッコミを入れた。

「おまえなんでわざわざ戦場を混乱に陥れるような真似を……!!」

「はー? 戦場? 混乱? 知らねえっつの。なかなか勝負がつかなくて、いろんなとこへ移動しながら戦ってたらこんなとこに出ちまったんだよ。――なんだここ?」

 鎧喰らいと戦いながら移動を繰り返し、そうとは知らずにトレインを誘発してきたのか。こいつ……。

「あれから1時間以上経過してると思うが……おまえ、ずっと戦ってたの?」

「おー。なかなかこいつらが硬くてさあ」

 振り向いたイチカの背後から、鎧喰らいがまん丸な体の一部を触手のように伸ばして攻撃する。

 イチカはそれを体を倒すように躱し、振り向きざま上段回し蹴りを当てた。

 回避に無駄のない攻防一体のモーション。かつ後ろからの攻撃を正確に察する感覚。さすが現役空手家というか、なんかすごいものがある。

「これでも10や20は倒したはずなんだがなあ……」

「マジかよ……すげえな」

 ちなみにイチカのHPの減り具合は2割ってところか。直接攻撃に、とくに打撃攻撃に耐性のある鎧喰らいをぶっ倒してかつダメージを貰わないとか、もはや人間業じゃない。

「……な、なあ、ちなみにモルガンは?」

 あの人の魔法があれば、こんなのすぐ終わる戦闘だったはずなのに。そうすりゃこんなことにはならなかったはずなのに。

「あー? 先生なら、こいつらの巣で金目のもの探してるぞ?」

「ほんとにブレねえ人だよなあ……」

 しみじみ。


「……あるじ様あるじ様」

 ルルがちょいちょいと俺の服の袖を引っ張る。

「ん? なんだルル」

「どうやらそれどころじゃないですよ……」

 ん? ルルの目線を追うと、フィールドに解き放たれた鎧喰らいたちが周囲のキャラに無差別に襲い掛かっていた。

「なによこいつ、あたしの自慢の鎧を溶かして……!!」

「服が……服がー!!」

「ハチヤ……助けてくれ……!!」

 鎧を溶かすというのが最悪だった。自慢の鎧や一張羅のローブをボロボロにされ、辺りにはヒステリックな悲鳴が飛び交っている。

「……攻撃が効かない!?」

「魔法だ!! こいつら魔法に弱いぞ!!」

 誰かが叫んでいる。

 繰り返すが、鎧喰らいは物理攻撃に強い。倒すなら魔法だ。しかもこれだけの数を葬るなら範囲魔法で一掃するのが一番だ。だけどここは戦場だ。敵味方入り乱れた状況で範囲魔法を連発すればどうなるか、そんなの誰にだってわかってるはずなのに、鎧を溶かされるという衝撃が、みんなから冷静な判断力を奪ってしまった。

 炎、雷、氷、風、土、闇、光。あらゆる範囲魔法が飛び交った。それは多くの鎧喰らいを葬った。だが同時にフレンドリファイアを誘発し、すべてのヘイト管理をも無に帰して、戦場を大混乱に陥れた――。


「ハチ!! やばい!! 敵味方の動きが変だ!!」

 コルムが警戒の声を発する。

 同時にぶっ放された範囲攻撃魔法の影響で、ヘイトが偏ってしまった。過剰に恨みを抱いた敵味方が一極に戦力を集中し、大小のトレインが戦場のあちこちに誕生した。洪水に呑みこまれるように多くの冒険者PTが姿を消した。うちのPTは範囲攻撃魔法の使い手がモルガンとルルしかいないため問題ないが……あれ、ルルさん? なにそのてへぺろ。

「ごめんなさいあるじ様……」

「お……おまえまさかっ!!」

「やっちゃいました♪」

「おまえ絶対わざとだろー!?」

 謝っているようで謝ってないルルにチョップして、俺は戦場を見渡した。ヘイト上位にいたPTが軒並み全滅している。辺りを蹂躙し尽くした帝国兵の大群が、ぎょろりとこちらを――ルルを睨んだ。


「――ラクシル!!」

 俺の呼びかけに応じたラクシルが、神速で戦場に姿を現した。

「……ヘイオマチ」

 ズシャアッと土煙を立てながら眼前に到着すると、ラクシルは感情の薄い目を俺に向けた。

 全身がミスリル銀で出来ている魔女ウィッチエンジン。伝説の魔女カイの生み出した可愛い相方。炊事洗濯掃除に乗り物探し物、となんでも出来るけど、一番輝くのは戦場においてだ。普段の戦闘じゃオーバーパワーすぎるし経験値にならないんで使わないけど、こういう時は頼りになるぜ。

「お、おいハチ。ラクシルなんか呼び出して何させる気だ……!?」

 なぜかコルムが慌てている。

「目標はあれだ。敵の一群。構うこたねえ、薙ぎ払え――」

「……ン」

 ラクシルは無表情にうなずくと、髪の毛のように頭部から生えている金属筒を束ね、多砲塔のように伸ばした。両脚を地面に深く差しこみ、反動に耐える姿勢をとる。

「おいそれは――」

 コルムが叫んでいた何かは、轟音とともにかき消された。

「――『神秘の砲塔ミスティック・ガン・タレット』」

 膨大な魔素マナを束ねたレーザービームが、敵味方入り乱れる戦場を駆け抜けた――。


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