私たち、変わらないんです。(2)
佐藤華:どこにでもいる平凡な女子高校生。2年1組。いつもポニーテールをしていて身長は少し低め。部活は家庭調理部。成績も運動もまあまあ。なぜか亮太のことが気になっている。少女漫画をたくさん読んでいてロマンティックな展開をいつも期待している。
鈴木亮太:どこにでもいる平凡な男子高校生。2年1組。短髪で中肉中背の体格。部活はバスケ部だが、ベンチを温めている。成績も運動もまあまあ。
高橋優香:華の小学生からの幼馴染で親友。同じクラス。成績優秀だが、運動は苦手。部活は吹奏楽部。
田中遥人:亮太の小学生からの幼馴染で親友。同じクラス。運動は学年でもトップクラスだが、勉強は苦手。部活は野球部。
立石直哉:クラスのムードメーカー。お調子者男子軍団のリーダー的存在。
渡辺先生:2年1組の担任の先生。新人でもベテランでもない男性教師。
「揺れるから…掴んでても良い?」
亮太くんが小声で囁いてくれた。私は彼の胸に頭を付けたまま小さく頷くことしかできない。私はただただ胸の鼓動の高まりを身体全体で感じていた。
(どうしよう、私、もっと亮太くんのこと気になっちゃうよ…。でも、ずっと…ずっとこんな時間が続けばいいのに…なーんてね。)
電車は何度も揺れて、私はその度に亮太くんの方に倒れそうになる。私は彼の胸元をじっと見つめていた。上を向いたら彼の顔がすぐそこにあると思うと、どうしても下を向くしかできなかった。
(これはついに…恋が始まっちゃう流れなのでは!?だってこんな場面、少女漫画でしか見たことないもん!やっぱり私と亮太くん、結ばれるのかも…!)
「降りるの次の駅だから。」
亮太くんのボソッとした声が聞こえて、私はすぐに現実世界に戻った。
やっと降りる駅に到着した。私と亮太くんは2人でホームに行ったが、他のみんなの姿が見えなかった。人の多さが引いて、どんなに周りを見渡しても優香や田中くんがいないのだ。
「あれ?みんなどこ行っちゃったんだろう。もう改札出たのかな?」
だんだん心配になってきた。しかし彼は慌てる様子がなく、全く表情すら変えない。
(びっくりするくらい落ち着いてるな、亮太くん。何か心当たりでもあるのかな…?)
「うーん、分からない。」
亮太くんは小さく口を開いた。私はキョトンとして彼を見る。
「分から…ない?」
「もしかして、降りる駅を間違えたかもしれない。ごめん。」
(ええー!?うそでしょ…それなのにこんな冷静でいられるの!?)
私は一瞬フリーズしたが、慌てて笑顔を作った。
「いや、私こそ確認しないでごめん。みんなに連絡入れておくね。次の電車で行くって。」
「あ…次の電車、2時間後だ。」
「え!に…2時間!?」
亮太くんの隣に行って時刻表を見ると、大阪とは思えないほど電車の本数が少ないではないか!時計を見ると、まだ11時過ぎだった。私たちは並んでホームのベンチに腰を掛ける。
(13時半の電車まで一体どうすればいいの…。しかも、亮太くんと2人きり!?こういうのもベタな少女漫画の流れじゃん!なんかよく分からないけど、恋の流れが来てるかも!)
優香に連絡するも、なかなか既読がつかない。何個か泣いているスタンプを送ったが、それでも返事はなかった。するとその時、亮太くんのお腹が大きな音を立てて鳴った。
私は思わず吹き出してしまう。
「こんなやばい状況なのにお腹めっちゃ空いてるんだね。」
「うん…朝ごはん食べ損ねちゃったんだ。」
亮太くんは恥ずかしそうに頭を掻いた。胸の鼓動が速くなるのを感じたが、私は平然を装って微笑んだ。
「今日の高橋さん、少しいつもと違ったよね。」
突然優香の名前が出てきたので、私は驚いて亮太くんを見た。亮太くんはちらっと私を見てから首を傾げた。
「うーん…俺の気のせいかな?佐藤さんはどう思う?」
(いつもと違うって…私服だからとかそういうこと?それとも、私と田中くんを一緒にしようとしていたこと?え?それかどっちも?)
私は頭をフル回転させながら返答を考える。亮太くんは私の言葉を静かに待ってくれた。
「たぶん、修学旅行すごく楽しみにしてたから、いつもよりテンション高いんじゃないかな?優香はいつももっと落ち着いてるけど…今日は盛り上がってた気がする。」
「そういうことか、盛り上がってただけなのか。なら良かった。うん…安心した。」
亮太くんは私と目を合わせずに下を向いて何度も頷いた。私はこんな複雑な表情をした亮太くんを初めて見た。
(もしかして亮太くん…優香のことが好きなの?)
心に冷たい風が吹く感覚に陥った。亮太くんの綺麗な横顔を見つめながら、だんだんと切ない気分になってくる。
「何か食べに行く?近くに食べるところがあるみたいだけど。」
亮太くんに聞かれて私は我に返った。
「うん…そうだね。お腹空いたもんね!」
「じゃあ、歩いてみるか。」
亮太くんは立ち上がって駅の出口に向かった。私も彼の後ろを歩いて行く。亮太くんはどこに行くのかもう決めているかのような迷いのない足取りで歩いている。私は歩きながら頭の中を何とか整理しようと努力していた。
(私なんかより、成績優秀で可愛い優香の方が亮太くん好きになるよね。そんなの当たり前じゃん。こんな地味な女子高校生のこと…好きになる人なんているわけないし…。)
自然と涙が溜まって、1粒、また1粒と頬に流れてきた。私は気付かれないように慌てて手で拭ったが、ちょうどそのタイミングで亮太くんが後ろを振り向いてしまった。亮太くんは驚いた様子で私を見つめる。
「どうしたの?何かあった?大丈夫?」
私は小さく首を横に振って笑った。
「ごめん、その…急に不安になっちゃって。みんなとはぐれちゃったから…。」
すると、亮太くんは私の手を取って力強く握ってくれた。
「佐藤さん、大丈夫だよ。俺もいるじゃん。」
(え、待って。今手を繋いでる状況だよね!?やばくない!?俺もいるって佐藤さんは1人じゃないよって励ましてくれてるんだよね…。優しすぎる…本当に優しいな、亮太くん。)
私は胸の鼓動がさらに高まっていくのを感じる。亮太くんのまっすぐな目が私をじっと見つめていた。その目を見たら、なぜか涙が止まらなくて私はまた手の甲で涙を拭う。
「そうだよな、不安になるのが自然だよね。俺はお腹空いてて食べることしか考えてなかったよ、ごめんね。」
亮太くんは私の背中をポンポン叩きながら申し訳なさそうに言った。私は彼の言葉に大きくかぶりを振ったが、何も言うことができなかった。
(亮太くん…ごめんなさい。違うんだ。私が泣いてるのは違うことに対してなの。だから、亮太くんは何も悪くない。謝らなくていいんだよ。)
するとその時、私のお腹がぐー!と大きな音を立てた。亮太くんと私は顔を見合わせて思わず吹き出した。
「お腹は空いてるんだ、佐藤さんも。」
亮太くんがニコニコしてこっちを見るので、私は彼を直視できなくなった。
(もうなんでこんなに笑顔が可愛いの!?子犬みたいで頭なでなでしたくなっちゃうじゃん。なんか、恋が始まりそうなことばっかり起きててすぐに勘違いしちゃう。まだチャンスあるかな…亮太くんが私を好きになるチャンス。)
「佐藤さんって何か考え事してるの?ボーっとすること多いよね。」
亮太くんに聞かれて私はまた我に返った。
「いやいやいや!ぜっっんぜん違う!その…リフレッシュしてるの、リフレッシュ!」
「リフレッシュ…頭を空っぽにしてるってこと…?」
「そうです、その通り!」
急に敬語を使ってしまい、怪しさ100%になってしまった。すると、亮太くんは真剣な表情をして私の目を見つめた。
「やっぱり俺、佐藤さんのこと…。」
亮太くんはまだ握ったままの私の手をさらに強く握ってきて、私の体温が一気に上昇し始める。
(え、何この展開!?これってもしかして…不意打ちの告白ってやつ!?どうしよう、待って心の準備が1ミリもできてない!)
亮太くんは一瞬私から目を外してから勢いよく言った。
「佐藤さんのこと、面白い人だって思うよ。」
私は目を点にして亮太くんを見つめ返した。
「お…面白…い?」
「うん!」
亮太くんは何度も頷いて話を続けた。
「だって遥人から聞いたけど、去年と同じメンバーなのに突然自己紹介し始めたんでしょ?初めて修学旅行の班で集まった時に。」
(ええ!その話、やっぱり田中くんがしたんだ…!めっちゃ恥ずかしいんだけど!)
私は顔を真っ赤にしながら苦笑するしかない。
「あー、あははは、そうそう。なんかね…たまに変なことしちゃうって言うか。」
「たまにじゃないと思うけどね。」
亮太くんが子どもみたいにいたずらっぽく言った。
(たまにじゃないと思う?それって、どういうことなの?)
私が首を傾げたその時、バックに入れていた私のスマホが振動し始めた。
つづく
不意打ちの告白!?…って思う時、すごくドキドキしますよね(笑)
亮太くんは優香のことが好きなんでしょうかね…?次回も乞うご期待です!ぜひご覧ください♬




