第4話 異世界転移直後からチートが最強すぎてテンションが暴走してしまう
──ばちん、と光が弾けた。
「うおっ!? ちょ、ちょっと待て、今の何だ!?」
視界が一瞬真っ白になり、次に戻ったとき──
カナタは思わず叫びそうになるのを必死にこらえた。
(……おいおいおい……何が起きた? てか俺、今どうなってる?)
頭が追いつかないのに、心臓だけがドクドク高鳴る。
足元には、さっきまでなかった“硬い感触”。
耳にざわめき、鼻に生活の匂いが、生々しく流れ込んでくる。
灰色の石畳。
土と木と火が混じった、どこか懐かしい空気。
人々の声、馬のいななき、車輪のきしむ音──。
(……いや、これ……まさか……いやでも……)
喉の奥が熱くなる。
「う、うわ……マジかよ……こういう……こういう空気……」
胸の内で何かが弾けた。
(神様の言ってた“来世”ってやつ……これがそうなんじゃねぇの!?
俺、今……転移したんだよな!?)
テンションの波がぐわっと押し寄せる。
混乱と興奮がごちゃ混ぜになり、胸がドキドキとうるさい。
* * *
ひとしきり興奮の渦に飲まれたあと、
カナタの呼吸はようやくゆっくりと整い始めていた。
(……すげぇ……これ、異世界に来たんだよな……?)
さっきまで爆発していた歓喜が、
今は落ち着いた実感に変わって、胸の奥にじんわりと沈んでいった。
「……うわ、ちょっと待て……あの建物、まさか!?」
視線の先には、木と石で組まれた二階建ての建物があった。
斜めに突き出た三角屋根。
壁には木の梁が走り、入口には“ジョッキの絵が描かれた看板”が吊るされている。
(いやいやいや……これ絶対、異世界の酒場だろ……
RPGで何百回も見たことあるぞ!)
胸が一気に沸騰する。
勢いのままカナタは、他の建物へも視線を走らせた。
石造りの建物。
レンガの壁。
煙突の白い煙。
馬車がゆっくり通り、木の看板が風で揺れる。
(いやこれ……ほぼ確定だろ……俺は今、異世界にいる!)
息が勝手に震えるほどの興奮。
(うおおおお! ついに……念願の……
夢にまで見た、異世界ライフ! 人生大逆転か!?)
カナタがさらに視線を巡らせると、景色だけじゃなく──
“動き”が一気に押し寄せてきた。
通りの向こうから、荷物を満載した馬車がごとんごとん揺れながら進んでくる。
御者の男が手綱を引きながら、のんびりとした声で叫んだ。
「どいたどいたー! 新鮮な野菜だよー!」
(うわ、あれが本物の……馬車…… 車輪の音が生で聞こえるって、こんな迫力あるのかよ……)
その横を、腰に小さなナイフを下げた少年が走り抜けていく。
木箱を抱えていて、店らしき建物に飛び込んでいく。
彼の後ろでは、エプロン姿の女性がバケツの水を撒き、石畳を勢いよく洗っていた。
水が陽に反射してきらりと光る。
「ほら、朝の仕込みが終わったら市場に行くよー!」
「はーい!」
(……生活してる……普通に生活してる。
ゲームやファンタジーじゃなくて、ちゃんと“この世界の人間の動き”をしている……)
さらにその隣では、露店の青年がパンを焼いていた。
香ばしい匂いが流れてきて、カナタの腹が勝手に鳴りそうになる。
細い路地には、小さな猫に似た獣がちょこちょこ歩いていき、
それを子供たちが笑いながら追いかける。
(……やば……何度もファンタジーの世界に入る妄想してたけど……)
カナタは胸の奥がジリジリと熱くなるのを感じた。
(風景だけじゃねぇ。音も匂いも、人の動きも全部……現実だ。
俺……本当に、異世界に来たんだ……)
石畳、馬車、露店、生活の匂い──
すべてが現実味ありすぎて、カナタの鼓動はもう落ち着く気配がなかった。
(……やっべぇ……これが異世界か……
でも……ここって一体どこなんだ……?)
そう考えた“その瞬間”。
──ふわぁん。
視界の正面に、青白い光の板が突然現れた。
「うおっ!? ま、マジかよこれ……」
そこには、淡く輝く文字が並んでいた。
【LOCATION DATA】
▷ 惑星名:アルデ・ファリス
▷ 大陸 :レウリア大陸
▷ 国家 :アルヴェリア王国
▷ 街 :サウス・アルデ
(……まじか……情報が自動で出てきた……
ここどこだろって考えたら、勝手に答えが出た……)
カナタは興奮で喉が震えるのを感じた。
「これ……これって……俺の能力ってことか……
やっべ……チートってこういう……」
驚きと高揚で、自然と笑みが漏れる。
ウィンドウは静かに輝いているだけなのに、
胸の奥の興奮だけは、どんどん膨れ上がっていった。
「……よし。じゃあ次は……あれだよな」
(ここまで来たら……絶対やるだろ。
異世界転生と言えば……お約束の……)
カナタは思わず少し笑ってしまった。
「……ステータスオープン」
──ふわぁん。
【STATUS】
▷ 名前 :カナタ
▷ 年齢 :20歳
▷ スキル:チート
「……うわぁ…… マジで出た……
ついに……これが俺のステータス画面……」
思わず声が漏れた。
現実でありながら、あまりに“RPG的”で、鳥肌が立つほど興奮する。
文字ひとつひとつが淡く光り、
透明な板が空気を震わせるように浮かんでいる。
「名前、カナタ……年齢20歳……
いや、ちょっと待て……俺、若返ってんのか!?」
勢いのままウィンドウに顔を近づける。
「スキルの欄、“チート”!?
ちょ、待て……これ……もしかして……
本当に俺の想像するチートって意味なのか……?」
興奮で笑いが止まらない。
(やっば……俺の人生、ここから全力でぶっ飛んでくんだろうな……
最高じゃねぇか……)
スキル欄の 「チート」 の文字を見つめたまま、
カナタは思わず眉を寄せた。
(チートって……具体的に何なんだよ……
ゲームみたいなウィンドウを出すならもう少し説明文とかあるだろ……)
そう思った瞬間、またしてもウィンドウが自動で動いた。
──ピッ。
ステータス画面の下に、新しい行が滑り込むように表示される。
【SKILL DETAIL】
▷ チート:何でもできるようになる能力
「いや説明、雑すぎだろ……」
あまりにぶん投げすぎる説明に、
カナタは思わずその場で素で突っ込んだ。
「何でもできるようになる能力って……
いや、もうちょっと細かく書けよ……
ユーザーが自分で検証しないといけない太古のゲーム方式かよ……」
しかし、文句を言いながらも胸の奥はとんでもなく熱くなる。
(……何でもできる、って……
これ、マジで……そのまんまの意味なんじゃないか……?)
喉が勝手に震えた。
「……やば。ほんとに“無制限系チート”ってやつかこれ……
うわ……これが夢じゃないってまじか……」
(そして、何でもできる……ってことは……
“俺のことを本気で好きな美女だけ”集めて、理想のハーレムとかも作れる……?
……マジで実現できる未来しか見えねぇんだけど……)
文句と興奮が同時に押し寄せて、
自分でも笑ってしまうほどテンションが上がってくる。
ステータスを見つめていたカナタは、ある項目で思わず固まった。
▷ 年齢 :20歳
▷ 身長 :178cm
「……え? 身長、178……!?」
(俺……前世じゃ170すらなかったよな……?
いや、待て……言われてみれば……)
カナタはそっと周囲を見回した。
(……確かに……視線がちょっと高いか?
人の頭を前より“少し上から”見下ろしてる……
これ……マジで俺……背が伸びてるんじゃね……?)
胸がじわっと熱くなる。
「うわ……若返りだけじゃなく、身長まで理想値……?」
思わず自分の腕を見る。
皮膚は張りがあり、筋肉のラインも前世と比べ物にならないほど綺麗だ。
(……ちょっと待て……身体全体どうなってんだよ……
顔とかも……見てみたいよな……?)
(……顔や体の全体像を確認したい。鏡みたいなの、出ろ……!!)
そう意識した瞬間──
──ふわぁん。
目の前に、青白い光が薄く広がり、
ガラスのように透き通った“鏡面ホログラム”が浮かび上がった。
通行人には見えない。
カナタにだけ、光の反射が像を結んで見えている。
「……おお……これ……完全に鏡だ……」
そこに映ったのは──
黒髪のショート、精悍な顔つき、鋭い目つき。
“理想の20歳バージョンの俺”だった。
「……うわ……マジで……イケてる……」
自分で言うのもどうかと思いながら、
興奮で笑いが止まらなかった。
(……よし。身体の確認はできた。
でも“何でもできる”って言うなら……まだまだ試したいこと、山ほどあるな……)
カナタは、浮かぶ鏡面ホログラムをそっと消しながら、胸の奥の高揚を抑えきれずに笑った。
(──チートの検証、ここからが本番だ)




