私たち、交わらないんです。(3)
佐藤華:どこにでもいる平凡な女子高校生。2年1組。いつもポニーテールをしていて身長は少し低め。部活は家庭調理部。成績も運動もまあまあ。なぜか亮太のことが気になっている。少女漫画をたくさん読んでいてロマンティックな展開をいつも期待している。
鈴木亮太:どこにでもいる平凡な男子高校生。2年1組。短髪で中肉中背の体格。部活はバスケ部だが、ベンチを温めている。成績も運動もまあまあ。
高橋優香:華の小学生からの幼馴染で親友。同じクラス。成績優秀だが、運動は苦手。部活は吹奏楽部。
田中遥人:亮太の小学生からの幼馴染で親友。同じクラス。運動は学年でもトップクラスだが、勉強は苦手。部活は野球部。
立石直哉:クラスのムードメーカー。お調子者男子軍団のリーダー的存在。
渡辺先生:2年1組の担任の先生。新人でもベテランでもない男性教師。
「やっぱり大阪行くんやったら、たこ焼きに、お好み焼きに、串カツ…。」
「なんやねんお前、全部粉もんやないかーい!」
私たち6班は放課後に時間を作って計画書を作成している最中だ。修学旅行で大阪に行くからと言って、お調子者の佐々木くんと斎藤くんが関西弁でコントを始め出し、田中くんが目に涙を浮かべながら静かに笑っている…という状況である。私は優香と笑いを何とか我慢しながら、修学旅行の話を進める。
「とりあえず何を1番見に行きたいか考えて、そこから行ける範囲内で食べる者も場所も決めていくのはどうかな?」
私が提案すると、班員がみんな目を輝かせてこちらを見た。
「すっげー!さすが学級委員、ナイスアイデア!」
「やっぱり佐藤さん頭いいわ、そうしようぜ!」
佐々木くんと斎藤くんが大げさに拍手してきたので、私は照れ臭くて反応に困った。すると田中くんがパソコンを出して何かを検索した。
「田中くん、どこか行きたいところがあるの?」
優香が尋ねると、彼は大きく頷いてパソコンの画面を見せた。
「見てほしんだけど、ここどうかな?」
私たちは彼のパソコンの画面に釘付けになる。そこには意外な場所が載っていた。
「大阪府民の森…ほしだ…園地!?」
「おい遥人、大阪まで行って森に行きたいのか?」
お調子者2人が少し不満そうにするが、田中くんは何度も頷いて話を続けた。
「だって星のブランコって名前の吊り橋を渡れるし、展望デッキから綺麗な景色が眺められるんだよ!ハイキングしながら自然の空気を吸って気持ちよさそうじゃない?修学旅行に行く時期はきっと新緑が綺麗だろうし…。」
(田中くん、きっと大阪に行くことが決まった時からここに行きたいって決めてたんだろうな。こんなに前々から調べててすごく行きたそうだし、賛成してあげたい!)
「めっちゃいいと思う!!!」
私が今まで出したことがないくらい大きな声で叫ぶと、優香もそれに続いて「私も賛成!」と手を挙げてくれた。田中くんもお調子者2人も目を見開いて私たちを見つめる。
「私たち、最近吊り橋渡ってみたいなって思ってたの!そうだよね、華?」
優香がさりげなくウインクしてきた。
「そうそう、そうなの。私たち偶然にもそんな話をしてたんだよ。」
何とか話を合わせるが、こんな分かりやすい嘘、すぐにバレてしまうのではないか。私は諦めかけていたが、お調子者2人は疑う素振りを1ミリも見せずに納得してくれたのだ。
「3人がそう言うなら、そこに行ってみようぜ!」
「そうだな。ハイキングもおもろそうだし、いいんじゃね?」
その言葉を聞いて私と優香、田中くんは目を合わせて喜んだ。田中くんは特に嬉しそうで頬を赤らめながらお礼を言った。
「みんな、ありがとう!めっちゃ嬉しいよ。」
彼の笑顔はあまりにも純粋で美しかった。
(亮太くんの1番仲いい友だちである田中くん、本当に素敵な人だ。あー!亮太くんのこともいろいろ知ってるんだろうな、聞いてみたいこといっぱいある…。)
「遥人。」
その時、突然聞き覚えのあるボソッとした声が聞こえてきた。その瞬間に私の胸の鼓動が一気に大きくなる。
「おー亮太。どうしたの?」
田中くんが教室の後ろの方に手を振って尋ねる。私もようやくそちらに目線を送ることができるようになった。そこにはリュックを背負って突っ立っている亮太くんがいた。
「もう終わる?集まり。ちょうど俺、帰るところだったから声かけたんだけど。」
「あ、亮太の班はどこ行くんだよ?計画は決まったのかー?」
佐々木くんが会話を遮って聞いたが、亮太くんは表情を変えないまま答えた。
「ほしだ園地。俺が行きたいって言ったら班員みんな賛成してくれて。」
「ええ!?」
田中くんから変な声が出るのを初めて聞いた。私も優香と目を合わせて口をポカーンと開けた。
「まじか、何だよ!俺らと一緒じゃん!こっちは遥人が行きたいって最初に言ったんだよ。2人とも口裏合わせてたんじぇねえの?」
斎藤くんが2人を交互に見ると、2人は同時に首を横に振った。
「すごいね、偶然一緒だったんだ。行きたいところ。」
優香の言葉に私は何度も頷きながらも、亮太くんから目を離さなかった。彼は少し嬉しそうに笑っているのだ。
(何あの笑顔…本当にかっこよくて可愛い。このあどけない感じが何ともたまらん。もう本当に心臓飛び出そうになるんだけど…。)
「今日はここまでにして帰ろうぜ。行く場所決まったし、また今度は食いたいもん決めような!いっぱいあって決めれる気しねえけど。」
佐々木くんはそう言うと、斎藤くんを引っ張って「じゃあまた明日ー!」と帰って行ってしまった。教室には私と優香、田中くん…それに亮太くんの4人になった。
「佐藤さん、高橋さん。ありがとね、賛成してくれて。本当は嫌じゃなかった?大丈夫?」
田中くんが心配そうな表情をするので、私は大きくかぶりを振った。
「そんなことない!むしろ意見言ってくれてありがとう。場所決められて良かったよ。」
優香も大きく頷くと、彼はホッとしたような笑顔を見せた。すると、いつの間にか近くまで亮太くんが来ていてニコニコしながら話しかけてきた。
「佐藤さん、挨拶するのもう忘れない?」
(え…噓でしょ…今、私のこと呼んだ!?佐藤さんって…佐藤さんって言ったよね!?やばい、やばいやばい、心臓持たないって!!!)
「あ…あー、号令だよね。なんか自分が学級委員であること自体を忘れちゃってさ。これからは忘れないように気を付けないとなぁ…。」
「学級委員であること自体を忘れちゃうの?まあ…そっか。まだ日浅いもんね。」
亮太くんが何かを分析するかのように真剣に言った。
(これってもしかして…一緒に帰るとかそういう流れになっちゃう感じ!?うわー、そしたら恋が始まって家まで送ってもらえる日とかも出てきたりして…!どうしよう、本当に最高すぎるんですけど!)
「じゃあ…また明日。行こう、遥人。」
私はズッコケそうになるのを何とか耐えて「じゃあね。」と2人に手を振った。
「あの2人、本当に仲良しだよね。なんか私と華みたいだな、男子バージョンの。」
優香が面白いことを言うので、私は思わず吹き出した。
「いいよね、あの2人。本当に素敵。なんか癒されるわ。」
私の言葉に優香は目を丸くした。
「もしかして……華、好きなの?」
(あれ?やばい、バレちゃった!?親友と言えども、照れ臭くて言えてなかったのに…!)
私はドキドキしながら彼女の次の言葉を待った。
「いつから好きになったの?田中くんのこと。」
(ええーーー!そっちかいっ!!!)
私は再びズッコケそうになるのを何とか耐えて首を横に振った。
「いやいや違うよ、全然違うって。」
「そんなに拒否するなんて逆に怪しい!田中くんと華、お似合いだと思うな。」
「ううん、そんなことないし!…っていうか、好きじゃなくて友達だよ、ただの。」
「ふーん。友達だと思ってても、本当は好きってこともあるじゃん?認めなよ~好きって気持ちをさ。」
(いや…本当に違うんだけどな。私が気になってるのは…亮太くんなのに。)
優香が怪しむことをやめないので私はもう諦めモードに入ってしまった。私は帰り道も訂正することができないまま家に着いてしまった。
(またいつか優香とこういう話になったら、ちゃんと訂正しよう。それで、ちゃんと私の本当の気持ちを分かってもらうんだ。今は…今はまだ私に勇気がないだけだから。)
私は布団に潜りながら色々なことをぐるぐる考えていたが、いつの間にか眠りについてしまった。
つづく
読者の皆さま、次回も乞うご期待です!(笑)
ぜひご覧くださいませ♪




