「ヤクソク」
ハチヤ 軽戦士40LV 丸耳族
ルル 司祭28LV
迷惑スキル:諸人こぞりて。近くに一定数、もしくはレベル以上のモンスターがいて、プレイヤーが戦闘状態になければ、強制的にトレインを誘発させる。
コルム 斥候40LV 丸耳族
バクさん 聖騎士28LV
迷惑スキル:極限状況強制転移。プレイヤーのHP(生命力)が一定値を下回ると、半径6キャラ分の範囲内にいるPTメンバーごと強制転移させる。
マヤ 女騎士30LV 小人族
バランタイン 騎士 21LV
迷惑スキル:ライオン騎士。プレイヤーが戦闘状態になく、かつプレイヤーより強いモンスターがいれば、強制的に戦闘状態に入る。
イチカ 闘女 25LV 獣人族
シショー 鉄鍛冶18LV
迷惑スキル:一意戦心。プレイヤーのHPが半分以下になった時にしか動かず、ひとたび動き出したらMPを消費し尽くすまで止まらない。
アール・オブリス 尼僧25LV 兎耳族
ママ 歌姫18LV
迷惑スキル:道化の嘲り(コメディリリーフ)
罠があれば踏んでしまう。モンスターがいれば音をたてて見つかってしまう。物語の道化役として、「やってはならないこと」をやってしまう。発動ロールは脅威への距離による。近ければ近いほど、発動率は高まる。
モルガン 魔女30LV 長耳族
ふくちゃん 吟遊詩人21LV
迷惑スキル:小悪魔
小悪魔のようにお強請りする能力。かけられていない回復魔法や強化魔法、物理盾を状況問わず要求する。強請られたプレイヤーは、MNDによる抵抗ロールに成功しない限り要求を満たすようシステムに強制される。所持金の100分の1までの金額のアイテムを購入するよう要求することもある。
~~~~~ハチヤ~~~~~
「――くそっ!!」
「あるじ様ぁ!!」
禁呪のダメージを少しでも減衰しようと、咄嗟に手近の木の陰に飛び込む俺とルル。目をきつく閉じ、抱き合ってダメージに備える。
が。
「……ん?」
「……あら?」
いつまでたってもその時は訪れない。風も雷も降りかかってこない。目を開け上を見上げると、千眼の手に集まっていたはずの強大な力は、いつの間にか消えていた。嵐が止み凪いだ空に、赤と白の二連星が仄見えた。
――システム補正だ。俺は気づいた。何かが千眼を止めた。とどめの一撃を放たせなかった。
「はあああああぁああああ!? なんだってんだバカやろおおおおぉおおおおお!!」
思うように呪文の発動が出来なかった千眼は、大荒れに荒れていた。
「畜生!! ふざけんな!! ここからがいいとこだろうが!! 骨まで焼き尽くしてやるとこだったんだろうが!! っああああああああ!!」
ぶんぶんと拳を振り回し、目に見えぬ何かを蹴たぐり回しながら、千眼は暴れ続ける。
「あーあーあーあーあーあーあー!! わかりました!! わかりましたよどちくしょう!! よく聞けてめえら!! 俺様ちゃんとヤリたきゃ王都に来い!! そのための道筋はすべて残してきた!! そこの賢い坊ちゃんならわかるだろうよ!! ――ああ!? 金髪の小娘!? そんなもんどうでも……ああああああああっ!! わかったよ!! 言えばいいんだろ!! アンバーもそこにいる!! これでいいか!? ああ!?」
誰かとスカイプ越しにケンカでもしてるかのように大騒ぎする千眼は、実に実に悔しそうだ。
「――なーる。『設定』で、それ以上はなんも出来ないわけね?」
起き上がり、俺は悠然と腰に手を当てる。
「ああ!? なんだてめえ!?」
千眼の顔が怒りに歪む。
「なんでもねえよ。命令に背けない、いいコの千眼ちゃん。俺らを殺せなくて悔ちーですかー? ねえねえ? どんな気持ち? 今どんな気持ち?」
「はあああああああああぁー!?」
「いいんだよそんなに無理して悪を気取らなくても!! わかってるから!! 俺わかってるから!! ホントは君がいいコだって!! 冒険者を教え導くツンデレちゃんなんだよね!? いいんだよ自然体で!! 歳末助け合い運動とかしててもそっとしておいてあげるから!! 募金されるまで物陰からこそっと観察して、可愛い桃色のGIF作ってあげるから!!」
「ぬぅがああああああああー!?」
「あるじ様のめっちゃいい笑顔が逆に怖いですよルルは……」
血管切れそうになってる千眼を延々と煽り続けてたら、ルルがいつの間にかジト目で見ていた。
「えー? なんで? 本音だよ本音(にこにこ」
「あー……はい」
「覚えてろ!! 忘れんな!! てめえだけは俺が殺してやるかんな!!」
いかにも悪役な捨て台詞を残して空の彼方へ去る千眼の後ろ姿に、
「おおーい、龍雷なんとかの続きはなんだったんだよー!?」
とどめの質問を投げかけると、ルルは完全にどん引きしていた。
「……あの人のHPは完全にゼロだったと思うんですがねえ……」
「はっはっは。当然の疑問だろ? 技名最後まで聞かないと気持ち悪いじゃないか(にこにこ」
「うわあ……」
おや、なんだねルルくん。その世にも稀なる外道を見る目は?
~~~~~
形の上ではあるが千眼に勝ちを納めた俺たちは、PTを離脱し黄蚊の群れに身を投げたアールを除いてそれぞれに経験値を取得し、レベルアップした。
だがしょせんは仮初めだ。追い払っただけで、倒したわけじゃない。再戦は必ずある。
アンバーの行方も王都としかわからず、そういう意味では限りなく敗北に等しい。
さんざ煽って小馬鹿にしてやって、少しはスッキリしたけれど、そんなの憂さ晴らし以外の何物でもない。
解決しなきゃならない問題はまだまだ無数にあって……たぶんそのひとつがこれだ。
~~~~~レフ~~~~~
樵の家に生まれた。大きな父と、それよりもっと大きな母に大切に育てられた。体がデカいくせに気が弱くて、よくみんなにバカにされた。バドもバカにはしてくるけど、そこには優しさがあったから、そういった意味で傷つけられたことは一度もない。
アンバーと出会った時のことは、昨日のことのように覚えている。
天使が降り立ったのだと、大げさではあるがそう思った。この世でもっとも美しいものがこの場に降り立ったのだと。
初めのうちは上手く喋ることが出来なくて、いちいち凹んでいた。バドとアンバーと3人で頻繁に会うようになって、野山を駆けずり回ってるうちに徐々に徐々に打ち解けて、ようやくふたりだけでも長い会話が成立するようになった時は嬉しかった。
ふたりの気持ちには、早くから気づいていた。でも、バドはいいやつだったし、バドを見るアンバーは実にいい表情をしていたから、自分の気持ちに蓋をすることにした。
辛く狂おしくはあったが、耐えられないものではなかった。得られる喜びよりも、失う恐れのほうが強かった。
バドが樹皮人であることに気がついたのは、野遊びの最中のことだった。
おかしいなと思ってはいた。あまりにも似ていないロッカとの親子関係。母の不在。不自然な記憶の欠落。珍しい髪と瞳の色との取り合わせ――崖から落ちかけたレフを掴むバドの手が延伸し、人の手とは思えぬほどに硬質化した時に、すべてのピースは嵌まった。
樹皮人と人間は、一緒になれない。バドとアンバーは、幸せになれない。
――ダッタラ、ボクダッテイイジャナイカ。
頭の中で、悪魔が囁いた。
ふたりを引き裂いてしまえ。空白になったバドのポジションに、自分が収まってしまえ。
行動はすべて裏目に出た。アンバーは発作を起こし、バドとの仲は決裂し――そして、ひとりだけになった。
嵐の一夜が明け、皆、忙しそうに立ち働いている。建物の修繕。食用にならなくなった作物の選定。ロックグラス邸は未だ蜂の巣をつついたような大騒ぎ。師匠とその仲間たちは、村の目抜き通りで旅の準備に余念がない。
ツンツン頭の軽戦士がまとめた荷物をお付きの妖精の女の子が端からほぐしていき、その都度怒られては頭を抱えてわーきゃー飛び回っている。師匠の妖精のふくちゃんは、事あるごとに買い食いをおねだりし、師匠はいちいち相好を崩しながら露店につれてかれている。獣人族の闘姫とお付きの土妖精は荷造りもせずに寝てばかり。闘姫の荷造りをしてあげようとしている(らしい)ミニマムな女騎士は何故か自分自身を荷造り紐で縛ってしまい、年長の騎士の妖精に心配されている。浅黒い肌の戦士と犬、偉そうな尼僧と泣き女のコンビは早々に準備を済ませ、茶を飲みながら軽戦士と女の子妖精のやりとりを眺めている。
――余念がない、というと語弊があるかな。
自分の考えに、自分で笑ってしまう。
「……おまえは準備しないのかよ」
隣にバドが立った。麻の袋に適当に物を詰め込み、正体隠しはだぼっとデカい大人用のフード付きローブを着ただけ、という潔い荷造りは、いかにもバドらしい。
自分だったらどうしていただろうか。そんなことを考える。着替えに洗面用具に寝具、当面の食糧。おやつ。甘いものとしょっぱいもの。虫歯にならないように歯みがき。怪我をした時のための薬、包帯。妹が作ってくれた木彫りのお守り。安全を知らせる手紙セット……。
――ああ、いっぱいになっちゃった。何か置いていかないと……。
気がつくと、視界が霞んでいた。あとからあとから止まらない涙が、世界をぼやけさせた。
「……やっぱり行かねえのか」
「ボ、ボクは……!!」
上手く声を出せない。声帯が震えるばかりで、ちゃんとした言葉になってくれない。
「ボク……!! は……!! 弱……いから!! ついて……行……っても!! みんなの……迷惑に……なる……だけだか……ら……!!」
しゃくりあげるばかりで、思いがつっかえる。
「あの……時……も!! ボクだけ……!!」
――動けなかった。誰もが果敢に千眼に挑みかかる中、レフだけがふくちゃんの助けを必要とした。
足が動かなかったことも、手が上がらなかったことにも言い訳は出来ない。ただ怖かった。アンバーのために戦わなければならない局面だったのに。
「ボク……は……ノロマ……で!! グズ……で!! だから……!!」
――行けない。迷惑をかけるから。
全てを吐き出すまで、バドは待ってくれていた。しゃがみこみ、じっとレフを見ていた。
「――わかった」
ぽんぽんと尻を叩いて立ち上がると、バドはレフにくるりと背を向けた。なんの言葉もくれなかった。罵倒も赦しも、何もない。
――やっぱり怒っているんだ。もう、自分たちは昔のようにはなれないんだ。
わかっていたことのはずなのに、今更ながら胸がぎゅっと詰まり、呼吸が苦しくなった。
「――てろ」
「え?」
バドが何か言った。くぐもった声だったので、何を言っているのかわからなかった。
聞き返すと、バドはめんどくさそうに頭をガシガシかいた。
「親父の面倒頼むわ。もういい歳だし、最近じゃ腰が痛えだの目が霞むだのやかましいし。手に職があるから食いっぱぐれはねえだろうけどよ。オレがいねえと急にボケちまったりするかもしんねえ。あんなんでも親は親だからな。血の繋がりはなくても、拾ってくれた恩はあんだ。だからさ……そん時は頼むわ」
「バド……」
「おまえはここで待ってろ。オレが必ず、アンバーを連れて戻るから」
「バドぉ……」
「うるせえな!! 男のくせにピーピー泣くんじゃねえよ!!」
「ごめんよう~。バドぉ~」
「ああもう!! めんどくせえな!!」
チョップされた。すっかり体つきの変わったバドの手刀は硬くて痛いが、それは嬉しい痛みだった。
「だけどおまえよ……」
「うん?」
「次会う時までにゃ、もっと強くなっとけよ?」
「……うん」
「オレたち自警団が、この村を守るんだからな」
「……バドぉ~」
「あーもう!! だからピーピー泣くんじゃねえっての!!」
~~~~~ハチヤ~~~~~
バドとレフの別れの儀を、モルガンとふたりで眺めていた。
「なんだ。心配する必要はなかったな。勝手に自分らで仲直りしてやんの」
「男の子ってそうよね。どっちが悪いとか関係なく、手打ちに出来るの。女の子だったらもっと……」
「もっと?」
「水面下でどぎついことになるのよ(にこにこ」
「……あ、うん。怖いんでその先はいいです」
謎の微笑を浮かべるモルガンから目を逸らす。
「そういやロッカさんは? いないみたいだけど、息子の旅立ち見に来ないの?」
「そんな余裕ないのよ。ロックグラス邸はこれからが大変な時期だろうし……」
「ああ……」
ひとり息子が樹皮人であることが露見し、その友達だった娘は拐われ行方知れず。糾弾されることまではないかも知れないが、おそらくもう、平和な日常は帰って来ない。
「そりゃ辛ぇわな……」
「……まあね、でも――」
「……でもなんすか?」
驚くほど透き通った目で、モルガンは語る。
「いつ露見するか冷や冷やしなかったわけはないし、血の繋がりがない事実に悩まなかったことはないはず。でもその上で、樹皮人を自分の息子として育てようとしてきた人よ? この程度のことでどうにかなるような、ヤワな精神の持ち主なわけがないじゃない」
「簡単に言いますね……」
「簡単よ。私だったらそうだもの」
「ああ……」
師匠と弟子という関係は、親と子のそれに似ている。そう言いたいのだろうか。その上で、自分だったら弟子にどんなに迷惑をかけられてもいいし、気にしないってことなのか。
「ああ……っ、なんかもうさ……」
「なによ?」
立っていることに耐えられなくなって座り込む。
「先生を尊敬しかけてる自分が嫌いっすわ……」
あら――モルガンが嬉しそうな声を漏らす。
「なにそれ、デレなの? デレ期なの? もちろん私のストライクゾーンはもうちょい下で――」
「……あー、はい。それでいいすわ。たぶん俺、先生のこと尊敬し始めてる……かも……」
「ちょ、ちょっとやめてよ。そんなに素直すぎるとこっちが照れるじゃない……!!」
行くのはいいけど来られるのが苦手なモルガンが、ぼっと赤面する。らしくないやり取りに、俺も戸惑う。何と言っていいのか説明がつかない。こんな気持ちは生まれて初めてだ。
ごほん、ルルの咳払いを潮に、無理やり気を取り直した俺は改めてモルガンと向き合う。
「え、えーと、さっきの目玉お化けのノックアウトボーナスはなんだったの?」
ほれほれ、隠さずきりきり出しなさい、とモルガン。
「はい蹴らない蹴らない。あんたじゃあるまいし、こそこそ隠したりしませんよ。あんなに強力な指輪があるの黙ってたくせに……」
ぶつぶつ。
「ほら、これですよ」
取り出したのは3つ。黒地に金の刺繍の入った外套と、キティハーサの古地図と、拳半個大の琥珀の塊。
外套は、その名も『名を騙る者の外套』。説明によると、変身アイテムらしい。剣や指輪と同じ『名を~』シリーズなのだとすると、かなりぶっ壊れた性能のはず。試してみるのが今から楽しみだ。
んで古地図のほうは、
「……なにこれ、虫食いだらけじゃない」
何百年も前のものなので、最初からすべてのプレイヤーに配布されている全体図と見比べると、地名や河川などの位置が微妙に異なる。骨董品で、完品なら希少価値があったのかもしれないが、虫食いの穴があちこちに空いてるので、価値はあまりなさそうだ。
「こっちは琥珀か……中身は蝶の身が半分……。リアルじゃそれなりだろうけど、こっちじゃどうかしらね……」
モルガンは、飴色の塊をためつすがめつしている。
「琥珀……木の樹脂が化石化した宝石の一種だな。中に生物が閉じ込められていると、途端に値が跳ね上がるものだが……」
ホームポイントから戻ってきたアールが、横合いから口を挟む。身を抱き締め、震えるようにしているのは、蚊の群れに血を吸い殺されるという地獄を見たからだろうか。
「……悪いなアール。ババを引かせて」
「気にするな。高貴なる者の務めだ。この礼はあとできっちり返してもらうさ」
ふん、いつもの調子で尊大に振る舞うと、アールは続ける。
「この場合、宝石としてよりは象徴的な意味が強そうな気がするな。蝶が半分になっているから、何かの割り符に使うとか。なになに、アイテム説明によると、『半分に分かたれた琥珀の塊。宝石としての価値はない』か……。アイテム名が『孤独の琥珀』……琥珀……あ」
モルガンの口元からギシリと音が聞こえる。
「孤独の琥珀とは、舐めた名前つけてくれるじゃない……」
もちろんシステム的に設定された名前なんだろうけど、なんとも皮肉な名付けだ。
~~~~~
「――さ、行くわよあんたたち」
街道の先を見据えるモルガンの目に、もはや迷いはない。
「私たち『カロックの自警団』は、アンバー奪還のために全力を尽くすわ」
ふくちゃんが満足げにうなずき、バドは当然だと言わんばかりに偉そうに腕を組む。
「あんたたちは邪魔にならないように、かつ最大限プラスになるように、馬車馬のように働きなさい」
「なんて言いぐさだよ……」
「いつの間にかあっちに主導権があるんですねえ……」
ルルとふたり、逆転現象に戸惑う。ゲームの真相に迫るという意味では、当然ありなルートなんだけど……。
「文句あんの?」
モルガンがグリッと顔だけをこちらに向ける。その動き恐いからやめなさい。
「ないでーす」
「ならよろしい」
モルガンは偉そうに腕組みしてふんぞり返る。バドの動きに似てるな。いや逆なのか。
目指すは王都イリヤーズ。妖精王の住まう場所。すべての物語の始まりの場所。
「……っ」
ぶるりっ。
手が震える。背筋を寒気が走る。
ぞくぞくとしたものが、体中を駆け巡る。
興奮? 恐怖? この感情はなんだ?
たかが王都へ行くだけなのに? あんなとこ、いままで何度だって訪れたことがあるのに?
……いや、違うな。もう完全に違う場所と考えたほうがいいだろう。
ここ数ヵ月で、俺たちは初めての光景をいくつも見てきた。初めての相手と出会い、初めての敵と戦ってきた。
レイミア、マダム・ラリー、エジムンドさん。ラクシル、カイ。バド、レフ、アンバー、ワイナール……千眼。
自我持つ彼らが語る真実とはなんなのか。本当の敵は誰なのか。それは未だ判然としない。
王都には真実の一端がある。今まで以上の衝撃が待ち受けている。具体的にどんなものなのかは想像もつかないけど、でもそれは、きっと俺の世界を変える――。
「……あるじ様」
すぐ耳元で、ルルが囁く。
「大丈夫ですよ。ルルも一緒ですから。何があっても、ふたり一緒なら大丈夫ですって」
俺の心中を察したような、優しい声音が耳朶を打つ。じぃんと胸が震えるのを隠して、俺は快活に笑った。
「当たり前だ。ふたり揃えば無敵だ。何にだって勝てる。どこへだって行ける。なあ、ルル――」
行くぞ、拳を突き上げると、ルルも真似をした。ふたり笑って、前を向く。
考えたって仕方ない。やることは常にシンプルだ。大好きな世界と、大好きな妖精と、大好きな仲間たちとともに、行けるところまで行くだけだ――。




