もしポキVol2
いくつか来てたんで、また即興で作りました。
あの後魁人たちは、普通に学校へと向かった。
佐奈が迎えに来てくれたこともあって、時間的にはかなり余裕があった。
「はずなんだけどな~」
「……急がないと遅れるよ」
「誰のせいだと思ってるんだ誰の」
魁人たちは現在学校へ向かって青春ダッシュの真っ最中。いや、本当は結構余裕あったんだが、この恋人のせいでその余裕はあっという間になくなってしまったのだ。
「だいたい、なんでポッキーを食べるのに一時間も有するんだよ!」
「愚問、大事に食べないとポッキーの神様に怒られる」
「珍しく即答!?」
しかもポッキーの神様って……製作者のことか?
「……それに」
「まだあるの!?」
「……魁人からもらったものだから、味わって食べたかった」
「……」
「……顔真っ赤」
「ち、違う! これはただ走って顔が赤いだけだ!」
断じて嬉しいとか、可愛いとか思ってないぞ!? 断じて
「……そういうことにしといてあげる」
「っく!」
なぜだろう、すごく負けた気分だ、というか付き合い始めてから主導権が常に佐奈の方にある気がする。
魁人は少し前を走る佐奈を見る。相変わらずの無表情だが、なぜか魁人には少し笑っているように見えた。
くそ! 次は沖縄限定のポッキーを入手してやる、覚えてろ!
なぜか心の中で佐奈に叫びながら魁人たちは誰もいない通学路を駆け抜けるのだった。
「……楽しみにしてる」
「エスパー!?」
「し、死ぬ」
「……大丈夫?」
魁人が息絶え絶えに机に突っ伏し、平然としている佐奈が背中をさすっていた。
なんとか間に合った魁人たちは現在教室、到着したのはぎりぎりだが、実際にホームルームが始まるまでにはまだ少し時間がある。
なんたって担任が時間にルーズだから、この前は寝坊して下パジャマだったし、
まぁそんなわけだから、先生がくるまでは休憩時間として使わせてもらっているわけだ。
と、そんな二人に近づいてくる一人の男子の姿があった。
「よぉ魁人、カップル初日にしてはずいぶん慌ただしい登校だな」
「真理か……」
近づいてくるなり、隣の席の机に座る失礼なこの男は前田 真理、俺の……親友、だと思う。
基本的なスペックはかなり高い、顔も良い、いわば絶滅危惧種のイケメンという奴だ。自分から行かなくても女がよって来るという男子の敵。
でもいいんだ、俺にはもう佐奈がいるから、
惚気んな? すんません
「黒峰さんもおはよ」
「……ん」
相変わらず佐奈は魁人以外の人にはそっけない返事しかしない。真理はそのことを知っているので特に突っ込んだりすることはしない。
「それにしてもずいぶん急いできたみたいだな」
「まぁな」
「というかお前はこんなにへばってんのに黒峰さんはぴんぴんしてるな」
「お前人が気にしてることをさらっと言うな、泣くぞ?」
「悪い悪い」
「ったく」
でも真理の言うとおり、佐奈は俺と違って汗一つ流していない。実は佐奈はボーッとしてる割に、学年でトップクラスの身体能力の持ち主だったりするのだ。なぜか
「それで、なんで遅れたんだよ」
「まぁな、朝ちょっとトラブルがあってな」
「トラブル? まさかお前……」
「まぁお前が何を言いたいことはわかるけど、そんなんじゃないから」
こいつのことなので、絶対そういう返答が来ると予想していたので、先に潰しておく。真理は少し残念そうに肩を落とした。
「じゃあなんでギリギリなんだよ」
「う~~ん、説明すんのめんどいからパス」
「なんだそれ、まぁなんでもいいけど」
真理はちらっと佐奈を見る。佐奈は懐に仕込んでいたポッキー開け始めていて、少し退屈そうにしていた。
それを確認してから真理が耳打ちしてくる。
「で、もうキスくらいはしたのか?」
「バッ!」
と大声を出しそうになり、あわてて口を押さえ佐奈の方を確認する。
もしゃもしゃ
よかった、ポッキーの捕食に夢中になってくれてるみたいだ。
「そんな一日で済ますわけないだろ!?」
魁人が小声で呟く。
「え? そうなのか?」
「そうだよ、だいたいお前、佐奈がそんなホイホイキスさせてくれると思うか?」
見ろあの無表情、キスを迫ったら「何してんの?」みたいな目で返されるに違いない。
「そうか? 案外普通にキスしてくれると思うけどな~」
「そりゃお前の勘違い」
「う~ん、じゃあ俺が聞いてやろうか?」
「や・め・ろ!」
それじゃあまるで俺がキスしたいよhrhr、みたいな奴に思われるかもしれないじゃないか! 別にキスがしたくないわけじゃないんだけど、
「いいんだよ、そういうのはまだ」
「まぁお前がそういうならそれでいいんだけどさ」
「そうそう、まずは手を繋ぐところからだろ」
そんな俺のセリフに驚いたように目を丸くした。
「は? 手って、お前まだ繋いでないの?」
「あ、ああ」
「昨日の帰りは?」
「いや」
昨日は帰りに告白してそのまま帰ったから、手なんて繋いでない。
「今日の朝」
「ノー」
「小学生かお前は……」
真理が蔑むような眼でこちらをみてくる。
「なっ! し、仕方ないだろ!」
本当は俺だって今日、本当は朝手を繋ぐ、あわよくば腕を組むなんてことを期待していたのに、思わぬ時間消費のせいでそんな暇なかったんだから!
いいさ、帰りこそ手を繋いで、
「お~い、席につけ~」
と、ちょうどその時、寝むそうな声と共にがらがらっと教室のドアが開かれた。
「おっと、先生の登場か、じゃあまた後でな魁人」
「おう」
軽いやりとりをかわし真理は自分の席である教卓の前へと移動する。佐奈はもともと隣の席なので、すでに着席ずみだ。相変わらずポッキーを食べてるけど、
「う~し、今日のホームルームを始めるぞ~、欠席の奴手ぇあげろ~」
そんなやつ普通にいるわけないだろと、このクラスになってから何回思ったかわからない、今となっては毎朝の恒例行事なので、誰もつっこんだりはしない。
ちなみに教師は女。いつもゲームを遅くまでやっていて寝不足らしい。
「よし、いないな。じゃあ何か報告のあるやついるか~?」
こんな感じでいつもはあっさりホームルームは終了するのだが……
「はい!」
今日はそれだけではないようだった。
やけに元気に手を挙げるバカが前に一人。
「あ? 前田? なんかあるのか、つまんないことだったら殴るぞ」
「それは教師生活を維持させるためにも辞めたほうがいいと強く推薦します。それに安心してください、面白いことですよ」
嫌な予感が、まさかあいつ……
「実は! 昨日から、瀬川魁人と黒峰佐奈のお二人が! 付き合うことになりました!!」
やっぱり!
……
……
………
「「「「うおぉぉぉぉぉ!!」」」」
しばしの沈黙後、割れるような声がクラスからわきあがった。
「まじかよ! 俺さりげなく黒峰さんいいなって思ってたのに!」
「俺も!」「俺も!」
「くっそ! 瀬川爆発しろ!」
「俺は瀬川を……」
男子諸君
「黒峰さんおめでとう~!」
「よかったね~」
「今度可愛い服売ってる店紹介してあげるね~」
「ねぇねぇ瀬川くんのどこが好きになったの?」
女子諸君
「お前ら男子女子で反応違いすぎだろ!! というか最後の言った奴は俺に近づくんじゃねぇ!」
「うるせぇ! お前は今日から俺らの敵だ!!」
「そうだ! このリア充が!」
「ホモォ!!」
「だから一人危ないのいるって!!!」
こいつらぁぁあ!!
一方女子では
「それで、黒峰さんは瀬川くんのどこが好きになったの?」
「……言えない」
「え~? 秘密ってこと~? いいじゃん教えてくれても」
「……そういう意味じゃない」
「? じゃあどういう意味?」
「…………ありすぎて言えない」
佐奈はそれだけ言って顔を少し赤く染めた。
……
………
…………
「「「何この子可愛い~~~!」」」
結局この後魁人達は、一時限目の授業すべてを使ってからかわれたのだった。
くそっ! 覚えてろよ真理!
とりあえずかかった時間45分、やっぱ早いな~
続きは未定。感想でこれを別作品にして出しては? という感想がありましたが、どうするは未定、自分的には需要ない気がするんだけど……まぁこれもそれなりに人がいればやります。
少しでも読みたい人がいれば、ポンっと書いて投稿しときます。
それから最近作者はエクバにはまってます! よかったら誰か対戦しようぜ!