私たち、揺れてるんです。(2)
佐藤華:どこにでもいる平凡な女子高校生。2年1組。いつもポニーテールをしていて身長は少し低め。部活は家庭調理部。成績も運動もまあまあ。なぜか亮太のことが気になっている。少女漫画をたくさん読んでいてロマンティックな展開をいつも期待している。
鈴木亮太:どこにでもいる平凡な男子高校生。2年1組。短髪で中肉中背の体格。部活はバスケ部だが、ベンチを温めている。成績も運動もまあまあ。
高橋優香:華の小学生からの幼馴染で親友。同じクラス。成績優秀だが、運動は苦手。部活は吹奏楽部。
田中遥人:亮太の小学生からの幼馴染で親友。同じクラス。運動は学年でもトップクラスだが、勉強は苦手。部活は野球部。
小川茜:クラスの1軍女子グループのリーダー。見た目は可愛くてモデルのようだが、性格があまり良くない。
渡辺先生:2年1組の担任の先生。新人でもベテランでもない男性教師。
「佐藤さん…1人で行かないでね。夜に1人だと危ないから。」
体温が一気に上昇していくのを感じる。亮太くんの言葉に固まってしまったが、私は慌てて大きく頷いた。
(どうしよう、そんなこと言われたら私勘違いしちゃうじゃん…!やっぱり亮太くんは私のこと好きになってる途中なの?それとも…ただただみんなに優しいだけなの?)
亮太くんの純粋で眩しい笑顔を眺めながら、私の頭の中には同じ疑問が繰り返されているのだった。
みんなが寝静まった頃、私と亮太くんはなるべく物音を立てないように静かに部屋から出る。ついに待ちに待った(?)夜の見回りの時間がやってきたのだ。
「じゃあ、俺男子の部屋見に行くから終わったらエレベーターの前に集合しよう。」
亮太くんが耳元で囁いてきたので、私は思わず離れてしまった。
(うわー好きな人に耳元でヒソヒソ話されるのヤバいやつだから!!!もう既に心臓が持たない予感しかない…!)
亮太くんが驚いたように私を見ている。私は苦笑しながらオッケーとやって見せた。亮太くんは安心したようにニコッと笑う。
(男子の部屋はこのフロアだけど、女子の部屋は4階だからエレベーター使って行かないと…。小川さんとか他の女子たちに会いませんように…!)
私は両手を胸の前に当てて切に願いながらエレベーターに乗り込んだ。
4階に着いたが、意外にも静かだ。みんな疲れ果てて寝ているのだろうか。
(騒がしいのも嫌だけど、こんなに寝静まってるのに扉開けないといけないのも嫌だなぁ。)
事前に渡辺先生からもらったマスターキーを握りしめ、私は一つ一つ部屋の鍵を開けて中をちらっと見てすぐに閉める。これを繰り返していく。
(やっぱりみんな寝てるんだ!いびきが聞こえてくる部屋もあるし。今日はみんな疲れたんだなぁ。)
私が胸を撫でおろしていると、突然近くから大きな笑い声が聞こえた。私も声を出しそうになり、慌てて口を手で押さえた。
「しーっ!茜、声でかいって!学級委員の見回り来る時間だよ?」
「あ、そんなんあるんだっけ?あの佐藤さんが来ちゃうんだーウケるんだけど。」
奥の部屋から小川さんを始めとする1軍女子メンバーの声が聞こえてくる。私は鍵を開けようとした手を止めた。
「今日さ、佐藤さん急に強気になってたよね。まじでウザかった。あんな地味な奴にあんなこと言われたくないし。身の程を知れだわ。」
小川さんの不満そうな声がダダ漏れである。他の女子たちも「まじそれな。」「ウザい、あの子。」と頷いている。
「佐藤さんと髙橋さんって先生に気に入られようとして真面目だよね、絶対。あと男子たちにも頼られたいみたいな。計算高い女たちって感じ。」
「めっちゃ分かる!田中くんと鈴木くん、絶対罠にハマってるよね。あの2人もチョロそうな男子だし。」
(チョロそう…?)
マスターキーを握る手の力がだんだん強くなる。
「鈴木くん、佐藤さんに惚れちゃってるんじゃない?あの子に騙されてね。なんか今日も2人だけでいたらしいし。デートするなら他所でやれよ。」
小川さんの言葉にドッと笑いが起こる。私はその瞬間に大きな深呼吸をしてゆっくりと扉を開けた。
目を丸くして口をぽかーんと開けたままにしている女子たちが突然現れた私を呆然と見つめる。
私は高鳴る鼓動を全身で感じながら、口を開いた。
「もう周りの部屋は寝静まってるよ。話すのは良いけど、もう少しボリューム下げてね。」
すると、小川さんが「ふふふ…。」と気味悪く笑い出した。
「私たちが話してたら本物召喚しちゃった感じ!?まじでウケるー超おもろいんですけど!」
周りの女子たちは少し動揺していたが、小川さんの言葉を聞いて一緒に笑い出した。
「え、じゃあ何?佐藤さんはさっきの話も全部聞いてたわけ?ドアの向こう側にいて?」
小川さんが馬鹿にしたように聞いてくるので、私は大きく頷いて言い返した。
「うん。声があまりにもうるさいから、聞きたくなくても聞こえてきたよ。」
「は?今、私にうるさいって言った?あんたみたいな地味な奴が…!」
「地味で何が悪いの?」
目を吊り上げて叫ぶ小川さんの言葉を私は遮った。私の言葉に周りの女子たちも小川さんも黙り込む。
「地味は地味なりに生きてるから。みんなみたいに可愛い子が集まったグループだって、そのグループなりに過ごしてるのと同じようにね。」
「可愛い?思ってもないこと言わないで。どうせ私たちのこと馬鹿にして下に見てるくせに。」
小川さんが相変わらず突っかかってくるが、私は懲りずに言葉を返す。
「なんで私が思ってないって断言するの?なんで下に見てるって決めつけるの?私の気持ちを勝手に分かってるみたいにしないでほしい。」
「はいはい、分かりましたよ。これ以上話しても無駄みたいだからもう寝るわ。」
そっぽを向いた小川さんはすぐに布団に潜り込んで何も言わなくなった。他の女子たちも私をちらちら見ながら布団に横になった。
「おやすみなさい…みんな、今日はお疲れ様。」
私はそれだけ言ってそそくさと部屋を後にした。
(ほんっっとに許せない…!どうして優香のことも田中くんのことも亮太くんのこともあんな言い方してくるの!酷い…酷すぎるよ!)
早歩きしながらいつの間にか涙が頬を伝ってくる。私は手の甲でそれを拭いながらエレベーターの前に行く。だんだん涙が止まらなくなってきて視界がぼやけてきた。
(私…本当は…本当は…。)
「佐藤さん…どうしたの?」
亮太くんの囁き声が聞こえた。私はハッとして前を向いた。不安そうな亮太くんの顔が浮かび上がってくる。亮太くんはゆっくりと近づいてきて、私の背中を擦った。
そしたらもう私は我慢していた感情が一気に溢れてきて、声を出さずに号泣してしまった。亮太くんは黙って私の背中を擦り続ける。
(亮太くん…私、本当は…すっごく怖かったんだ。自分を攻撃されるのも自分が大好きな人を悪く言われるのもすっごくショックで傷ついたんだ。とにかく私は辛かったの…悲しかったの。)
ようやく泣き止むと、亮太くんは私の涙を手で拭ってくれた。
「佐藤さん、お願いだから1人で抱え込まないでほしい。」
亮太くんが真剣な眼差しで私を見つめる。私は涙で充血した目で亮太くんを見つめ返す。すると、彼は私から一旦目を反らしてボソッと呟いた。
「そんな顔で見つめないでよ…。」
私がキョトンとすると、亮太くんはもう一度私に目線を移した。顔が少し赤く染まっているように見えるのは気のせいだろうか。
「俺もすごく悲しい。佐藤さんが泣いてると…俺も悲しくて泣きそうになるんだ。」
(え…!?これって…これって告白!?私が嬉しいときは嬉しくて、悲しいときは悲しいってことだよね!?待って、告白として捉えていいの…?いやいやまさかそんなはずは…。)
頭が混乱して黙り込む私に亮太くんは話を続ける。
「俺…変なんだ。変なのは分かってるんだけど、なんか…よく分からなくて。でも、とにかく今はすごく悲しくて、佐藤さんのこと励ましたくて。それなのに、良い言葉が出なくて自分情けないなって思ったり…。」
「そんなことない!」
私は首を横に振って小声で叫んだ。
「亮太くんは情けないなんて思っちゃダメだよ。私、亮太くんがいてくれてすごく救われてる。一緒にいてくれるだけで…めっちゃ励まされてるんだよ。」
その瞬間、亮太くんの目に光るものが見えた。私が目を丸くすると、彼は服の袖で目じりをポンポン叩いた。
「ありがとう、佐藤さん。」
亮太くんがいつもの笑顔に戻った。私も笑い返すと、彼はホッとしたような表情をした。
(私、亮太くんに自分の気持ちをちゃんと伝えられた気がする。まだ好きって気持ちは言えてないけど…。でも、ちゃんと伝えられて良かったな。)
私と亮太くんはエレベーターに乗って3階に戻った。部屋に静かに入ると、優香と田中くんが気持ちよさそうに眠っている姿が見えた。
「優香も田中くんもぐっすりだね。なんか可愛いな。」
私が呟くと、亮太くんはボソッと何か言った。私が「え?」と聞き返すと、亮太くんが布団の上に立っていた体勢を崩して壁に倒れた。
「あ…!」
私が支えようとすると、豆電気が消えて目の前が真っ暗になってしまった。
(え!?なんでなんで!?どうしよう…何も見えない!!!)
足元に何があるかも分からず、私はしゃがみ込んでゆっくりと歩いた。
「亮太くん…?亮太くん、大丈夫?怪我してない?」
私が小声で叫んでいると、何かが体にぶつかってきて私は布団に仰向け状態になった。
「ご、ごめん…壁にぶつかったら電気のスイッチ背中で押しちゃって…。」
私の目の前から亮太くんの声が聞こえる。かなり近くから聞こえてくる。私の心臓の高鳴りがだんだん大きくなっていく。
(え…うそでしょ!?亮太くんの顔が上にあるの!?覆いかぶさってるの!?やばいやばい、これはダメだ!何とかしないと!!!)
「あ、あのさ、とりあえず横に移動できる?」
私が片言の日本語で言うと、亮太くんは言われたとおりにしてくれた。私はホッとして胸を撫でおろす。
「佐藤さん…ここで寝ていいよ。歩くと転んだら危ないし。」
亮太くんが横から囁いてきた。私は我に返って「ここ亮太くんの布団だった!ごめん!」と謝った。私は人の布団で寝ようとしていたのだ。
「いいよ、全然。だって…また見れるんでしょ?」
「また…?何を?」
すると、亮太くんが声をさらに小さくして呟いた。
「えっと……寝顔だよ。佐藤さんの寝顔。」
(え?えええ!!!これこそ、本気の告白なんじゃ!?私の寝顔が…見たいの!?なんで!?それって私のことが好きだから…じゃないの?もしやこの流れで好きって言われるとか!?)
私はドキドキしながら亮太くんの方を向いた。暗くて彼の顔は全く見えない。
「おやすみなさい、佐藤さん。」
突然話を切り上げて亮太くんは布団に潜った。
(えー!!!告白されないんかーい!!!)
私は「うん…。」と頷いて、ゆっくりと目を閉じた。まだ胸の高鳴りが収まらなくて眠るまでに時間がかかりそうな予感がした。
つづく
亮太くんと華は微妙にすれ違っているような?そんな感じですかね(笑)
次回も乞うご期待です!ぜひご覧ください!
田中くんを鈴木くんと間違えて執筆していました、、最近直しました、混乱させてすみませんでした(;'∀')




