私たち、変わらないんです。(1)
佐藤華:どこにでもいる平凡な女子高校生。2年1組。いつもポニーテールをしていて身長は少し低め。部活は家庭調理部。成績も運動もまあまあ。なぜか亮太のことが気になっている。少女漫画をたくさん読んでいてロマンティックな展開をいつも期待している。
鈴木亮太:どこにでもいる平凡な男子高校生。2年1組。短髪で中肉中背の体格。部活はバスケ部だが、ベンチを温めている。成績も運動もまあまあ。
高橋優香:華の小学生からの幼馴染で親友。同じクラス。成績優秀だが、運動は苦手。部活は吹奏楽部。
田中遥人:亮太の小学生からの幼馴染で親友。同じクラス。運動は学年でもトップクラスだが、勉強は苦手。部活は野球部。
立石直哉:クラスのムードメーカー。お調子者男子軍団のリーダー的存在。
渡辺先生:2年1組の担任の先生。新人でもベテランでもない男性教師。
それから1か月、亮太くんとは何も変化のないまま修学旅行当日になった。
結局優香にも訂正できるタイミングがなく、「華は田中くんが好き」という認識を持たせたままになってしまった。少し気がかりだったが、とにかく修学旅行を楽しもうと気持ちを割り切ることにした。
大阪に向かう新幹線で、私は優香と2人で席に座っていた。後ろには佐々木くんと斎藤くん、前には田中くんと亮太くんが一緒に座っている。
「今日から2日間、天気が良くて良かったね!ほしだ園地行くのにぴったりの天気だよ。」
優香のテンションがいつもより高くて声も大きくなっている。修学旅行中はみんな私服でラフな感じだからとても新鮮だ。私もワクワクしながら班の計画書を眺めた。
「美味しいものもいっぱい食べたいな!写真もいっぱい撮りたいし。」
「華、田中くんと一緒に撮ってあげるよ。」
「え!?ちょっと、優香!」
彼女はハッとしたように口を押えたが、もう時すでに遅し。前にいる田中くんが後ろを振り向いてにっこり笑ってきた。
「佐藤さん、僕と写真撮るの?」
(どうしよう、やっぱり聞こえちゃった…でも、撮りたくないとも言えないよね。いやでも亮太くんが隣にいるのに!)
「あ…その、みんなで撮りたいかな。班員みんなで。記念になるから良いかなって。」
私が冷静を装って言うと、彼は目を輝かせて何度も頷いた。
「いいね!事後発表会で使わないといけないだろうし、いっぱい撮っておかないと。」
すると田中くんは亮太くんに話を振った。
「亮太も写真撮らないの?」
「…うーん、俺はいいかな。」
彼が少し笑いながら言うと、優香が驚いたように彼を見た。
「亮太くん、写真好きじゃないの?」
「写るのはあんまり好きじゃないかな。撮るのはまあまあ好きだよ。」
(そうなんだ、写るのが好きじゃないなら、亮太くんと写真一緒に撮れないかもな…。)
私が肩を落としているのを見て、優香がまた余計なことを言う。
「じゃあ、分かった!亮太くんに田中くんと華2人の写真撮ってもらおうよ。」
「え…2人でなの?」
田中くんが目を丸くしたので、私は慌てて首を横に振った。
「違う違う!2人でじゃなくてみんなでだってば!」
「イチャイチャしちゃって、遥人と佐藤さん。もうできてたりして?」
最悪な状況になった。後ろに座っている佐々木くんと斎藤くんにまで話を聞かれていたのだ。佐々木くんの言葉に新幹線がザワザワし始めてしまった。
「それは誤解だよ、佐々木くん。嘘の噂を流すのは辞めてほしいな。」
田中くんがはっきりした声で言うと、クラスメイトは一気に静まり返った。すると1番後ろに座っていた渡辺先生がいきなり立ち上がった。みんなが先生に注目する。
(先生もきっと怒ってるんだろうな…。私が優香に嘘をついたままだからこんなことになっちゃったんだ…。)
私は泣きそうになるのを必死に堪えて先生の方を向いた。
「そろそろ降車する時間なので、トイレに行きたい人は行っておいてくださいね。忘れ物ないように荷物もまとめておいてください。以上です。」
(え…?それだけ?)
おそらくみんなこう思ったらしくて、全員がポカーンとした顔で先生を見る。先生は何もなかったかのように椅子に座った。
「遥人、ごめんな。佐藤さんも…ごめん。」
佐々木くんが意外にも素直に謝ってきたので、私と田中くんは彼を許してあげることにした。優香もそれに続いて「2人ともごめんね。」と謝ってきた。
「高橋さんは…なんでそんなに2人にしようとしたの?」
亮太くんが静かに会話に入ってきた。優香が言葉を詰まらせると、田中くんが苦笑いしながら亮太くんに言った。
「きっと僕が班長で、佐藤さんが副班長だからだよ。班のお偉いさんツーショットね!」
亮太くんは小さく首を傾げていたが、田中くんは「大丈夫だよ。」と優香に笑って前を向いた。
(優香が返答に困ったのを汲み取って話するのを止めてくれたんだ…田中くんってなんて大人なんだろう。私も優香にちゃんと伝え直さないと、私の本当の気持ちを。)
私が優香に話しかけようとしたその時、新幹線が目的地に停まってしまった。
「わー!大阪だ!」「すっげえ人!」
みんな大騒ぎしながら大阪駅で降りた。優香も田中くんも亮太くんも、さっきのことがまるで無かったかのように、まるで小学生のように盛り上がっている。私はその様子を見て少し安心した。
私たちはだだっ広い場所まで行って先生の前に整列し、すぐに班行動に移ることになった。
「6班集合するでー!レッツゴーや!」
斎藤くんが慣れない関西弁で号令をかけるやいなや、私たちはすぐに大阪府民の森ほしだ園地行きの電車に向かった。
「あ!亮太の班もいるじゃん。1班ー!やっほー!」
佐々木くんの嬉しそうな声で私は我に返った。
(そういえばそうじゃん!色々ありすぎて亮太くんの班も同じ目的地なの忘れてた!!!)
体温が一気に上がるのを感じながら、私たちの班は亮太くんに近づいていく。
「そっか、同じ目的地なの忘れてたよ。」
亮太くんがニコニコしながら頭を掻いた。
(きゃー!髪の毛少し乱れてめっちゃ可愛いんですけど…!亮太スマイル、世界一かっこいいし可愛いし爽やかで最高!ずっと見てたい…!)
「よっしゃ!1班と6班、一緒に行こうや!協力プレイ…やで?」
佐々木くんが言うと、どちらの班のメンバーも「賛成!」と挙手した。田中くんが嬉しそうに亮太くんの方に走って行って、2人で何か話し始めた。
「6班も一緒になったらもっと楽しくなりそうだね。行こう、華!」
「うん…ちょっとはしゃぎすぎだって。」
優香が私の腕を引っ張って駅のホームに走り出す。私は彼女に呆れながらも内心は大興奮していた。
(もはやもう亮太くんと同じ班みたいになっちゃってるじゃん!ついに恋の始まりの予感!チャンス、逃さないようにしないと!)
全員無事に電車に乗り込んだ。人が多くて席が埋まっていて座れなかったので私たちは立ってつり革や手すりを掴んでいた。次の駅でもたくさん人が乗ってきて満員電車のようになった。私は手すりを掴んでいたのだが、電車が揺れて手が離れてしまった。
「うわっ!」
思わず目の前にいた誰かの胸の中に飛び込んだ。優香と一緒に乗ったから彼女にぶつかってしまったのだろう。
「ごめん…。」
上を向いたその瞬間、私の身体が一気に固まってしまった。
(あ、あれ…?!なんで…なんで亮太くんがここに!?)
「大丈夫?」
亮太くんが私の腰に手を当てて私を支えてくれていた。彼の心臓の鼓動まで聞こえてきそうなほど近くに彼の胸がある。人がぎゅうぎゅう詰めで、周りには田中くんも優香も班員も見つけられなかった。
(やばい、この状況…ほんっっっとにやばい…!早く…早く何とかしないと…!)
「だ、大丈夫!ありがと…わあ!」
また電車が揺れて私はまた亮太くんの胸に頭を付けてしまった。
(中肉中背だから亮太くんのこと大きいって思ったことなかったけど…実際に触れてみるとすごく頼もしいし…めっちゃかっこいい…!)
蒸発しそうなほど顔が真っ赤になっているのを感じる。私は恥ずかしくて顔を上に上げられない。
「揺れるから…掴んでても良い?」
亮太くんが小声で囁いてくれた。私は彼の胸に頭を付けたまま小さく頷くことしかできない。私はただただ胸の鼓動の高まりを身体全体で感じていた。
(どうしよう、私、もっと亮太くんのこと気になっちゃうよ…。でも、ずっと…ずっとこんな時間が続けばいいのに…なーんてね。)
つづく
次回も乞うご期待です!ぜひご覧ください♬




