私たち、惜しい2人です。(2)
佐藤華:どこにでもいる平凡な女子高校生。2年1組。いつもポニーテールをしていて身長は少し低め。部活は家庭調理部。成績も運動もまあまあ。なぜか亮太のことが気になっている。少女漫画をたくさん読んでいてロマンティックな展開をいつも期待している。
鈴木亮太:どこにでもいる平凡な男子高校生。2年1組。短髪で中肉中背の体格。部活はバスケ部だが、ベンチを温めている。成績も運動もまあまあ。
高橋優香:華の小学生からの幼馴染で親友。同じクラス。成績優秀だが、運動は苦手。部活は吹奏楽部。
田中遥人:亮太の小学生からの幼馴染で親友。同じクラス。運動は学年でもトップクラスだが、勉強は苦手。部活は野球部。
立石直哉:クラスのムードメーカー。お調子者男子軍団のリーダー的存在。
小川茜:クラスの1軍女子グループのリーダー。見た目は可愛くてモデルのようだが、性格があまり良くない。
渡辺先生:2年1組の担任の先生。新人でもベテランでもない男性教師。
「USJ、僕と亮太と佐藤さん、高橋さんの4人で回らない?」
(うわー!まじで!?亮太くんと遊園地を一緒に回るの!?信じられない…!これはもう本格的に恋の始まりってやつだわ…。)
私と優香は顔を見合わせたが、すぐにオッケーサインを指で出した。田中くんは嬉しそうに「ありがとう!」と微笑んだ。
あっという間にバスはUSJに到着してしまった。私の胸の鼓動がだんだん大きくなっていく。
(ドキドキするけど…私のことを見てもらえるようにアピールしてみよう!何とか…何とか亮太くんに振り向いてほしいなぁ…。積極的に話しかけに行かないと!!!)
私が1人で何度も頷いているのを優香は不思議そうな表情で見つめていたのだった。
「わー!ついに来たー!USJ!!!」
いつも落ち着いている田中くんが大きな声を出した。私と優香は目を疑うように彼を見つめたが、亮太くんは表情を変えないまま田中くんに付いていく。
(田中くんと亮太くんばっかりでいたら、私に振り向いてもらえないから…作戦1個目!まずは隣に行って歩く作戦だ!)
今、私は優香と隣り合って歩いており、田中くんと亮太くんが少し前を歩いている…という状況だ。これは何とか優香と早歩きして、4人で横並びになりたいものだ。
「ねね、華は何に乗りたい?私は絶叫系大好きだから全部乗りたくなっちゃうなぁ~。」
「横並び…。」
(あれ?私、今何て言った!?つい頭の中にある言葉をそのまま…!)
顔が一気に青ざめたが、優香は首を大きく傾げた。
「え?なんて?よこ?」
「あー、あの…横に揺れるアトラクションなかったっけ?あははは…。」
何とかごまかすことができると、優香は少し考えてから何度も頷いた。
「あったと思う!華、絶叫系苦手なのにそういうの乗りたいんだね!」
(そうだ…!私、絶叫系大の苦手だったんだ!やっば、どうしよう…!!!)
私が苦笑していると、田中くんが後ろを振り向いて言った。
「ねえねえ、2人とも!あのジェットコースター乗ろう!早く早く!」
田中くんが目を輝かせるので私たちはイエスと言う選択肢しかない。優香は心配そうに私を見たが、私は親指を立ててニコッと笑った。
(大丈夫…じゃなーい!!!全然大丈夫じゃないんですけどぉー!!!…っていうか、亮太くんアプローチ作戦、全然進められてないし!)
「佐藤さん、絶叫系…大丈夫なの?」
「ああ…それがその…って、ええ!?亮太…くん!?」
いきなり隣からボソッとした声が聞こえて、私は驚愕した。亮太くんは不思議そうに私を眺めてから頭を掻いた。
「一緒に…乗ってみる?」
彼があまりにも優しい目をしているので、私の首は自動的に縦に動いた。
「2人で何コソコソ話してるの?私と田中くん、もう並ぶからねー!」
優香の声を聞いて、私たちは早歩きでアトラクションに向かった。列に並んでる間、定期的に「きゃー!」と悲鳴が聞こえてくる。私はその度に体を震わせてしまった。
(うわあ…めちゃくちゃ怖そう…気絶したらどうしよ!?口から泡吹いて全く動けなくなるとか…!?顔が青ざめて救急車で運ばれちゃうとか…!?いずれにせよ最悪だあ…。)
少しずつ列が進んで私の心臓の鼓動が速くなっていく。亮太くんの方をちらっと見ると、亮太くんは真剣な表情でジェットコースターを見つめている。
(あ!ダメダメ!受け身のままじゃ何も変わらない!何か話しかけないと!!!)
私は深呼吸をしてゆっくりと口を開いた。
「あの…亮太くんは絶叫系好きなの?」
亮太くんはちらっと私の方を向いた後、斜め上に目を向けた。
「うーん、好きじゃないね。」
私は思わず耳を疑った。
(え…!?え?え?えええええ!?)
「じゃあ、得意では…あるのでしょうか?」
私はあまりの衝撃を受けてつい敬語で聞いてしまった。亮太くんは「なんで敬語?」と笑いながら首を大きく横に振った。
「絶叫系は苦手だし、好きじゃないよ。」
(え!?じゃあ…なんで一緒に乗ってみる?って誘ったの!?なんで?なんでなの!?)
絶賛混乱中の私にキョトンとした表情の亮太くん。私は苦笑するしかできない。
「あっはは…そうなんだね。苦手な者同士で乗ったら…もっと怖くなりそうだけど…。」
「大丈夫だよ。」
亮太くんが確信したような口ぶりで言うので、私は目を丸くした。
「もしかして、今までにジェットコースター乗ったことあるの?苦手な者同士で?」
「ううん、今日が初めて。」
「あ…そうなんだ、私も…だけど。」
私が言うと、亮太くんは「本当に!?」と大きな声を出した。私が頷くと、亮太くんは少し頬を色づかせて微笑んだ。
「じゃあ…初めて同士でもあるんだね。」
(初めて…同士!?もしかして、私みたいな絶叫系苦手人間と一緒に乗るの初めてで、私が初めての相手で良かったって…そういうことなの!?喜んでるのかなぁ…!?)
1人で興奮していると、ついに順番がやってきてしまった。優香と田中くんは前の前の列に乗っている。荷物を籠の中に入れてついに出発のベルが鳴る。
(うわ、待って。怖い…やっぱり私、めっちゃ怖いわ。気絶するかも…。)
もうジェットコースターが動き出しているにも関わらず、私の怖さは最大級になってしまった。絶叫系は苦手だと言ってたのに、亮太くんは全く動じていない様子だ。
ついにジェットコースターは上まで上っていった。一瞬にして、勢いよく降下していく。
「うわああああ!!!」
自分の声とは思えないほどの悲鳴を上げてしまった。ジェットコースターはスピードを上げ、ぐるっと一回転した。
「佐藤さん、大丈夫だよ!俺がいるから!」
隣から励ましの声が小さく聞こえたような気がした。私は泣きそうになるのをぐっと堪えて何度も頷いた。
「みなさん、お疲れ様でした~!お忘れ物のないようにご注意ください。」
キャストさんが満面の笑みで明るい声を出す。放心状態の私はやっとの思いでジェットコースターから降りようとするが、突然体がよろけてしまった。
「うわあ!」
私の腕を亮太くんが引っ張って支えてくれた。私は亮太くんの胸に引き付けられる。私は亮太くんの手を借りながら何とか降りることができた。
(や…やばすぎる!亮太くんに引っ張ってもらっちゃった…!私の腕を亮太くんが掴んで…手まで握っちゃったよ!?昨日も手握られたのに…2日間連続でなんて贅沢すぎる…!)
すると、前の方から優香と田中くんがこちらに駆け寄ってきた。
「華!大丈夫!?ちょっとレベルが高かったかな…?」
「佐藤さん、絶叫苦手だったんだね。ごめん、誘っちゃって。」
私は慌てて首を横に振った。
「いやいや、全然そんなことないよ!乗れるかなって思って私が勝手にチャレンジしただけだから!」
田中くんはまだ申し訳なさそうな顔をしながら私の荷物を持ってくれた。
「ちょっと疲れたと思うから少し休もうか。何か食べる?」
優香の提案に私たちは大賛成した。私は近くの空いているベンチに座った。ジェットコースターに体の力が全て持ってかれてしまったみたいだ。
「亮太と高橋さん2人で食べ物買ってきてくれる?僕は佐藤さんと一緒にいるから。」
田中くんが言うと、優香は「まかせて!」と頷いた。亮太くんは何かを言いかけたが、「分かった。」と笑った。私がお礼を言うと、2人とも食べ物屋さんを目指して歩いて行った。
(田中くんと2人って…初めてかもしれない。どうしよう、何話せばいいかな…。でも、今はまず体を休めないと。本格派の絶叫系ジェットコースターだったなぁ…怖かったぁ。)
私が俯いていると上から聞き覚えのある声が聞こえた。
「あらあら、どうしたの?2人で仲良くベンチに腰掛けて。」
そこには小川茜と1軍女子メンバーたちが突っ立っていた。
「今、佐藤さんが体調悪くて休んでたんだよ。」
田中くんが動じずにはっきりした声で答える。すると、小川さんは気味の悪い笑みを浮かべた。
「佐藤さん、大変ね。田中くんと亮太くんどっちも好きになっちゃったの?ダメよ、二股かけちゃ。」
(そんな…!二股なんて、そんなことしてない!私は亮太くんだけが好きなのに…。)
「小川さん。」
田中くんが厳しく言うと、彼女とその周りの女子が爆笑し出した。
「あのさ、そんな本気で捉えるの辞めてくれます?何?もしかして田中くん、佐藤さんのこと好きになっちゃったの?だから必死にかばおうとして…。」
「小川さん。」
さっきと同じ口調で田中くんは声を出した。彼女は彼を睨みつけて「何なのよ?」と尋ねる。
「三度目はないからね?」
こんな低くて恐ろしい田中くんの声を私は初めて聞いた。さすがの小川さんもひるんだみたいで、顔を歪ませた。
「はあ?私は何もしてないから!こんなイチャついてる人たちなんて見てられないし、もう行くわ。」
小川さんは舌打ちをしてその場を去った。もちろん他の女子たちも彼女の後に続く。
(田中くん…すごい怒ってるかも…。私のせいで巻き込ませてしまった…。)
私が謝ろうとすると、田中くんが「大丈夫だった?」と眉毛を八の字にした。私は一瞬固まったが、すぐに口を開いた。
「うん!ありがとう…なんか巻き込ませてごめん。」
「謝らなくていいんだよ。ああやっていつも嫌がらせされてるの?小川さんから。」
「いつもっていう訳ではないんだけど、ちょっとだけね。」
私が顔を曇らせると、田中くんは「それはダメだね。」と深刻そうに言った。彼は優しくて正義感が強いから真剣に考え始める。
(これ以上田中くんのことを巻き込むわけにはいかないし…私と小川さんたちの間の問題だから自分たちで解決しないといけないことだよね…。)
「でも、気にしなくて大丈夫だよ!ちゃんと話し合って何とかするから。」
「ごめん、佐藤さん。」
田中くんが真剣な眼差しで私を見つめる。
(え…?どうしたの…田中くん。なんか今日、初めて見る田中くんが多い気がする…。)
彼の透き通った瞳はだんだん吸い込まれていきそうなほどに美しかった。
「僕には無理なんだ。気にしないの。」
(それって…どういうこと!?なんで…?なんで私のことを気にする必要が…?)
私と田中くんが見つめ合ったままでいると、近づいてくる足音が聞こえてきた。
「おーい!お待たせ!肉巻きおにぎりとホットドックとフランクフルトと…いろいろ買ってきたよ!」
優香の声が聞こえて、私は慌てて目を反らした。優香は不思議そうに私たちを交互に見る。
「どうしたの?2人とも、顔が…少し赤いけど?」
(私の顔が赤い!?いやいやいや、そんなはずないって…!さっきの状況、亮太くんに見られてたら…絶対勘違いされちゃったじゃん!?どうしよう…過去一大ピンチなんだけど!)
後ろから両手いっぱいに食べ物の入った袋を持った亮太くんも来ていた。田中くんがちらっと亮太くんを見て、それから話を始めた。
「小川さんが佐藤さんに酷いこと言ってきたんだよ。高橋さん、知ってた?」
優香が気まずそうな顔したので、田中くんは「亮太は知ってたの?」と聞いた。亮太くんはすぐに頷いて見せた。
「うん、ホテルにいた時に偶然聞こえて知ったよ。」
すると、田中くんは目を丸くして勢いよく立ち上がった。
「2人とも知ってたのに何もしなかったの?あんな嫌がらせしてきてるのに?もっと酷いことになって佐藤さんが傷ついたらどうするんだよ。早めに手を打っておかないとダメじゃないか。」
(田中くんがこんなに怒る姿も…初めて見た。やっぱり…今日の田中くん、違う人みたい。でも、ちゃんと私が伝えたいことも伝えないと…!)
「それがね、田中くん。ホテルでは私だけにじゃなくて…優香にも言ってきたの。昨日から始まったことだし、修学旅行が終わっても続いたら先生に相談するよ。」
私が慌てて口を開くと、田中くんは少し俯いてからまたベンチに座った。優香も私の言葉に何度も頷いてくれた。すると、意外にも亮太くんが口を開いた。
「遥人の気持ちは分かるけど、こういう問題は第三者が関わりすぎると余計複雑になっちゃうんだ。だから、俺たちはあんまり口出ししない方が良いと思う。」
田中くんはハッとすると、亮太くんは彼の目を真っ直ぐに見ながら笑顔を見せた。
「きっと遥人なら分かってるでしょ?俺に言われなくても。」
(亮太くん…かっこいい、かっこよすぎるよ。)
私は思わず亮太くんに見とれてしまう。少しの沈黙の後、田中くんがまた立ち上がって私たちを見回した。
「ごめん。僕、なんか…冷静さを失ってたみたいだよ。佐藤さんが傷つけられて、すごく嫌な気持ちになってさ。」
(やっぱり田中くんは優しいな…。そんな風に思ってくれてたんだ。)
その瞬間、私の目に涙が溜まってきた。一粒、また一粒と頬を伝っていく。
「華?大丈夫!?泣かないで。」
優香が私の背中を擦ってくれる。彼女はハンカチをポケットから出して私の涙を拭いてくれた。
「私のこと、大切に思ってくれてありがとう…。」
涙声で何とか自分の気持ちを率直に伝えると、亮太くんがニコッと微笑んだ。
「俺たちみんな大切に思ってるよ。お互いにね。」
(ちょっと、亮太くん…めっちゃかっこいい…!その言葉、ドラマか漫画でありそうなセリフなんですけど!?優香も田中くんも亮太くんも、本当にいい友達だな…。)
私が元気よく「うん!」と言うと、3人とも安心したような表情を見せた。
「せっかく買ってきてくれたし、みんなお腹空いてるだろうから、ご飯食べよ!腹が減っては戦はできぬ!」
田中くんがおどけたように叫んだので、私たちは思わず吹き出した。こうして私たちは優香と亮太くんが爆買いしてきた食べ物に食らいつくのだった。
つづく
4人の友情が垣間見えるお話だったかと思います!
今後の関係性はいかに…!?乞うご期待です(^^♪




