私たち、揺れてるんです。(3)
『私たち、惜しい2人です。』
佐藤華:どこにでもいる平凡な女子高校生。2年1組。いつもポニーテールをしていて身長は少し低め。部活は家庭調理部。成績も運動もまあまあ。なぜか亮太のことが気になっている。少女漫画をたくさん読んでいてロマンティックな展開をいつも期待している。
鈴木亮太:どこにでもいる平凡な男子高校生。2年1組。短髪で中肉中背の体格。部活はバスケ部だが、ベンチを温めている。成績も運動もまあまあ。
高橋優香:華の小学生からの幼馴染で親友。同じクラス。成績優秀だが、運動は苦手。部活は吹奏楽部。
田中遥人:亮太の小学生からの幼馴染で親友。同じクラス。運動は学年でもトップクラスだが、勉強は苦手。部活は野球部。
立石直哉:クラスのムードメーカー。お調子者男子軍団のリーダー的存在。
小川茜:クラスの1軍女子グループのリーダー。見た目は可愛くてモデルのようだが、性格があまり良くない。
渡辺先生:2年1組の担任の先生。新人でもベテランでもない男性教師。
「おやすみなさい、佐藤さん。」
突然話を切り上げて亮太くんは布団に潜った。
(えー!!!告白されないんかーい!!!)
私は「うん…。」と頷いて、ゆっくりと目を閉じた。まだ胸の高鳴りが収まらなくて眠るまでに時間がかかりそうな予感がした。
いよいよ2日目。今日は大阪の観光の王道、海遊館とUSJにクラスのみんなで行く予定だ。
「みなさん、ちゃんと早起きできて素晴らしいですね。まだ眠い人はバスの中で寝てください。それでは出発します。忘れ物ないように気を付けてくださいね。」
渡辺先生が大きなあくびをしながら言うので、クラスのみんなで大爆笑した。
「先生こそ寝ろよー!」
立石くんが叫ぶと、周りの男子たちが「そうだそうだ!」と加勢する。
(みんな朝から元気だなぁ…私はバスで寝ないといけないかも…。)
私も先生につられてあくびが出てしまった。昨日の夜はもちろん…眠れなかった。
(亮太くんの隣で寝て、亮太くんの隣で目覚めて、朝の用意をして…。この展開やばいって!急速に展開が進みすぎて頭がついていかないんだけど!!!)
「昨日、眠れた?」
我に返って横を向くと、そこには寝癖が付いたままの亮太くんがいた。私が笑顔を作ると、亮太くんは頭を掻いた。
「そっか…佐藤さんは眠れたのか…。」
(え…!もしかして亮太くんは眠れなかったの!?なんで?私が隣だったから!?私、いびきが酷かったとか?うわあ、めっちゃ恥ずかしい…。)
赤面していると、私と亮太くんの間に田中くんが入ってきた。
「お二人さん。なんで昨日同じ布団で寝てたのかな?」
「あ!それは…その、いろいろあって…!」
私がしどろもどろに答えると、田中くんは「いろいろ!?」と目を丸くした。慌てて訂正しようとすると、亮太くんが代わりに口を開いた。
「俺が壁にぶつかって電気消えちゃったから、佐藤さんが移動できなくなっちゃったんだよ。真っ暗だったからね。」
「ふーん…それで佐藤さんの隣に寝れたんだ。」
田中くんの発言に私はキョトンとした。亮太くんが真剣な目で彼を見つめているように見えて何だか変に感じた。
「何を3人でコソコソ話してるの!もうバス乗るんだから。行こう、華!」
優香が無理やり私の腕を引っ張る。私と優香はそのままバスに乗り込んで隣の席に座った。
通路を挟んで反対側に小川さんの姿が見えた。不意に目が合ってしまい、彼女は私を睨みつけた。私は苦笑しながら目を反らした。
「全員いるかな?バス出まーす。」
渡辺先生が言うと、バスはすぐに動き出した。
「そういえば!昨日、田中くんが華のこと話してたんだよね。」
優香が思い出したようにコソコソ声で言った。私が目を丸くすると、優香は周りを見渡しながら話を続ける。
「佐藤さんって本当に初恋覚えてないのかなぁ…とか、髪下ろしてたの良かったなぁ…とか。独り言みたいに華に関することを呟いてて。」
「え?そうなの!?なんでだろうな…。」
「それはもう、気になってるからじゃない?華のこと。」
私は一瞬固まってから、大きく首を横に振った。
「ないってないって!そんなにいっぱい話したこともないのに?」
「いや?分からないよ~もしかしたら両想いかもしれないね。」
(そういえば…優香にまだ本当の気持ち言えてなかったな。伝えないとって思ってるのにタイミングが見つからなくてここまで来ちゃった…。今、言わないと!)
私はごくりと唾を飲み込み、覚悟を決めた。
「優香、私ね実は…。」
「佐藤さん!」
前の方から先生が私を呼ぶ声が聞こえた。私は手を挙げて「はい?」と首を傾げた。
(先生…タイミング悪すぎます…。)
「海遊館で館長への挨拶、お願いしまーす。最初と最後ね。」
「あ…分かりました。」
すると、隣から小川さんたちのコソコソ声が聞こえてきた。
「雑用係じゃん、学級委員。」
「先生のパシリにされて可哀想…こき使われてるわ。」
私が無視していると、優香も気づいたらしく顔をしかめた。彼女は何か言おうとしてくれたが、私はそれを手で制した。
バスは30分走り続けてもまだ目的地に着かなかった。だんだんクラスのみんなは眠りについて車内は静かになってきた。優香も窓に頭を付けてぐっすり寝てしまった。
「なあなあ、女子と寝るってどんな感じだったんだよ?教えろよ!」
後ろの方から佐々木くんが小声で話してる。私は驚いて聞き耳を立てることにした。
「別に何もないし。ちゃんと分かれてたからね。」
亮太くんのめんどくさそうな声。きっと佐々木くんと斎藤くんに質問攻めされているのだろう。
「こっそり寝顔見つめちゃったりしないのかよ?亮太はそんなことしないかーもったいねえな。」
「髪の毛触っちゃったり?うわー俺なら絶対やりてえな。」
2人に呆れたのか亮太くんは何も答えなかった。すると、寝たと思っていた田中くんの声が聞こえてきた。
「そんなことしたらダメだよ。でも、見つめるくらいなら…いいかもしれないけど。」
「じゃあ遥人は見つめたんだなー?」
斎藤くんがニヤニヤしながら言った。田中くんは「違います。」とはっきりと拒否した。
「亮太って佐藤さんとめっちゃ仲いいよな。何かあったのか?」
佐々木くんの問いかけに私の心臓が飛び上がる。亮太くんはしばらくしてから口を開いた。
「何かあった訳じゃないけど、仲はいいよ。」
「佐藤さんのこと…好きなの?」
田中くんがさらっと核心的なことを聞くので、私は怖くて耳を塞ぎそうになった。
(これは間接的に告白されちゃうやつなのでは!?亮太くんが好きだよって言ったら、私と両想いってことじゃん!!!やばい…めっちゃ緊張する…!)
「それは…うーん。」
亮太くんが微妙な反応をする。佐々木くんが「何だよ、違うのかよ。」と笑った。
「分からないの?自分の気持ちが?」
意外にも田中くんが質問を続ける。亮太くんが黙り込んでしまうと、斎藤くんがパンパン手を叩いた。
「はいはーい、今はここまでにしとこうぜ。今日終わったらまた聞くからな~。」
「気持ちに変化があるかも?なーんて。」
佐々木くんが声を弾ませるが、亮太くんも田中くんも何も言わなかった。
(何この微妙な雰囲気…。亮太くん、好きって言わなかった。でも、田中くんがあんなに質問してたのもなんか不自然だった気がするし…っていうか、そもそも何かあった訳じゃないって亮太くん言ってたけど、私にとってはいろいろあったのに…。やっぱり亮太くんは誰にでも私にしたようなことをするのかな…。)
頭の中がごちゃごちゃしてきて、私はもう寝ることにした。でも、目をつぶっても亮太くんの言葉が脳内で再生される。
ー「何かあった訳じゃないけど、仲はいいよ。」
私はこの話は聞かなかったことにしようと思った。だんだん切ない気持ちが胸に広がってきて泣きたい気分になる。
(でも…亮太くん否定はしてなかったじゃん。まだ可能性はあるよね…うん、まだあるある!そう思わないと…気持ちが持たないもん。)
私は少しだけ目を開けて窓から景色を眺めていたが、優香の寝息を聞いていたらいつの間にか眠りについていた。
つづく
恋の波乱の予感がしてきた今回のエピソード。
次回も乞うご期待!お楽しみに~♪




