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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

違和感

作者:
掲載日:2026/03/06

「クソみたいな人生だったな。」そう言ってあいつは崖からおちていった。おれは止めることができずただ泣き叫ぶだけだった。

「なー渚。」オレンジ色の眩い夕陽が差し込む教室。放課後一人で俺は黒板を掃除していた。幼馴染の新庄健がいわゆるアリーナ席の椅子に寄りかかりながらおれにはなしかけてきた。健は幼稚園からずっといっしょの、唯一無二の友達だ。腐れ縁ともいうかもしれない。「ん?どうした?」と適当に返事すると「どうしたじゃねーよ」と苦笑いしながら健が反応してきた。「どうしておまえは一人で黒板掃除をしてんだ?」立ち上がって掃除を手伝うなりそう言ってきた。すぐ返事をしようとしたが思ったように言葉が出なかった。なぜ出なかったは少し考えるとすぐわかった。「おれにもわからない亅無意識のうちにおれは口走っていた。最近、違和感を感じることがある。具体的にいうと1週間前ぐらいから何故か、掃除は二人でやる規則のに凛が来ずおれ一人でやらなければならなかったこと。ペアワークの時話し合いをとなりの人がしてくれなかったこと。何人かでやってと先生に頼まれた係の仕事を誰も手伝わず俺1人がやったということ。一体なんなんだと一人で思い返していると健が「なんつった?よく聞こえなかったんだが。」こっちに顔を向けながら眉をひそめて聞いてきた。「うっせ。早く終わらして帰るぞ亅とおれは愛想笑い的なものをしてはぐらかしながら言った。たけるには心配させたくない、憶測で物事を話したくない、という気持ちがあったからだ。この会話のあとは、ふざけながら掃除をした、チョークですべりおれがこけそうになりたけるが、それを見て笑ったときもあったが順調に進んだ。短い時間の出来事だったけどおれの青春の1ページに刻まれるくらいには楽しかった。ずっとこの時間が続けばいいと思っていた。しかしその矢先に、クラスの数名が戻ってきた。その中には、掃除のペアの海堂凛の姿があった。そいつらは健だけにやっほーっといって、おれなど存在しないかのようにすぐ教室から出ようとした。胸が直接掴まれるような苦しみを感じた。痛みを紛らわすように「おい海堂なんで掃除しなかったんだ。」と海堂だけを強く呼び止めた。おれは何か理由があると勝手に期待して声をかけたが、その期待はすぐ消え去った。無視をしようと思ったのか扉から外に出ようとしたがおもうったように考えるような素振りをしてから「あー別になんでもいいでしょ」とだけいって海堂もクラスの奴らと一緒に消え去って行った。一瞬だった。呆気ないことで茫然としていた。なんでもよくない。一回だけならまだしも何回もサボっている。海堂は人柄がよく周りの人、先生からよく信頼されてる。実際人助けしてるところ何回か見ていた。そんな人なのになぜおれには冷たいんだろう、嫌われているのかなにかおれがしてしまったかとひとり思い考えているとたけるから「おーいーはやくかえろーぜー。」とおれの荷物を持って急かすように健が言うのでかんがえるのをやめ「りょーかい」といいその日は一緒に帰った。このS高校の周りは住宅地で人通りが多く一軒家が立ち並んでいる。おれと健の家は学校からさほど離れておらず歩いて10分ほどで着くことができ、向かい合った場所にある。たけると他愛もない話しをしている途中2人の家が遠くに見えてきたときふとたけるが通行人を見て「みんな生きるのが楽しそうな顔してるな。なんも辛いことなんてきっとないんだろうな。あったとしても他の人と比べたらきっとしょうもないことだよな」真剣でどこか哀しみを含んだ顔で急に真面目なことを言いだした健は賛同を求めるように言ってきた。しかし人それぞれの辛さもあるから自分が一番辛いみたいなことに賛同することができず「急にどうしたんだ。【家族のこと】で何かあったのか?」心配そうに聞くようにして返事を誤魔化すとおれの気持ちを察したのか「急に思っただけだよ。」こっちを見て哀れむような表情で健が少し笑った。きっとあの顔は何があっても忘れられない。おれの後悔と共に。そうして、おれと健は別れて家に着いた。扉を開けると玄関には靴が一足あった。それはずっと見ていると引き込まれるような不気味なスノードロップの花の絵が描いてる黒いヒールだった。「ただいまー。母さんいるの?」玄関とリビングの間にある扉を超えて聞こえるように大声を出した。しかし返事が返ってこず不審に思い靴を脱ぎ扉を開けると、母親がテレビを見てリビングのソファに座っていた。一瞬こっちを見た。だがまるで死んで欲しいぐらい嫌いな人が来たかのような鋭い目つきでだった。母親がそんな目つきで見てくると思わず、油断していたおれは気圧され、一歩下がろうとして何もないところで滑りこけた。すぐ立ちあがろうした。けど体が動かなかった。心では立とうと思っているのに、体は動かない。つまりおれは母親に恐怖の感情を抱いていた。何もしてないのに何故怖い目つきで見てきたんだ。何故声をかけてこないんだ。一体今は何を考えているんだ。様々な考えが頭の中を駆け巡った。1分もしくは10秒ぐらいしかたってかもしれない。「なにしてんの?」母親が声をかけてきた。おれは動揺していた。心配されてると思った。浅はかだった。顔を上げると母親はこちらのことを見ず、テレビを見ていた。おそらくこけたことなどわからないのだろう。けど、音がしたから一応声だけかけた。そんなことを一瞬で気付くような冷たい横顔だった。おれはすぐたちあがって返事もせず階段を駆け上り自分の部屋に入った。普段の何十倍も重く感じるバックを部屋の隅に置いた。熱い。心臓の鼓動が中で響いてる。耳鳴りがする。頭が痛い。いつの間にかベッドに倒れ込んでいた。朝焼けの光。部屋の中とは違う澄んだ空気の匂い。目が覚めた。もう朝になっていた。あの人を起こさないよう、息を殺しシャワーを浴び服を着替えた。冷蔵庫にはご飯が用意されてなかった。いつものことだ。そうして俺はがむしゃらに学校へ走った。気がつくと射場についていた。扉を開くと朝練をしてる健がいた。健が俺に気がついたようで「弓道部万年幽霊部員の渚くんじゃん。」そういって珍しそうに話しかけてきた。「おまえもな?」そう言い返すと「そーいやそうだな」笑いながら返してきた。そしてまた弓を射はじめた。弓道はとてもいい。的に向かうと全てを忘れられる。そう思いながら準備を進めた。しかし違和感に気づいた。あるはずのものがない。一番大事な矢をつける弓の弦がない。嫌な予感が頭によぎる。冷や汗がとまらない。そんなはずがないと周りを見渡す。最悪の可能性を考え、あるはずがないそこを見る。見つかった。いや【見つけてしまった】。そこは汚かった。いや真っ黒だった。まるであの人の心のようだった。その箱の中からゴミを避けて取り出す。他に無くしていたはずの道具もあった。幸いあまり汚れていなかった。だが何故ゴミ箱に入っていた?その疑問が頭の中で繰り返し問われる。わからない。最近の出来事が頭の中を駆け巡る。なんで俺ばっかりがこんなめに?俺が何かしたのか?一体何が悪かった?何を間違った?感情がぐしゃぐしゃになっていると1人夢中になっていると「大丈夫か?なんで泣いてるんだ?」心配そうな顔で健に言われた。気づかなかった。スマホで見ると人の顔と思えなかった。ぐちゃぐちゃだった。目からは涙、鼻からは鼻水が出ていた。顔を拭き、空元気で「花粉症のせいや。」感情を悟れないよう返事をした。それから何分だっただろうか。「チャイムなるぞ。」そう言われると8時30分だった。射場についてから1時間も経っていた。「だからなんだよ。うるさいから先に行け。」間違えて冷たく返事してしまった。間違えた。俺は悪くない。混乱してたせいだ。言い訳をしようとしたが「は?心配してやったのにその態度はなんだよ。いつもおまえは自分のことしか考えてないな。」そう言って健は足早に去っていった。去っていってしまった。俺を見捨てて。

「最近渚がおかしい。」そう教室のはじの席の誰もいないところで独り言をぽつりと呟いた。俺と渚は向かい合う一軒家に住んでる。だから自然に仲良くなり幼稚園の頃から、ずっと一緒にいる。だからこそわかる。【何かがおかしくなってる。】渚はむかしから変なやつではあった。少し浮いてるというか、不思議なやつだ。よく1人で考え事をして周りのことを気にしない。そのせいもあってか、周りから疎まれてもいる。あの凛でさえ最初は仲良くしようとしたが話しかけてもそっけなく返され、無視され、さらに掃除当番さえサボられ嫌うようになった。それに同調するように凛の取り巻き、取り巻きの友達、クラスの人が渚を疎ましく、きらいになっていった。実際クラスの奴らは渚の持ち物を隠したり、渚に聞こえるように悪口を言っていた。おれは渚は大丈夫だとおもった。いやかってに大丈夫であって欲しいと期待していた。渚は虐待を受けている。どちらの両親も再婚者で、渚は父の連れ子おれも父の連れ子。俺たちの違いは【父から愛されてるか、両親に愛されてないか】だけだった。おれは母から邪魔者扱いされ、たまに怒鳴られる。それだけだ。渚とは違い父親は蒸発してないし、殴られもしてないし、食事を与えれてないわけでもない。だからおれは、渚なら耐えれると思った。なんなら原因が渚にもあるからしょうがないとは思っていた。だがおれは渚と違い悪意に晒される機会が少なかった。それがいいことか悪いことかはわからない。少なともそのせいで、悪意がどれほど危険かわかっていなかった。しかも渚はあいつから日常的に虐待されている。一度渚は、歯向かったらしい。それがよくなかった。児相に行けばいいのにそれは困ると言って母親を殴って屈服させようとしたらしい。しかし失敗した。返り討ちにされ虐待がさらにひどくなった。そのせいで記憶力が弱くなった。自分の今までしたことが具体的に思い出せず、自分が被害者であるということだけしっかり覚えているという状態になった。それなのにおれは渚に強く当たってしまった。自責の念で溢れていた俺は苛立ちをおさえきれず椅子を蹴ってしまった。そのあとは、放課後に謝ろう、ちゃんと話そうと思いその日の授業を受けた。渚は授業を受けていなかった。その日の授業がおわり教室から誰もいなくなった。渚に謝りに行こうとすると視界の外から急に出てきた凛が話しかけてきた。俺のこと待っていたようだった。少し緊張しているのが手が震えてる様子から感じ取れた。「ちょっといい?」いいわけないだろと内心思いながら「急いでるんだがすぐ終わる話なのか?」高圧的にいうと凛はたじろいながら「う、うん。渚のことで言いたいことがあって。渚くんが私の悪口をノートに書いてたのを知ってる?」と小声で言った。この女は何を言っているんだ?ノートに悪口を書いてた?おまえらは悪口を言っていただろう。そう思って混乱していると凛は緊張がなくなったのか流暢に話しはじめた。「私の友達が落ちてたノートを拾って中身を見ちゃったんだよね。それには海堂凛あいつはダメだ。早く死ねばいい。人として終わってる。そんなことをたくさん書いてたんだよ。」信じられなかった。俺の知らないとこでそんなことがあったのか。頭が真っ白になった。おれは凛が嫌うからクラスのみんなが嫌ってたんだと思ってた。それは違かった。いや【当たっていたけど中身が違かった。】全ての辻褄があった。たくさん書いてたというんだからきっとクラスの人たちの分も書いてたんだろう。後悔が頭の中で渦を作った。頭の中が掻き回された。吐き気がした。なんとか吐くのを我慢し「そうか、ごめんな」そう言っておれは走って渚のいる場所へ向かった。おれには渚のいる場所がわかっていった。渚の好きな場所、いつも何か辛いことがあった時一緒に行っていた。海の潮の匂いが鼻に刺さるような場所。風のせせらぎを感じられる場所。そう家から離れてない【海にそりたつ崖】。いつも何か辛いことがあった時一緒に行っていた。海の潮の匂いが鼻に刺さるような場所。風のせせらぎを感じられる場所。そう家から約5キロ離れた【海にそりたつ崖】。崖の近くに着くと何かの違和感を感じ取った。異臭がした。さらに近づく生い茂っていた植物が減っていった。不気味だ。まるで俺のために道を開けているようだ。血生臭い匂いがしてきた。崖が見える。2人の人影が見える。おそらく1人は渚だろう。手に何か持ってる。もう1人は誰かわからない。崖の小さな岩によしかかっている。そして胸の辺りから何か溢れている。近づくとそれが何わかった。同時に異臭の正体がわかった。渚の母だ。溢れているものは心臓と血だった。汗が止まらない。吐いた。口の中から全てのものが出た。ひとが死んでるのを初めて見た。吐き気が止まらない。渚の母は目が虚だ。光がない。腕にも力が入ってない。死後からどれくらいたったのだろう。顔には血の気がなく真っ青で死後硬直が始まっているようだった。我を振り返って渚を見ると涙を流していた。だが口元は笑っていた。遅かった。すべてを間違えた。渚は口を開いた。「なー健。どこで間違えたんだろうな。俺全てを思い出したんだよ。凛に最初に強く当たったのは俺だし。こいつを殴ろうとしたのも俺。部活のやつを最初に嫌がらせしたのも俺。きっと八つ当たりしたかったんだ。でも俺は悪くない。いや悪いのか?わからない。ずっとあたまのなかがぐちゃぐちゃなんだ。もうどうでもいい。だけどやりたいことが二つあったんだ。」そういって母親であった肉の塊を蹴った。「一つはこいつをころすこと。」そういって手に持っていたナイフを捨てた。「ころすのはなんも感じなかった。ただたくさん刺した。肉を抉り出した。叫び声も、掴まれた時の痛さも、肉親を指した痛みも何も感じなかった。もうおれは壊れたんだよ。もうひとつはいまからする。みてろよ。」声を荒げて言った。おれは立ち尽くしていた。すべてが理解不能だった。何がそこまでこいつをたきつけたんだ。なにも言えなかった。渚が崖の方一歩一歩歩いていった。そして大声で。

読んでいただきありがとうございました。辛口で評価、アドバイスをいただけたらうれしいです。そして面白いと少しでも思っていただけたら幸いです

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