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作者: 木野瀬水道

 蛾


 青いはねを持つソレは空をヒラヒラと飛んでいた、その青い翅に見とれていた私はシャッターを切るのを忘れていた。

 そう私は駆け出しのカメラマン、つい最近までスタジオで先輩について小僧をしていた。

 グラビアアイドルのスナップ写真ばかり撮っていた、撮っていたのは先輩で私というと荷物かレフ板かを持ち歩く日々が続いていた、そんなところに嫌気が差して、そこを飛び出し、風景写真家になろうとカメラ一つでこの山に来た夕暮れ時。

 それに出会った、そのうす青い翅の綺麗な蝶に、初めて出会うその蝶の美しさにしばらく見とれていた。

 蝶が私の手の届きそうなところまで降りてきた、その時私は我に返った。

 美しいその肢体からだをカメラに収めようと鞄の中を探った。

 鞄とカメラが擦れて音がした、その音に蝶は気付き私の前から遠ざかろうとする、私は夢中で追いかけた、山の木々が邪魔をして思う様に前に進まない、それでもあちこち身体をぶつけながら前に進んだ。


 結局、追いつけなかった、追いかける最中私は何枚かシャッターを切っていた。

 それから、青い翅の蝶に一度も会うことなく下山した。

 

 後日、フィルムを現像して写真を確認した。

 全てピンボケだった。薄青い蝶とは言えない何かが写っているだけだ、

 私はそのピンボケ写真と記憶を頼りに昆虫図鑑を開いた、が蝶の欄にはそれは無かった。

 まさか、とは思いながら、蝶と同じ仲間の蛾の欄を読んでいった。

 何ページかめくるとその蝶は載っていた。

 そう、蝶だと思い込んでいたのは実は蛾だったのだ。


 図鑑によると、オオミズアオ《大水青》と言うヤママユユガの仲間らしい。

 私はもう一度山に行き今度こそカメラにその青い翅を収めようと思うのだった。




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