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君の隣に  作者: ミサ
第1章
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その5

朝倉の回想。中学時代の話です。

 俺は小さい頃太っていた。

 母親が専業主婦で趣味が料理だったものだから、普通の子よりも食事量が圧倒的に多かったと思う。

 美味しそうに食う俺を見るのが嬉しくて、母親もいろんなものを作っていたらしい。

 俺も太っていることを気にすることもなく、小学校生活を送っていた。




 そして中学校----

 俺が通っていた中学校は市内では1番大きく、4つの小学校から生徒が集まってきていた。

 だから入学当時は、クラスに同じ学校の出身生徒は俺ともう1人だけという、なんとも不安な中学生活のスタートだった。



「ねぇ、どこの小学校から来たの?」

 出席簿順で席に座ると、隣の女子が話し掛けてきた。

 俺がその女子の方を見ると、彼女は人懐こい笑顔を見せた。

「あ、俺はN小から…」

「私はY小よ。あ、私『麻生五月』っていうの。よろしく」

「こちらこそ、俺は『朝倉大樹』」

 そう言うとお互い軽く会釈した。

 よく見るとこの麻生という女子生徒はかなり背が高かった。それに細い。

 俺は思わず自分を見下ろした。その頃の俺は身長145cmで体重が55㎏くらいあったはず。対照的な彼女に少し引け目みたいなものを感じた。

 しかし彼女はそんな俺の気持ち等気づくはずはなく、周りの生徒にも声を掛けて挨拶をしている。

(元気な奴だな)

 それが俺が感じた『麻生五月』の第一印象だった。



 麻生は第一印象通り、元気でいつもクラスの中心にいるような奴だった。学級委員も自分から買って出るほどで、そんな行動力のあるあいつが俺は羨ましかった。

 その頃の俺は部活に入る訳でもなく、ただ何となく日々を過ごしていた。


 そして夏休み---

 家にいても暑くて俺は宿題を片付ける為、学校の図書館に行く事にした。

 鞄にノートと筆記用具を入れて学校へ向った。

 夏休みの学校は部活動をしている生徒がいるだけだから、校内は静かで図書館も数人が宿題のレポートを書いているくらいだ。

 俺は窓際の席に着くと、宿題に取り掛かった。

 3時間位たっただろうか…窓の下で水が出る音が聞こえた。

 ……?

 何だろうと身を乗り出して見てみると、麻生が花壇に水やりをしている。

 ジーンズにTシャツというカジュアルな格好だから長身で細身の身体が際立っている。制服姿しか見たことがないから何かいつもと雰囲気が違う。

(あいつ、毎日水やりに来てるのか?)

 俺は楽しそうに水やりをしている麻生を見下ろしていた。

 視線に気づいたのか、麻生が窓の方へ顔を向ける。

 見上げた先に俺がいる事に驚いたのか、目を大きくみひらいていたがいつもの笑顔を向けた。

「朝倉君!図書館に来てたんだ。宿題?」

 俺は無言で頷いた。

「麻生はわざわざ花壇に水やりに来てるのか?」

「うん、毎日来てるよ」

 当たり前のように麻生は言う。

「何で?」

 疑問をそのまま口にした。

「だって水やらなきゃ、枯れちゃうじゃない。可哀想でしょ?」

 そう言うと水やりを再開するため、花壇の方へ向き直った。

 俺は持って来た筆記用具を鞄に入れると、図書館を出て花壇の方へ向かった。

 水やりを終えたらしく、ホースや如雨露を片付けていた麻生は俺に気づくと手を止めた。

「宿題、終ったの?」

 俺は頷くと、彼女の横で立ち止まった。

「先生に頼まれたのか?水やり」

「違うよ」

「何でわざわざ…面倒くさくない?」

 再び片付け始めた麻生に、俺は手伝うでもなく問いかけた。

「うーん、面倒くさくないと言えば嘘になるけど、もし私が来なかったから枯れていたってなったら嫌だし、それにこんなにきれいに咲いてるの見たら嬉しくない?」

 彼女が指さした花壇には色とりどりの花が咲いていた。

「私、これ片付けてくるわ…じゃあね!」

 俺が黙ったままなので、麻生はホースと如雨露を手に取ると校舎の中へと姿を消した。


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