私たち、交わらないんです。(1)
佐藤華:どこにでもいる平凡な女子高校生。2年1組。いつもポニーテールをしていて身長は少し低め。部活は家庭調理部。成績も運動もまあまあ。なぜか亮太のことが気になっている。少女漫画をたくさん読んでいてロマンティックな展開をいつも期待している。
鈴木亮太:どこにでもいる平凡な男子高校生。2年1組。短髪で中肉中背の体格。部活はバスケ部だが、ベンチを温めている。成績も運動もまあまあ。
高橋優香:華の小学生からの幼馴染で親友。同じクラス。成績優秀だが、運動は苦手。部活は吹奏楽部。
田中遥人:亮太の小学生からの幼馴染で親友。同じクラス。運動は学年でもトップクラスだが、勉強は苦手。部活は野球部。
立石直哉:クラスのムードメーカー。お調子者男子軍団のリーダー的存在。
渡辺先生:2年1組の担任の先生。新人でもベテランでもない男性教師。
「みなさんは今日から高校2年生です。学校の中心的な存在ですね。中だるみしないで勉強も部活も気を引き締めていきましょう。」
渡辺先生が台本でも読んでいるかのように棒読みで言うと、彼は艶のある綺麗な短髪をポリポリ掻きながら話を続けた。
「ではでは早速、委員会決めをしましょうか。」
私がちらっと優香の方を見ると、彼女も私を見ている。私たちは目を合わせて小さくうなずいた。私と優香は一緒に図書委員会になることを決めていたのだ。
「学級委員…やりたい人!」
渡辺先生が声を張って聞いた。
「立石、やれよー!」
「やだよ、めんどくせえもん。」
お調子者の男子軍団が騒ぎ出す。女子は女子でみんな下を向いて俯いている。みんな面倒くさい役割は引き受けたくないみたいだ。
「えーっと、じゃあ後回しね。保健委員会はー?」
学級委員会以外は順調に決まっていく。私はちらっと斜め前の席の男の子を盗み見した。彼の名前は鈴木亮太。彼とは1年生でも同じクラスだったが、話したのは片手に収まるくらいの回数だ。席が隣になった時とグループ活動をした時…あとは文化祭とか学校行事の時だったかな。
それでも私は亮太くんのことが少し気になっている。
彼は本当にどこからどう見ても、どこにでもいる男子高校生って感じの人。
顔立ちはイケメンでもなくかっこ悪いわけでもない中間だし、体格は中肉中背だし。声は低いけどイケボではないし、勉強も運動もまあまあそれなりにって感じだ。何か目立つことをしてるわけでもない。部活はバスケ部だけど、いつもベンチを温めているみたいだし。
それなのになんで私は彼が気になってるんだろう。彼の何とも言えない雰囲気だろうか。イマイチよく分からない。
「あと残ってるのは緑化委員会と図書委員会、学級委員会だね。」
もしかして!?
私はハッとした。今残ってるのは、私と優香と亮太くんの親友の田中遥人くん、お調子者の立石くんに、初めて同じクラスになった沢田くん…そして、亮太くんの6人。
(待って、これはもしかして私と亮太くんがじゃんけんに負けて偶発的に同じ委員会になってしまい、そこから恋が始まる展開ではないか!?!?この3つの中だと…学級委員になっちゃったりして!?)
私はごくりと唾を飲み込んだ。
「はーい、じゃあ緑化委員会!」
すぐに周りを見渡すと、手を挙げているのは亮太くんと遥人くんの2人だった。
(…え!?うそでしょ!?)
私は思わず心の中でズコーっと大きくずっこけた。
(なんで亮太くん決まっちゃうんだよー!私と2人になるんじゃなかったのかい!)
「はい、じゃあ図書委員会!」
残ってる4人が手を挙げた。ここでじゃんけんしても私には何のトキメキもない。もうこうなったら絶対に優香と一緒になりたい!
優香とじゃんけんの口裏を合わせられないまま、4人で勝負することになった。
「最初はグー、じゃんけんぽん!」
私はグー、立石くんはグー、沢田くんはパー、優香はパー。
私と優香は思わず身体を固めてしまった。優香も私も気まずくて苦笑するしかない。
「はい、じゃあね、佐藤さんと立石さんが学級委員で沢田さんと高橋さんが図書委員ね。みなさんこれから頑張ってくださいね。」
渡辺先生はけだるく言いながら黒板に名前を書いてしまった。「うわー学級委員めんどくせえ!」と立石くんが叫ぶとクラスでどっと笑いが起こった。
(よりによってお調子者の男子と学級委員だなんて…。)
私は1人肩を落とした。こんなの全然少女漫画のシナリオじゃない。いや、でもこういう時に亮太くんが私を見つめてたりして!?
期待を込めて斜め前の席を見てみると…。私は目を丸くした。
彼は頭を上下にかくかく動かして眠かけしていたのだ!
(えー!こんなにクラスが盛り上がってる時に寝る!?)
私が1人で衝撃を受けていると、いつの間にか渡辺先生に名前を呼ばれていた。
「佐藤さんー!これから終わりの挨拶は佐藤さんがしてね。はい、じゃあ挨拶。」
私は自分が学級委員なんだとようやく実感した。
「起立、注目!礼。」
「うわー、私もグー出せば良かったな。華と一緒になりたかったよ。」
優香が眉毛をハの字にしたが、私は図書委員になった彼女が羨ましかった。
「そうだね…それに私なんてまさかの学級委員だよ。」
「学級委員か、しかも立石くんとね。あんまり仕事しなさそうだよね。」
立石くんとは去年も同じクラスだったけど…悪い印象しかない。
「あのさ。」
後ろからボソッとした声が聞こえた。立石くんだろうか。
「何?立石くん。」
振り向くと、そこに立石くんはいなかった。
(ええ!?なんでこのタイミングで!?)
そこに立っていたのはなんと亮太くんだったのだ!亮太くんは固まっている私を不思議そうに眺めている。隣にいる優香も目を丸くして彼を見ていた。私は慌てて口を開く。
「あ、あのう…ごめんね。立石くんだと思っちゃって…どうしたの?」
「ゴミ、付いてるよ。」
「…え?ゴミ?」
私が頬に手をやると、彼は首を横に振った。
「後ろの髪に付いてる。」
それを聞くと、優香が私の後ろに立ってくれた。彼女は私の髪を触って、髪に付いていた糸くずを見せてくれた。私は彼女にお礼を言った後、亮太くんの方に向き直った。
「ありがとう、教えてくれて。」
「うん。」
無表情のままそれだけ言うと、彼は廊下に出て行ってしまった。私は優香と目を合わせて苦笑いするしかなかった。
「びっくりしたね。でも、ゴミ付いてるの教えてくれるの優しいよね、亮太くん。」
「た…たしかにそうだね。」
(ゴミ付いてる人ってすごい印象悪いよね。全然恋の始まりっぽくないわ…。)
私が肩を落として自分の席に戻ると、今度こそ立石くんが私の机にやって来た。
「ねえねえ。佐藤さんさ、次の学級委員会出れる?」
「…うん、来週の月曜日だよね。出れるよ。」
彼は嘘っぽく手を合わせて「ごめん!俺出れないからよろしく!」と頭を下げてきた。委員会って2人で出席するものじゃないのかと思いながらも私は頷いてしまった。彼は「あざっす!」と言って気分よさげに自分の椅子に戻った。こうやってこれから私1人だけで学級委員の仕事をやらないといけなくなるような予感がして嫌な気分になる。
気付くと、もう次の授業が始まる時間になっていた。斜め前に目を向けると、いつの間にか亮太くんも席に座っていた。すると渡辺先生が教室に入ってきて、すぐに話し始めた。
「はい、じゃあ今度はあと1か月後に迫った修学旅行の班決めをしていきましょう。」
(もしかして修学旅行で亮太くんと同じ班になって恋が始まっちゃう感じかな!?うわーもうめっちゃ最高じゃん!)
私はその言葉に心の中でガッツポーズした。
つづく
次回も乞うご期待です!ぜひご覧くださいな~♡




