私たち、分からないんです。(2)
佐藤華:どこにでもいる平凡な女子高校生。2年1組。いつもポニーテールをしていて身長は少し低め。部活は家庭調理部。成績も運動もまあまあ。なぜか亮太のことが気になっている。少女漫画をたくさん読んでいてロマンティックな展開をいつも期待している。
鈴木亮太:どこにでもいる平凡な男子高校生。2年1組。短髪で中肉中背の体格。部活はバスケ部だが、ベンチを温めている。成績も運動もまあまあ。
高橋優香:華の小学生からの幼馴染で親友。同じクラス。成績優秀だが、運動は苦手。部活は吹奏楽部。
田中遥人:亮太の小学生からの幼馴染で親友。同じクラス。運動は学年でもトップクラスだが、勉強は苦手。部活は野球部。
立石直哉:クラスのムードメーカー。お調子者男子軍団のリーダー的存在。
渡辺先生:2年1組の担任の先生。新人でもベテランでもない男性教師。
「そういえば…言い忘れてたけど。佐藤さん、寝てるとき変じゃなかったよ。」
「変じゃ…なかった?」
「うん、なんて言うかその…。」
亮太くんがごもると、ちょうど電車が到着した。亮太くんが言った続きの言葉がかき消されてしまった。
「亮太くん、なんて言ったの…?電車の音で聞こえなくて。」
電車に乗り込んでから聞くと、亮太くんはまた「何でもない。」と言ってはぐらかした。
(ええー!言わないんかい!!!さっきのも今のもめっちゃ気になる…今日は眠れなそうだな…。)
それから亮太くんは私の目を見ないで、車窓からじっと景色を見つめているだけだった。何だか変な感じだった。
30分ほど電車に揺られてようやくホテルの最寄り駅に着いた。
腕時計を見ると、時刻は16時30分。集合時間の30分前に到着してしまった。
「少し早く着いたね。でも時間に余裕があって良かったな。」
亮太くんは心底安心したような表情をしていた。1回電車を降りる駅を間違えてしまったからきっと不安だったんだろう。亮太くんは電車の中で何度も降りる駅をスマホで検索して確認していたのだ。
(1回間違えちゃったから今度こそは間違えないようにって頑張ってるのめっちゃ可愛いんですけど!もう1回間違えてまた2人きりになるのも全然良いんだけどなぁ…って私、何考えてるんだ!)
私は亮太くんに気付かれないように彼の真剣な横顔を楽しんで電車に乗っていたのだ。ホテルは自然に囲まれたところにあって、景観が綺麗だった。
「おーい!華ーー!!亮太くーーん!!」
遠くの方から聞き覚えのある声が聞こえてきた。後ろを振り向くと、そこには1班と6班のメンバーがいた。優香が小走りでこっちに向かっている。私は久しぶりに彼女の姿を見て胸がいっぱいになった。
「優香…!優香だ!」
私も思わず走り出してしまった。私と優香は周りの目も気にせずに力強く抱き合った。
「数時間ぶりの再会なのになんでそんなに感動的になっとるんかい!」
「その再会の仕方、ドラマでしか見たことないわ!」
すっかり関西弁にハマった佐々木くんと斎藤くんが欠かさずツッコんできた。私と優香はお互いの顔を見つめてニコニコした。
「亮太、今度は降りる駅間違えなかったんだな。良かったよ。」
田中くんがまた亮太くんをいじると、亮太くんは目を細めて彼を見た。
「この時間まで2人で何やってたの?どこか行くとこあった?」
田中くんが慌てて話題を変える。私は優香と離れて亮太くんをちらっと見た。亮太くんは下を向いて頭を掻いた。
「うん、科学館に行ったんだ。色々見れて楽しかったな。」
相変わらずボソボソ話してるのに亮太くんは少し変だった。
(ええ!?もしかして…亮太くん、照れてる!?恥ずかしがってるのかな…いや待って、これってもう亮太くんとの恋が始まっちゃった感じ!?)
「あの…私も楽しかった!すごく…すごく楽しかったよ!」
あまりにも大きな声が出てしまったので、みんな目を丸くして私を見つめる。私は慌てて口を押えるが、もう時すでに遅し。みんな一斉に爆笑し始めた。
(うわあ…もう本当に私って何がしたいんだろう…!本日2回目の穴があったら入りたいだわ…。)
私が赤面していると、いつの間にか隣に亮太くんが来ていた。ハッとして亮太くんを見上げると、彼は微笑みながら私を見つめていた。
「俺も本当に楽しかったからありがとね。」
(どの星よりも眩しい亮太スマイル来た…やばいやばいやばい、不意打ちは困るって!)
私はさらに顔を赤くしながら「こちらこそです…。」と虫のような声で言った。亮太くんは不思議そうな顔をしたが、また笑顔に戻ると田中くんの方に行ってしまった。
「そろそろ他の班も来たみたいだし、ホテルに入るか!」
優香が張り切って言うと、みんな頷いて移動した。私たちは旅館のような趣のあるホテルの中に入り、自分の荷物を探して手元に置いた。
「おー、みんなちゃんと早めに行動できててえらいね。」
5分ほど経ってようやく渡辺先生がホテルのロビーに入ってきた。先生はお土産をいっぱい買ったのか、紙袋を3袋ほど持って登場した。
「泊まる部屋決めは先生がすでにしてるので、このプリントを見といてください。学級委員、これ回してほしい。」
先生は2枚のプリントを私に渡した。立石くんがまだいなかったから、私は1枚を田中くんに渡して男子に回し見してもらうことにした。
私は優香と頭をくっつけてプリントを眺めた。
「私と優香、一緒だね!」
「ほんとだ!あと同じ部屋のメンバーは…え!?」
優香が驚いて残り2人の名前を指差す。
「なんで?なんで田中くんと亮太くんなの?」
私も何度も目をこすって確認してみたが、やっぱり私たちと同じ部屋には田中くんと亮太君の名前があった。田中くんと亮太くんも唖然とした表情をしてプリントを眺めているのが見えた。
「たぶん…何かの間違いだよ。先生に聞いてくる!」
私はホテルのフロントに立っている渡辺先生の元に走った。先生は「どうしましたか?」笑顔で首を傾げる。
「あの、私と優香の部屋に男子2人が入っちゃってたんですけど…印刷ミスですか?」
「いいえ。」
あまりに即答したので私はキョトンとして先生を見つめた。先生は表情一つ変えずに話を続ける。
「この4人なら同じ部屋でもちゃんと考えて行動できるだろうと信頼しているのでこのような形にしてます。衝立とか区切るものは用意するので安心してください。あとはね…生徒数の把握にズレがあって、予約する部屋の数を間違えちゃったので、こうするしかなかったんです。」
(信頼してるからっていうより、それって先生の単純なミスなのでは…?)
私が苦笑したまま黙っていると、先生は「そのままでよろしくお願いします。」と言い残してお手洗いに行ってしまった。
「佐藤さん、これは間違いじゃなかったの…?」
田中くんと亮太くんも優香と一緒になって私の方に来た。私が先生に言われたことを一言一句そのまま伝えると、3人は小さくため息をついた。
「自分で言うのもあれだけど、私たちがいくら世話のかからない良い子たちだからって男女混合にするっていうのはちょっとね…。」
「そうだよな…まあ…でも仕方ないからこのままでいくしかないか。仲良く過ごそうね。」
田中くんが諦めモードに入って開き直っているのが妙に面白くて私と優香は思わず吹き出した。亮太くんも笑いを我慢しているような表情で田中くんを見ている。
「おいおい、そこの4人同じ部屋ってマジで!?」
目を丸くして斎藤くんが叫んでくる。私が先生から聞いたことを話すと、彼は突然手を叩いて笑った。すると話を聞いていた佐々木くんがニヤニヤしながら囁いた。
「あの先生、何かとテキトーだよな。まあたしかにお前らのことは信頼できそうだし、いいんじゃね?あとでいろいろ感想聞かせろよ、亮太と遥人。」
「なんだよそれ。」
田中くんと亮太くんが冷めた目で彼を見たので2人はそそくさと退散した。私はまたまた亮太くんをじーっと見つめてしまう。
(私と同じ部屋になって亮太くんはどんな心境なんだろう…!?特に何も思ってない…とか?いやでも実は喜んでたりして!?いやいやいや、そんな訳ないかぁ…っていうか、そもそも好きな人と同じ部屋に1泊するって緊急事態だよ…!?心臓止まりそう、ほんとに眠れないかも…。)
その時、亮太くんが私の方を向いてしまった。バッチリ目が合って私は慌てて口を開いた。
「あ、あの…よろしくね。同じ部屋みたいだから、よろしく。」
「うん、こちらこそ。なんか一緒になること多いね。」
亮太くんがにこやかに話すので、私もつられて笑顔になる。私が小さく頷くと、亮太くんは何か言おうと口を開いた。しかし、いつの間にホテルに着いていたのか、立石くんが私と亮太くんの間に入ってきたのだ。
「佐藤さん、夜の見回りお願いしていい?学級委員がやんなきゃなんだけど、俺今日早めに寝てえんだよね。いい?」
私が勢いで「うん。」と言ってしまうと、彼はすぐさまお礼を言って男子軍団に戻っていった。
(夜の見回り…男子の部屋もやらないといけなくなったってこと!?うそでしょ…男子の部屋に入るの結構勇気いるなぁ…。)
「俺がやるよ。」
ハッとすると、亮太くんが真剣な眼差しで私を見つめていた。
「え?でも…。」
「大丈夫。男子の部屋は俺がやるから。」
亮太くんの言葉を聞いて私の身体に衝撃が走った。
(待って…亮太くんって私の心を読めるようになったんですか!?それはそれで困るけど…少しずつ恋の展開になってきてるのでは!?)
「ありがとう…!本当にありがとう、亮太くん。」
私が笑顔を作ると、亮太くんは目を反らして首に手を当てた。また亮太くんが変な感じになって、私は首を傾げて彼を眺めるしかできなかった。
つづく
部屋はびっくりですね…現実でやったらかなりの問題になりますね(笑)
次回も乞うご期待!どうぞご覧ください♬




