表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私たち、惜しい2人です。  作者: みもざちゃん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/20

私たち、気付いたんです。(2)

佐藤華さとうはな:どこにでもいる平凡な女子高校生。2年1組。いつもポニーテールをしていて身長は少し低め。部活は家庭調理部。成績も運動もまあまあ。なぜか亮太のことが気になっている。少女漫画をたくさん読んでいてロマンティックな展開をいつも期待している。

鈴木亮太すずきりょうた:どこにでもいる平凡な男子高校生。2年1組。短髪で中肉中背の体格。部活はバスケ部だが、ベンチを温めている。成績も運動もまあまあ。

高橋優香たかはしゆうか:華の小学生からの幼馴染で親友。同じクラス。成績優秀だが、運動は苦手。部活は吹奏楽部。

田中遥人すずきはると:亮太の小学生からの幼馴染で親友。同じクラス。運動は学年でもトップクラスだが、勉強は苦手。部活は野球部。

立石直哉たていしなおや:クラスのムードメーカー。お調子者男子軍団のリーダー的存在。

小川茜おがわあかね:クラスの1軍女子グループのリーダー。見た目は可愛くてモデルのようだが、性格があまり良くない。

渡辺先生:2年1組の担任の先生。新人でもベテランでもない男性教師。


「自分のために生きるっていうのは自己中でも自分勝手でもない。だから、いいんだよ。」

優香には私の心の声が聞こえているのかもしれない。私は彼女の言葉を信じることにした。きっと優香は、私のことを私以上に知っている人なんだと、そう感じたからだ。

「ありがとうね、優香。そうしてみるよ。」

私の言葉に優香は安心したような表情を見せるのだった。


私と優香はいつの間にか眠りについていた。気が付けば、渡辺先生が「みなさん、あと30分くらいで着きますよ。荷物整理しといてください。」と声をかけて回っていたのだ。

私がまだ眠い目をこすって腕を伸ばすと、優香も目を覚まして荷物を整理し始める。すると、遠くの方から小川さんの囁く声が聞こえてきた。

「亮太くん、あのさ…ちょっといい?」

(あれ?小川さんが亮太くんに話しかけてる!?なんで?何か話すことあるの?)

亮太くんと田中くんの席は通路を挟んでもう少し後ろの方なのに、私は耳がいいのか聞こえてしまった。寝ぼけていたのが、いきなり気が引き締まる。私はまた聞き耳を立てて、亮太くんの返答を待つ。

「うん。どうしたの?」

亮太くんの寝起きほやほやの声が小さく聞こえた。

「明日、予定ある?数学分からなくて図書館で勉強教えてくれない?」

「いいけど…なんで俺?」

(え…!?明日2人で会うの!?勉強教えてほしいなんて嘘に決まってるじゃん…。小川さんってやっぱり…やっぱり亮太くんが好きなんだ…。)

私の心にぽっかりと大きな穴が開いたように感じる。

「亮太くん、前の数学の時間にみんなの前で発表してめっちゃ理解してたじゃん?だから…教えてもらいたいなって。」

「ふーん…うまく教えられるか分からないけどね。」

「ありがとう!めちゃくちゃ嬉しい!じゃあ、10時に駅前の図書館で。」

小川さんがいつもより可愛らしい声を出している。亮太くんは「うん、分かった。」と言った。私は衝撃のあまり呆然としてしまう。

(亮太くん、なんで一緒に行っちゃうの?なんで断らないの?小川さんが私に意地悪なの知ってるのに…なんでなの?)

考えれば考えるほど泣きたくてたまらなくなる。亮太くんの気持ちが全く分からなかった。

「華、大丈夫?すごく深刻そうな顔してるよ?」

荷物をまとめ終えた優香が心配そうに顔を覗く。私はこの状況を口に出すことができなかった。声に出して話したらもっと苦しくなりそうだったからだ。

「ごめん…ちょっと今は無理。話せない。」

私がやっとの思いで話すと、優香は眉毛を八の字にして小さくうなずいた。

「いいよ、話せるようになったら話してね。」

(頼っていいんだよって言ってくれたのに、本当にごめんなさい…優香。私って、私って本当に憶病で勇気もないし、ただただ傷つくのが怖いだけのちっちゃな人間なんだ。)

目に涙がいっぱい溜まって慌てて手の甲で拭った。優香が驚いたように私の背中をさすり始める。

「ねえねえ、華。やっぱり少しだけでも教えてほしい。どうしたの?寝て起きて何があったの?亮太くんのこと?」

優香が小声で尋ねるのに私はゆっくりとうなずいた。

「華。」

はっきりした声で私の名前を呼んだ。私は彼女の真っ直ぐな瞳に吸い込まれるように彼女を見つめた。

「やっぱり、ちゃんと伝えなよ。後悔する前に。」

私がハッとすると、優香は私の肩を両手で挟んだ。

「華ならきっと大丈夫なんだから!自信持って、言ってみな!ちゃんと自分の本心と向き合ってさ、とにかく伝えてみなよ!」

「でも…でも、ダメだったら?」

涙で濡れたまま私は俯いた。

「亮太くんの気持ちが全然分からないの。」

「そうかな?だって亮太くん、華といるときいつも楽しそうじゃん。」

「それは…それは亮太くんが優しいからだよ、誰にでも…。」

優香は何も言えなくなってしまった。それから私はようやくさっきの小川さんと亮太くんのやり取りを彼女に伝えることができた。優香はすべて話を聞き終わると、目を丸くして眉間にしわを寄せた。

「それって…絶対勉強がメインじゃないでしょ。小川さんはきっと伝えるんだね。」

「どうしよう、やっぱりそうだよね。」

私が小さくため息をついたその時、田中くんと亮太くん2人が通路を歩いてきた。

「ちょっと待った!」

優香が田中くんの腕を掴んだので、私は驚いて彼女を見た。

「え…!?高橋さん、どうしたの?」

田中くんはキョトンとする。隣にいた亮太くんも足を止めて不思議そうに優香を見た。

「あのさ、明日みんなで集まらない?修学旅行の後の打ち上げ…的な!」

(優香、わざわざ考えてくれたんだ…。)

すると、田中くんは表情を明るくしたがすぐに何か気付いたような顔をした。

「僕は良いけど…亮太は予定が入っちゃったらしいんだ。」

「さっき小川さんに勉強教えてって言われたんだ。でも、その後でも良いよ。」

亮太くんが提案してくれた。すると、優香が少し苛立った様子で彼を見た。

「亮太くん、なんで小川さんに優しくするの?華があんなに意地悪されてるのに。」

(いいんだよ…もういいんだよ優香。私は…もう大丈夫だから。)

私が口を開こうとすると、亮太くんがすぐに答えた。

「だからこそだよ。俺が意地悪したら、そのしわ寄せで佐藤さんにもっと被害が出るかもしれないでしょ?」

(え…?それって…私のためってこと?)

私は思わず亮太くんのことを見上げた。亮太くんは優しい目をして私を見つめている。

「それに、佐藤さんに意地悪しないでって直接言おうと思ってたんだ。」

「亮太…そういう作戦だったのかよ。」

田中くんがなぜか悔しそうに言うと、亮太くんはニコニコ笑った。

「それ以外ないよ。」

私の鼓動が一気に速くなる。すると、渡辺先生が「佐藤さん!」と呼ぶ声が聞こえた。

(え、嘘でしょ、このタイミングで!?もうー!今度は何頼まれるんだろう…。)

私は優香と2人に「ごめん、行ってくるわ。」と席を立ち、先生の方に歩いて行った。私が首を傾げると、先生はあくびをしながら言った。

「修学旅行中いろいろありがとうございました。修学旅行のまとめ作業の統括も、お願いしていいかな?」

(と…統括?何それ、なんかボスみたいなこと?)

キョトンとしていると、先生は何度も頷いた。

「どの班もちゃんと期日内に終わるように、働きがけをお願いします。修学旅行の後、先生ちょっと忙しくて。」

「あ…はい。」

(全部の班のまとめを期日内に終わらせるって…そんなことできる…!?私だけ学級委員の責任重すぎるって…。)

私が肩を下ろして席に戻ると、優香は苦笑した。

「またお馴染みの無理な頼み事だった?」

私が事情を話すと、彼女はすぐに「一緒にやろうね。」と言ってくれた。私が彼女にお礼を言うと、「もう降りますよ!」と渡辺先生の大きな声が聞こえてきた。

新幹線から降りて、改札を出て、私たちは馴染みのある駅に列を作った。班ごとに並んでから、先生は清々しい表情で私たちを見回した。

「2日間という短い期間でしたが、みなさん本当にお疲れ様でした。ゆっくり休んでくださいね。帰るまでが旅行ですから、気を付けて帰って下さい。まとめ作業もしっかり取り組んでくださいよ。それじゃあ学級委員、挨拶。」

「注目。さようなら。」

私の声に続いてクラスのみんなが「さようなら!」叫ぶと、先生が何か気付いたのか手をパンパン叩いた。

「ちょっと待った!クラスの集合写真、今撮っちゃいますね。急ぎ目でさっさと列並んでください。」

「ここで撮っても、大阪行った感ないじゃねえかよ。」

立石が珍しくごもっともなことを言うと、クラスのみんながドッと笑った。私と優香も顔を見合わせて肩をすくめた。

「佐藤さん。」

田中くんの声に振り向くと、彼は可愛らしいピュアな笑顔で私を見た。

「隣で撮ってもいい?」

(え…?隣で!?そっか…田中くん、私のこと好きだって思ってくれてるからか…。こうやって好きな人に声をかけられるなんて田中くんは本当に凄いと思う。でも…でも、私が好きなのは田中くんじゃないんだ…。)

私は深呼吸してから彼の瞳を改めて見た。

「ごめん…ほんとにごめんね、田中くん。」

それから、はっきりした声で言った。

「私、良いよって言えないんだ。だって、私には他に…他にいるの、私の隣にいてほしい人が。」

手の震えと胸の鼓動を感じながら、私は覚悟を決めて田中くんの前に立っていたのだった。


つづく

ついに華ちゃんの覚悟が見える場面まで来ました!

次回が最終回になりそうですーたぶん(笑)

次回も乞うご期待!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ