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平郎戦記

作者: くめきち

 世は戦乱,妖怪たちが世界を滅ぼそうと飛び跳ねている中,一人の超戦士がいた。


 その名も増田ますだ 地井歩ちいふという。たまに平郎へいろうと呼ばれたり呼ばれなかったりするらしいが,地井歩はあまり気にしていない。


 地井歩は捕らわれた味方の司令官を救うため,大阪城へその歩を進めていた。


 しかし今のところは,森林の奥地で休憩している。言い換えると遭難である。


 「もう!丑三つ時には味方と合流するはずだったのに」相棒であり妖精の那多なた 流子るこがぷりぷりして言う。


 地井歩は何の反応も示さないし,一言も発しない。寡黙は金だというポリシーが彼の脳内に渦巻いているのでこれは仕方がない。基本的に彼は無口で,喋る時といえば上官がいるときと断末魔を上げるときである。


 地井歩は自分が遭難しているとわかるとなにはともあれその場に座った。流子はひと通り文句を言うと,上空へ飛んだ。


 流子が用心して枝葉の壁を抜けると,周りには月に照らされた緑の海が広がっていた。どうやら,ここは森の中心らしい。妖怪に気づかれる危険はあるが,もっと上に飛ばなければ。流子がそう思った時,頭の中に地井歩の声が送られてきた。ちなみに流子の力によって地井歩は思念を送ることが可能だ。


 「敵だ」


 流子は急いで戻った。地井歩は大木の近くであたりを警戒していた。


 トコトコ,トコトコ,という足音が連続でいくつも響いてくる。だが姿は一向に見えない。


 流子は地井歩に魔法を使っている。動いている敵の位置が赤い点で表示される探知魔法だ。流子はこれをレエダアと言っている。


 これで,敵の位置が手に取るようにわかる。刀を抜くと,近い敵から順に切りかる。雑魚妖怪たちは次々に倒れ,水色の血を垂れ流す。ようやっと地井歩に気付いた雑魚妖怪たちは甲高い悲鳴をあげて逃げ去っていった。無理に追う必要もないだろう。


 さて行くかと刀を収めようとしてふと見ると,一匹が立って睨みつけていた。


 先に切り倒した雑魚妖怪どもと同じ妖怪だ。小さくてずんぐりむっくりの妖怪。生意気にも仁王立ちして,かかって来いと言わんばかりの・・・いや,よく見ると,今にも泣き出しそうな顔で短刀を持っている。


 立ち向かうならば全力で叩き潰す,と地井歩は助走をつけ飛び上がった。その飛距離はゆうに3メートルを超え,一気に距離が縮まり,妖怪の目前へ迫る。


 だが,着地した刹那,地面が落ちた。


 「ぐおおおお!」地井歩はわけもわからず落下し,断末魔を叫んだ。


 落とし穴であった。地井歩が見上げると,草木がそよぐ丸い天井にひょこんと妖怪が顔を出し,邪気あふれる笑顔をしてみせ,高らかにバカ笑いをした。


 「ギャハハハハハハハ!」


果たして,地井歩の運命やいかに。

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