第4話
見直し、手直しなしでの投稿ですので、帰ったら色々改変するかもしれませんがよろしくお願いします
敵? ソフィアが?
隼人兄さん達の言葉を聞き、魁人は視線をソフィアに戻す。するとさっきまで気付かなかったが、背中に羽が二枚、折りたたまれるように隠れていた。
背中の羽は吸血鬼の証。
三大皇位の一種である吸血鬼、魔物の中でも人と同じ、あるいはそれ以上の知識があり、力、スピード、固さ、どれをとっても平均的に最上位の力を持つ。
更に吸血鬼特有の異能、“ブラッド”では、血を通じて様々な事をすることができる異能の力、代表的なのは血を吸った相手に魔力を注ぎ、半永久的に下僕にすること、他にも血を使えば武器も生成することができる。
そして再生の能力も極めて高く、致命傷を与えたとしても数時間で回復してしまうほど治癒力を持つ。
他にも能力はあるだろうが、吸血鬼自体が珍しすぎて、その力は未知数とされているのだ。
更にソフィアは真祖吸血鬼らしい、実際魁人には真祖がどれほどすごいかなどは知らないが、三大皇位の中の一種、更にはそのトップともなれば、ソフィアがいかに危険な存在かがわかる。
「各自、己の魔獣を召喚しておけ、いつ暴れ出すかわからんぞ」
「「「了解」」」
世界のみんなのために、これからのためにも、ソフィアは今ここで捕まえておかないといけないっていうのもわかる。
「これから応援を呼ぶ、隼人と鈴鹿はあいつを保護する準備をしておけ」
「わかりました!」
ソフィアはすっかり体を震わせ、目にはうっすら涙が浮かんでいる。差し伸べられた手も、下にさがっていた。
「魁人早くこっちにこい!」
「魁人お兄ちゃん! 早く!」
「くっ! まさかもう化け物に血を吸われか!?」
そうさ、こいつは化け物だ、さっさと割りきっておいておけばいい、何を迷う必要がある? そうすれば全て終わるんだ。
そして魁人は――
「走れ!!」
「!?」
「なっ!」
ソフィアの手を取って走りだした。
割り切れるわけあるか!
隼人兄さん達の驚く声が聞こえる。そして続くように「早く捕まえろ!」という指示も聞こえてきた。
隼人兄さんの魔獣はヘルコンドルの鳥種、鈴鹿はフレイリザードの準竜種、どちらも能力値は平均以上、普通に考えて逃げることなんてできない、でも!
隼人は持っていた学校の鞄の中から黒くて丸い、野球ボールほとの玉を取り出し、そのままへ後ろに放り投げた。
「あれは!」
隼人兄さんがその正体に気付いたようだが、もう遅い。投げられた玉はすぐに地面へとぶつかり、眩い光を解き放つ。
「ぐ!」
「フラッシュバンだと!?」
魔力の無い俺が魔物出会った時に使うように言われてもたされてたフラッシュバンがこんなところでやくに立つとはな……とにかく今はいけるところまでいくしかない。
後ろからはたくさんの言葉が聞こえてくる。
きっと「戻れ!」とか「厳罰ものだぞ!」とか言ってるんだろうな~、まぁ確かにやってることは馬鹿なことだけど、もうやっちまったもんは仕方ねぇ。
今はとにかく走って走って走りぬくだけだ。
「はぁはぁ、っはぁ」
ここまでっ、くれば、少しは平気っ、だろ。
隼人兄さん達から逃げだした魁人達は、二十分程走りまわったあげく、あまり使われていない駐車場に身を置いた。
疲れた体を投げ出すように塀にもたれかかる。
「……だいじょうぶ?」
「はぁ、ああ」
魁人は息絶え絶えで答えるが、ソフィアは息切れ一つ起こさずに魁人の隣に座った。
こんだけ走っても汗一つかかないか、見た目は子供でもやっぱ吸血鬼なんだな。
「……やっぱり、もどったほうがいいよ、かいと」
「どうしたよ、突然」
「だって、ソフィアといるとカイトもひとりぼっちになっちゃうよ?」
ソフィアはできるだけ笑顔でそう言った。無理してるのが見てわかる。
「ソフィア……」
「それにソフィアはへいきだよ? ソフィアつよいこだもん」
だったら言いながら悲しい顔で言うのはやめてくれよ……
ソフィアの言葉に心が締め付けられながら、魁人はポンっと魁人の頭に手を乗せ、
「なーに言ってんだよ。ソフィアは俺の友達だろ。友達は友達を見捨てたりしないよ」
「……ともだち?」
「ああ、だから誰が何と言おうと、俺はソフィアの傍にいる」
「あ……」
「だからもう、ひとりぼっちなんかじゃないぞ」
笑顔で言った。
恐らくこれが、彼女が一番求めていたもの。
こちらを見つめる彼女は表情は、驚いた様子で固まったまま、やがて両目から涙が零れおちていった
涙が表情を崩すように。我慢が解けた子供のように、ソフィアは魁人に抱きついて来た。
「うわああぁん!!」
「おおっと、よしよし、よく頑張ったなソフィア、偉いぞ」
ポンポンと背中を叩いてやると、今まで溜まっていた毒を吐きだすように、ソフィアは涙声で喋り始めた。
「ソフィアはっ、ソフィアはただっ、ひとりがいやなだけなのに、どうしてみんなソフィアをとじこめるの?」
「ああ」
「ソフィアはっ! もう、ひとりぼっちはいやだ……いやだよぉ……」
「大丈夫、ソフィア、俺がお前を一人にはしない、絶対に」
昔の自分を重ねるようにソフィアに言い聞かせ、魁人は子供をあやすよう、胸の中で泣くソフィアを撫でるのだった。
………
……
…
どれくらい経っただろうか、おそらく十分やそこらの時間が経過しただろう。ソフィアはすっかり泣きやんでいたが、今だソフィアは魁人に抱きついたままだった。
俺も俺で、別にただソフィアに泣きつかれてたわけじゃない。その間に調べ物は済ませておいた。
魁人は操作していたスマートフォンの操作をやめ、電源を落とした。隼人兄さんや鈴鹿からメールが随時送られてきていたが、内容は把握しているので全てスル―。
それよりも魁人が調べていたものだ。
一つは真祖についての情報、吸血鬼の主な特徴は把握していたため、何が違うのかを簡単に調べあげたのだ。幸い伝説級に話は出回っていたので、すぐに内容はつかめた。
1つ目は、真祖である吸血鬼は、他の吸血鬼とは比較にならないほどの吸血衝動があるということ。
しかも一度に血を吸う量が尋常ではないため、普通の人間から血を吸うとすぐにミイラ化するらしい。
だが真祖の餌の中で、十三人だけ、血を吸われても死なない人間がいた。いや、正確に言うと、血を全部吸われる前に真祖の腹を満たす者達が居た。という方が正しい。
のちに分かったことだが、吸血鬼が吸血の際に摂取しているのは、主に人の血に含まれるA、B酵素というものらしい。
だがこのA,B酵素は、常にH酵素というものにくっついて血液に流れており、吸血鬼にとって、このH酵素というのはA,B型の摂取を行う際にかなりの邪魔となるらしいのだ。
もう察したと思うが、その十三人は、そのH酵素、というものが極端に少ない珍しい血液をしていたため、真祖に吸収される血が極端に減ったというわけだ。ただ記録によると、この十三人は真祖に下僕にさせられ、ずっと餌として使われていたそうだ。
なんていうか……可哀そうな連中だな……
次に2つ目の調べ物は、血固めの封印について。
こちらも調べてすぐに出てきた。血固めの封印は、真祖吸血鬼の封印に用いられた方法、様々な工程が必要な技術のようだが、簡単に言えば、大量の血を魔力で一つの鎖にし、真祖の体を縛りつけるというものらしい。
ただ、さっきは百を超えるとか言ってしまったが、実際は違った。
本当の数は246名、その全員の血を使って行われた封印術、当時近くにあった二つの村の村人全員を犠牲にして行われた無情な封印……
魁人はちらりと胸の中にいるソフィアを見る。
こんな子が……世界を壊す程の力をもっているなんて……
正直今でも信じられないが、現実は受け止めなければならない。とにかく、今調べたいことは全て知ることができた。
さて、そろそろ時間か。
魁人は抱きついているソフィアをそっと離す。
「ソフィア、悪いんだけど、俺と一つ約束してくれないか?」
「やくそく?」
少し涙が残っているソフィアの目から涙を拭いて、魁人は頷く。
「そう、約束、もう人を襲わないって、約束してくれないか?」
「おそわない?」
「そう」
「やくそくしてくれたら、かいと、ずっといっしょ?」
「ああ、ずーっと一緒だ」
「じゃあソフィア、やくそくする!」
迷う素振りもみせずに、ソフィアは喜んで頷いた。正直わかってんのかなぁと思ったけど、大丈夫だな、と勝手に納得しておく。
「そんじゃあ約束な」
「うん!」
ソフィアにつられ、魁人も笑顔を作りながらソフィアの頭に手を置いた。
あつっ!!
瞬間、触れた手が燃えるかと思う程の熱を感じ、慌てて手をひっこめた。
「? どうしたの?」
「ああ、いや何でもない」
手を見ても特にやけどはしてないし、きっと気のせいだったんだろう。
っとそうだ、まだ重要なことを言ってなかった。
「ソフィア」
「な~に?」
「もし万が一捕まりそうになったら、お願いがあるんだけどいいか?」
「おねがい?」
「ああ、それは――」
と口にしようとしたところで、一瞬迷いが生じた。
本当にこれでいいのか? と自分の中に問いただす。だがこれは既に決心していること、魁人は意を決して口を開いた。
「俺の血を吸ってくれ」
なにか変なところがあったら指摘お願いします。いつも感想、アドバイスくれる方たちに感謝~m
次回で過去話は終了です、ついにソフィアちゃんが……




