私たち、惜しい2人です。(3)
佐藤華:どこにでもいる平凡な女子高校生。2年1組。いつもポニーテールをしていて身長は少し低め。部活は家庭調理部。成績も運動もまあまあ。なぜか亮太のことが気になっている。少女漫画をたくさん読んでいてロマンティックな展開をいつも期待している。
鈴木亮太:どこにでもいる平凡な男子高校生。2年1組。短髪で中肉中背の体格。部活はバスケ部だが、ベンチを温めている。成績も運動もまあまあ。
高橋優香:華の小学生からの幼馴染で親友。同じクラス。成績優秀だが、運動は苦手。部活は吹奏楽部。
田中遥人:亮太の小学生からの幼馴染で親友。同じクラス。運動は学年でもトップクラスだが、勉強は苦手。部活は野球部。
立石直哉:クラスのムードメーカー。お調子者男子軍団のリーダー的存在。
小川茜:クラスの1軍女子グループのリーダー。見た目は可愛くてモデルのようだが、性格があまり良くない。
渡辺先生:2年1組の担任の先生。新人でもベテランでもない男性教師。
USJの時間はあっという間に終わってしまった。私たちは渡辺先生に言われていた集合場所に移動し、唯一まだ戻って来ていない立石くん率いるやんちゃ男子グループを待っていた。
「もう14時なったね…新幹線乗れなくなっちゃうんじゃない…?」
優香が心配そうな表情をする。腕時計を見ると、たしかに時刻は14時を回っていた。私は買ったお土産を整理しながら、「大丈夫かな…」と苦笑した。
「佐藤さん!」
遠くから先生に名前を呼ばれた。私が顔を上げると、先生は困った顔をしながら私の方に歩いてきた。
「佐藤さん…立石さんのグループ、探して来てもらっていい?先生、ここから離れられないんだよ。立石さんのグループの人たちに電話しても、誰1人出ないから心配なんだ。」
(…え!?探しに行く!?)
私がきょとんとすると、隣にいた優香が代わりに口を開いた。
「あの!私も一緒に探しに行きます。このままだとみんな、帰れなくなっちゃうし。」
私が唖然とすると、彼女は私と目を合わせて力強くうなずいてきた。
(どうしよう…こんな広い中で絶対探せるわけないじゃん…!なのになぜか優香はやる気満々だし、亮太くんと田中くんはお手洗いに行ってから帰って来ないし…。)
頭の中が混乱したまま、私は優香とまた門をくぐってUSJの中へ入った。
「優香、本気で探せると思ってるの…?こんなに人いっぱいだし、探す手がかりもゼロなのに、戻った方がいいんじゃない?」
私が説得しようとすると、優香は足を止めた。
「それもそうだけど…。あ!分かった!アナウンスしてもらうように頼んでみない?」
「迷子のお知らせ…みたいな感じで?」
私は少し笑いながら言ってしまった。優香も笑いをこらえた表情でうなずく。
「いいアイデアかも。それじゃあ、ヘルプセンターに向かおう。」
私たちがまた歩き出そうとしたその時。私は立石らしき人物の声が近くで聞こえて来たように感じた。私はまた足を止めて後ろを振り向いた。優香も一緒になって後ろを向く。
「あー!立石だ!!!」
私と優香が同時に叫ぶと、立石らしき人物がこっちを向いて顔を青ざめた。「逃げるぞ!」と言って、複数の男子たちと走り出した。
「ちょっと!そこの男子、なんで逃げるの!?もう時間なんだってば、止まりなさい!」
優香が警察官のような発言をしながら猛ダッシュし始めた。私も慌てて走り出す。
(立石たち、どうして逃げるんだろう?帰りたくないから?もう高校生なのにそんなことで逃げるかな?)
彼らはあまりにも足が速すぎて、私たちは姿を見失いそうになる。私の足は限界を迎えそうになって、思わず止まってしまった。優香も肩で息をしてうつむいた。
「おーい!2人とも!立石たちは見つかった?」
聞き馴染みのある声が聞こえてきた。私と優香がハッとすると、田中くんと亮太くんがこちらに向かって走ってくるのが見えた。私は2人の姿を見て、思わず泣きそうになった。
(ここで2人が来るなんて…救世主すぎてうやばい!!!超かっこいいんだけど…!)
私が余計なことを考えていると、優香が今の状況を分かりやすく簡潔に説明してくれた。すると田中くんと亮太くんは顔を見合わせて首を傾げた。
「なんで逃げるんだ?」
「うーん、全く理解できないけど…とりあえず捕まえればいいってことね!」
田中くんがストレッチをし始めたので、私たちは思わず吹き出してしまった。田中くんは運動神経抜群で足の速さは学年でもトップクラスだ。
「でも…こっちに私たちがいるって分かったら、もうここに戻ってこないよね。どうやって探せばいいんだろう。やっぱり迷子のお知らせでもしないとダメかな?」
優香が眉を八の字にすると、亮太くんが小さく手を挙げた。
「作戦…思いついちゃった。」
「さ…作戦!?」
私たち3人で叫ぶと、亮太くんは今まで見たことのないほど自信満々な顔でうなずいた。私たちは顔を寄せ合って彼の作戦に耳を傾けるのだった。
亮太くんの作戦のおかげで私たちはやっと立石たちを捕まえることができた。
すぐに先生とみんなのところに戻ると、渡辺先生は静かな口調でやんちゃ男子グループを説教した。普通に怒鳴られるよりも何倍も怖い怒り方に、泣いている男子も数人見られた。
「本当にいい作戦だったね、亮太くんの考えたやつ。」
優香が目を見張って亮太くんを見ると、彼は頭を掻いて笑った。
「キャストさんに聞けば間違いないと思っただけだよ。ゲストのことをよくよく観察しているキャストさんならどこに行ったか分かるかなって。」
そう。私たちは道に立っていたり、アトラクションにいたりするキャストにインタビューをしたのだ。やんちゃ男子グループの特徴を伝えると、キャストさんたちはすぐに居場所を教えてくれた。あとは俊足の田中くんが逃げ惑う彼らを捕まえて今に至るというわけだ。ちなみに彼らが逃げてた理由はただ単に「もっと遊びたかったから。」らしい。私たちはこれを知った時、思わずずっこけそうになっった。
「田中くんも足が速すぎてびっくりしちゃった。すごかったよ。」
私が田中くんの方を向くと、彼は頬を色づけてニコッと笑った。
「佐藤さんに言われると嬉しいな…ありがとう。」
(え…嬉しい!?それってどういう意味なの?)
田中くんが何か言おうとすると、渡辺先生がこっちに来て私たちに頭を下げた。
「4人で探してくれて本当にありがとうございました。すごく助かりました。」
私たちが首を横に振って謙遜していると、「あの!」と誰かが不機嫌そうな声を出した。私たちが声の方に目を向けると、そこには髪の毛をくるくる巻きながら突っ立っている小川茜がいた。
「佐藤さんさ、学級委員なのに他の人と一緒に自分の仕事やるなんて責任感なくない?しかも、田中くんと亮太くんと一緒にいすぎじゃないですか?そんなに2人のことこき使ってるわけ?2人とも何か佐藤さんに弱み握られてんの?」
「小川さん。」
田中くんが言うと、彼女は彼のことを嘲笑った。
「はいはい、佐藤さんはそんな人じゃないって言いたいんでしょ。いつでも佐藤さんの味方なんだもんね。恋ってマジ盲目だわーめっちゃウケるんだけど!」
(恋は盲目…?何の話?この人、でたらめばっかり言ってるじゃない…!)
私が怒りを抑えていると、田中くんの握っている拳が少し震えているのが目に入った。優香は憎らしそうに小川さんを睨みつけているし、亮太くんは口を結んだまま視線だけを泳がせていた。
「小川さん、先生が佐藤さんに頼んだんですからそういうことは言わないでください。いいですか?」
渡辺先生が苦笑しながら言うと、彼女は「はーい。」とテキトーな返事をした。小川さんの勝ち誇ったような表情に私は思わず口を開いた。
「今後もそうやって生きていくなら、寂しい人生しか送れないよ。」
小川さんの顔が一気に鬼の形相に変わる。私はゆっくりと近づいてくる彼女にひるむことなく話を続ける。
「根も葉もない事実を並べて人を卑下する。そんな人と一緒にいたいと思う人なんて、誰もいないよ?自分の発言には、ちゃんと自分で責任を持たないと。」
「は?あんた誰に口きいて…。」
小川さんが何か言おうとするのを意外な人物が止めた。それは…佐々木くんと斎藤くんだった。
「俺らが悪かったんだから、もういいよ。佐藤らのこと、責めんなって。」
「そうだよ、小川。少し落ち着けよ。」
やんちゃ男子グループの2人に言われて、彼女は何も言えなくなってしまった。私のことを睨みつけて何も言わずに離れていく。
「ありがとね、間に入って止めてくれて。」
私は佐々木くんと斎藤くんにお礼を言った。佐々木くんは肩をすくめてから小声で囁いた。
「なんか小川、亮太のこと好きっぽくてさ。亮太といつも一緒にいる佐藤さんのこと、気に食わないみたいだぜ?ガキだよな。」
(え…?)
私の頭の中が真っ白になる。まさか…まさかそんなの嘘に決まってる。
「何言ってるの、佐々木くんたちの行動も相当ガキだったけど?」
優香が正論を突きつけると、2人とも顔を見合わせてから「すみませんでした!」と90度お辞儀した。
(だって小川さん、あんなに亮太くんのこと馬鹿にしてたじゃない…。それなのになんで小川さんが?そんなの…そんなのあり得ない!)
私がまだ動揺していると、渡辺先生が「移動します!急いで駅に向かいましょう!」と叫んだ。荷物を持ってみんな一斉に歩き出した。
「あ…あのさ。」
私が優香を見失わないように歩いていると、後ろから亮太くんの声が聞こえた。私がゆっくり振り向くと、彼は私の隣に来て止まったので私も自然と足を止めた。
「佐藤さん、根も葉もない事実って言ってたじゃん?小川さんが言ったことに対して。」
小さくうなずくと、亮太くんはようやく目を合わせてはっきりした声で言った。
「実は…一部分だけ事実があったんだ。」
「え…?それって…どういう…こと?」
(なんで?なんで亮太くんこんなに戸惑ってるの?聞きたくない…お願い、言わないで。怖くて怖くて聞きたくないよ…!)
私が思わず目を閉じると、亮太くんはさらっと言ってしまった。
「遥人が佐藤さんのこと…好きだってこと。」
あっという間に頭の中が大洪水になった。何の言葉も思い浮かばない。
「でも…でも、佐藤さんの気持ちはどうなの?」
周りの雑音が一気になくなった。私はハッとして彼を見つめる。
「佐藤さんの…本当の気持ちは?」
今まで見たことがないほど真剣な眼差しだった。私は彼の瞳に吸い込まれるように、ただただ彼の目を見つめることしかできなかった。
つづく
いよいよ核心を突くような質問が出てきた今回のお話でした!
次回もお楽しみに♪




