表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

夫に浮気されたので、慰謝料代わりに夫がコレクションしていた家宝の魔剣を全部リサイクルショップに売りました。

作者: 四宮 あおい

 王都に夜の帳が下り、ミュラー公爵邸の広間は、幾百もの魔光石のランプに照らされて、昼間よりもなお明るく輝いていた。壁という壁には豪奢なタペストリーが飾られ、大理石の床は磨き抜かれて、着飾った貴族たちの姿を鏡のように映し出している。


 今宵は、この屋敷の女主人、フリーダ・フォン・ミュラーの二十五歳の誕生日を祝う夜会。しかし、その主役であるはずのフリーダは、喧騒の中心から少し離れた窓際でひっそりと息を潜めるように佇んでいた。


 落ち着いた亜麻色の髪を結い上げ、今日の日のために誂えられた翠色のドレスは、彼女の瞳の色と見事に調和している。だが、その穏やかな翠色の瞳には、拭いがたい憂いの色が浮かんでいた。


「まあ、ミュラー公爵夫人。今宵の主役がそのような場所にいらしては、もったいないですわ」


 声をかけてきたのは、派手な装飾の扇で口元を隠した侯爵夫人だった。その言葉は気遣うようでいて、好奇の色を隠そうともしない。


「ええ、少し……、外の空気が恋しくなりまして」


 フリーダは努めて穏やかに微笑み、柔らかい口調で返事をした。しかし、彼女の視線は、招待客で埋め尽くされた広間を彷徨い、あるべきはずの姿を探している。


 夫であるテオドル・フォン・ミュラー。輝く金髪と彫刻のように整った顔立ちを持つ彼は、どこにいても人の目を惹く。だというのに、夜会が始まってから二時間が経とうとする今も、その姿はどこにも見当たらなかった。


「公爵様は、まだお見えにならないのですね。きっと、愛する奥様のために、特別な贈り物を探し回っていらっしゃるのかしら」


 侯爵夫人の言葉は、フリーダの胸をちくりと刺した。周囲の貴族たちも、遠巻きにこちらを窺い、ひそひそと囁き合っているのがわかる。

「またか」「あのお方とご一緒なのでは」「おいたわしい」

 そんな声が、幻聴のように耳に届く。


 ――あのお方。

 燃えるような赤髪を持つ、リア・フォン・ヴァレンシュタイン子爵令嬢。夫が長年懇意にし、そのあけすけな媚態が社交界の噂の種になっている女性だ。


 フリーダは、こみ上げる不快感を悟られぬよう、侍女に合図してその場をそっと離れた。向かった先のテラスは、夜風が心地よく、火照った頬を冷ましてくれる。しかし、心のざわめきは一向に収まらなかった。


 夜会が終わるまで、あと一時間。これ以上、招待客の同情と好奇の視線に晒されるのは耐えがたかった。

 フリーダは誰にも告げず、夜会の喧騒を背にして、屋敷の廊下を歩き始めた。

 夫の書斎にいるのかもしれない。あるいは、急な来客だろうか。小さな希望にすがりながら、静まり返った廊下を進む。


 だが、彼女の足が止まったのは、庭園の奥にひっそりと佇む離れの、その手前だった。窓から漏れる微かな灯りと、聞き慣れた男の声。

 そして、甘ったるく絡みつくような女の声。


「テオドル様ぁ、もう宜しいではございませんか。あんな地味な女の誕生会など、すっぽかしてしまっても」


「ふん、あれは家のための飾りに過ぎん。体面さえ保てれば、それでいい」


 それは、紛れもなく夫テオドルと、リアだった。


「ひどいですわぁ、わたくしというものがありながら。……でも、そんな強引なテオドル様が、好き」


「お前のような女が、俺の隣に立つべきなのだ。あの女には、ミュラー公爵夫人の華やかさというものが欠片もない」


 氷の矢が、一本、また一本と、フリーダの心臓に突き刺さる。足が震え、呼吸が浅くなる。それでも彼女は、まるで何かに引き寄せられるかのように、ゆっくりと扉を開けた。


「……あなた」


 部屋の中では、乱れたドレス姿のリアが、テオドルの膝の上で喉を鳴らす猫のように媚びていた。フリーダの姿を認めると、二人は一瞬目を見開いたが、テオドルのサファイアの瞳はすぐに冷たい光を宿した。


「なんだ、フリーダ。無断で入ってくるとは、礼儀がなっていないぞ」


 開き直った夫の尊大な態度に、フリーダは言葉を失った。リアは勝ち誇ったように唇の端を吊り上げ、テオドルの腕にさらにしなだれかかる。


「私の……、誕生日ですのよ。なぜ、ここに……」


「ああ、そうだったな。だが、見ての通りだ。俺はリアといる方が楽しい」


「……っ」


フリーダは唇を噛みしめた。穏やかな翠色の瞳が、悲しみと絶望に揺れる。


「離婚、していただきますわ」


 かろうじて絞り出した声は、自分でも驚くほど震えていた。しかし、テオドルはその悲痛な訴えを鼻で笑い飛ばす。


「離婚? 結構だ。もとより、お前にはうんざりしていたところだ」


「……!」


「お前はただ、家のための飾りとして、そこにいればよかった。それ以上の役割など、最初から期待していない」


 冷酷な言葉が、氷の刃のようにフリーダの胸を抉る。しかし、このまま一方的に尊厳を踏みにじられてたまるものか。震える唇を必死に動かし、最後の力を振り絞って彼を見据えた。


「飾り……。承知いたしました。ですが、離縁するにあたり、相応の慰謝料は請求させていただきます」


 妻としての当然の権利を口にすると、テオドルは心底おかしいというように肩を揺らした。隣に立つ妖艶な女も、あからさまな嘲笑を唇に浮かべている。


「慰謝料だと? 寝言は寝て言え。そもそも、伯爵家のお前がこの公爵家に嫁げただけでも、どれほど名誉なことだったか。お前のような女に慰謝料など払う価値もない。一銭たりとも、くれてやるものか」


 侮辱の言葉が、フリーダの心を完全に凍てつかせた。涙さえ、もう流れなかった。ただ、目の前で自分を見下す夫と、嘲笑を浮かべる女の姿が、焼き付くように網膜に映っていた。


 フリーダは踵を返し、ふらつく足で離れを後にした。どこをどう歩いたのか、気づけば彼女は、テオドルが書斎の奥に設けた、魔剣のコレクションルームの前に立っていた。

 彼が権威の象徴として、何よりも大事にしている場所。来月の建国記念祭で、王家に献上する至宝も含まれていると豪語していた。


 ゆっくりと重い扉を開けると、壁一面に飾られた魔剣たちが、静かな光を放っていた。銀色に輝く片手剣、光さえ吸い込むような漆黒の両手剣、精緻な装飾が施された短剣の数々……。

 テオドルはこれを眺めながら酒を飲むのが好きだった。一本一本の由来を語る彼の目は、フリーダに向ける時とは比べ物にならないほど情熱的だった。


 ――家のための飾り。

 ――慰謝料など払う価値もない。


 夫の声が、頭の中で反響する。


 フリーダは、虚ろな目で魔剣たちを見つめた。冷たい鉄の塊のはずなのに、なぜか、じっとこちらを見つめ返されているような、不思議な感覚に陥る。


 悲しみの底で、ふつふつと、静かな怒りが溶岩のように湧き上がってきた。


 慰謝料の価値すらない、ただの飾り。


 ならば、私なりのやり方で、その「価値」を頂いていこう。


 テオドルが命より大事にし、その権威の全てを依存している、この家宝の魔剣たち。


「……全部、売ってしまおう」


 誰に聞かせるでもなく、そう呟いた。


 常識外れの復讐計画が、静かに産声を上げた瞬間だった。

 凍てついた心の奥で、確かな決意の炎が灯る。もう、控えめで地味な令嬢はどこにもいなかった。

 そこにいたのは、冷たい決意に燃える、一人の女性だった。



 ~~~ 



 ミュラー公爵家の威容を誇る屋敷が、まだ夜の静寂に深く沈んでいる頃。

 フリーダは、たった一人、息を殺して闇の中を動いていた。侍女を起こさず、物音ひとつ立てぬよう、ベルベットのスリッパが分厚い絨毯の上を滑る。

 昨夜流した涙はとうに枯れ果て、翠色の瞳には、夜明け前の空のような冷たく澄んだ光が宿っていた。


 向かう先は、夫テオドルが書斎の奥に設えたコレクションルーム。彼が自身の権威そのものと豪語する、家宝の魔剣たちが眠る聖域だ。

 フリーダは夫が不在の隙に侍従長からそっと借り受けた合鍵を、震える手で鍵穴に差し込んだ。重々しい金属音を極力殺して扉を開くと、ひやりとした空気と共に、濃密な魔力の匂いが肌を撫でた。


 壁一面に掛けられた魔剣の数々。

 豪奢な装飾が施されたもの、禍々しいオーラを放つもの、古びていながらも確かな力を感じさせるもの。

 テオドルが夜毎、ワイングラスを片手に悦に入りながら眺めていた光景だ。彼はこの剣たちを、ただの美しい飾り物、己の価値を高めるための道具としか見ていなかった。


(けれど、あなたたちは違うのでしょう?)


 フリーダはそっと、銀色に輝く美しい片手剣に指先で触れた。その瞬間、脳内に直接、賑やかな声が微かに響いた気がした。気のせいかと首を振ったが、その剣から伝わる微かな温もりが、まるで生きているかのように感じられた。


「……一緒に行きましょう。あなたたちを、ただの飾りになんてさせないから」


 決意を新たに、フリーダは行動を開始した。一本、また一本と、壁にかかる魔剣を丁寧に取り外し、あらかじめ用意していた厚手の布で丁寧に、しかし素早く包んでいく。一本一本がずしりと重い。

 貴族令嬢として育った彼女の腕には堪えたが、心の奥で燃え盛る怒りが、不思議と力を与えてくれた。


 特に、部屋の中央に安置された漆黒の両手剣は、見た目以上に重く、触れただけで魂が吸い取られるような凄まじい威圧感を放っていた。

 テオドルですら軽々しく触れることを許されなかったミュラー家最強の至宝。フリーダは一瞬怯んだが、意を決してその柄を握る。拒絶されるかと思ったが、剣はただ静かに、その身を彼女に委ねた。


 夜明けまで時間がない。全ての魔剣を布で包み終えると、フリーダは厨房脇の勝手口から、使用人たちの荷物を運び込むための古い荷馬車へと、何度も往復して運び出した。心臓は早鐘のように打ち、誰かに見つかるのではないかと、物音がするたびに体が強張る。

 だが、不思議と屋敷の者たちと鉢合わせることはなかった。まるで、この剣たちが自ら気配を消し、彼女の脱走を助けてくれているかのようだった。


 荷台を幌で覆い隠し、手綱を握る。乗馬は淑女の嗜みとして習ってはいたが、荷馬車を御すのは初めての経験だった。ぎこちない手つきで馬を促し、公爵家の壮麗な門を静かに抜ける。

 貴族たちが住まう壮麗な街並みを背に、フリーダは王都のはずれ、冒険者や職人たちが暮らす雑然とした地区へと馬を進めた。


 目指すは、城壁にほど近い裏通りにひっそりと佇む、一軒の中古装備リサイクルショップ。「わけあり道具店リカルメ」と書かれた古びた看板が、夜明け前の薄闇に浮かび上がっている。

 ここならば、曰く付きの品でも正当に価値を判断し、秘密厳守で買い取ってくれるとの噂を思い出したのだ。


 店の前に馬車を止め、震える指で木の扉を叩く。

 しばらくの沈黙の後、内側から閂を外す音がして、無愛想な顔つきの男が姿を現した。無造作な黒髪に無精髭。年の頃は三十代半ばだろうか。革のエプロンをつけた長身の体は、寝起きとは思えないほど引き締まっている。


「……朝っぱらから何の用だ。開店はまだ先だぞ」


 ぶっきらぼうな声。しかし、その男、――マサルは、フリーダの身なりと、その背後にある荷馬車の異様な雰囲気を見て、わずかに眉をひそめた。


「……夜分に、いえ、早朝に申し訳ありませんわ。どうしても、お願いしたいことがありまして」


 フリーダは貴族令嬢としての礼儀作法に則り、深く淑女の礼をした。しかし、その声は凛として、揺るぎない覚悟を宿していた。


「こちらにあるものを、すべて買い取っていただきたいのです。……言い値で」


 マサルの目が鋭くなる。彼はフリーダを値踏みするように一瞥し、それから荷馬車の幌へと視線を移した。


「……荷を見せろ」


 フリーダが頷き、幌をまくると、朝日を受け始めた往来に、濃密すぎる魔力のオーラが溢れ出した。

 マサルは息を呑んだ。荷台に無造作に積まれているのは、素人が見てもわかる一級品、いや、伝説級の魔剣の山。その中には、歴史書でしか見たことのない、国家クラスの至宝までが混じっている。


「あんた、正気か……?」


 マサルの額に汗が滲む。これだけの品々、そのどれもが王侯貴族や伝説の冒険者が血眼になって求めるものだ。それがなぜ、こんな場所に、一人の貴婦人の手によって運ばれてきたのか。


「事情は、お話しできません。ただ、私にはこれらを現金に換える理由がございます。秘密は厳守していただけると……、伺っておりますわ」


 フリーダの翠色の瞳が、真っ直ぐにマサルを射抜く。その瞳の奥にある、深い絶望と、それを乗り越えようとする灼けつくような決意の色を、マサルは見逃さなかった。彼は、かつて幾多の戦場や迷宮で、死線を共にした仲間たちと同じ種類の光を、目の前の気高い女性の中に見出していた。


 マサルは大きなため息を一つつき、ガシガシと頭を掻いた。


「……面倒ごとの匂いしかしねえな」


 そう毒づきながらも、彼の口元には、困ったような、それでいてどこか面白がるような笑みが浮かんでいた。


「……いいだろう。店に入れ。話は中で聞く」


 マサルが店の扉を大きく開け放つ。店内に足を踏み入れたフリーダを、埃とオイルと、そして無数の魔道具が放つ独特の匂いが包み込んだ。

 それは、彼女がこれまで生きてきた華やかな世界とは全く違う、荒々しくも不思議な魅力に満ちた匂いだった。


 マサルは無言で荷台から魔剣を一本一本運び入れ、鑑定用の台に並べていく。その手つきは驚くほど丁寧で、まるで長年連れ添った友に触れるかのように優しい。


「……『おしゃべりカリバーン』に、『吸血のダインスレイフ』……。おいおい、こいつはミュラー公爵家秘蔵の『終焉のグラム』じゃねえか。国宝どころの話じゃねえぞ…」


 マサルの呟きに、フリーダは驚きつつも毅然と告げた。


「すべて、私が所有権を持つものですわ。慰謝料として、正当に受け取りましたので」


 その言葉に含まれた痛みを察し、マサルはそれ以上何も聞かなかった。彼は全ての魔剣の鑑定を終えると、羊皮紙に震えるような額を書きつけ、フリーダに差し出した。常識では考えられない、小国の一つや二つは買えてしまいそうなほどの金額だった。


「……これでいいか」


「はい。……感謝いたしますわ、店主様」


「マサルでいい。……それで、あんたはこれからどうするんだ。こんな大金、ただの貴族の嬢ちゃんが持っていたら、一日で命がなくなるぞ」


 マサルの問いに、フリーダは一瞬、言葉に詰まった。復讐を果たすことしか考えていなかった。その先のことは、何も。


その戸惑いを見透かしたように、マサルは言った。


「……行くあてがないなら、しばらくここにいるか? 空き部屋くらいならある。今し方大金が出ていったところだから、宿代はきっちりもらうがな」


 ぶっきらぼうな口調に隠された、不器用な優しさ。フリーダの瞳に、再び涙が滲んだ。だがそれは、昨夜流した絶望の涙ではなかった。


「……お世話になりますわ、マサル様。一度……、為すべきことを終えたら、また戻ってまいります」


 こうして、公爵夫人フリーダの大脱走と、常識外れの復讐劇の第一幕は、王都のはずれの小さなリサイクルショップで、静かに終わりを告げた。



 ~~~ 



 夜の甘い香りをまだその身にまとわせたまま、テオドル・フォン・ミュラー公爵が自邸の壮麗な扉をくぐったのは、朝日が王都の尖塔を黄金色に染め上げる頃だった。

 昨夜のリアの悩ましげな吐息と、自分の権勢に酔いしれる子爵令嬢の眼差しを思い出し、テオドルの口元には自然と傲慢な笑みが浮かぶ。


「フリーダの奴は、今頃どのような顔でいることか。公爵夫人という地位を与えてやっているだけでも、感謝すべきだというのに」


 あの地味で面白みのない妻のことだ。きっと昨夜も一人、寂しく誕生日を祝ったに違いない。せいぜい悲劇のヒロイン気取りで涙でも流しているのがお似合いだ。テオドルはそんな想像をして、鼻で笑った。


 まずは、我が愛しのコレクションに挨拶をしなくてはな。テオドルは上機嫌で、屋敷の最奥にある宝物庫、彼が「魔剣の間」と呼ぶ特別な一室へと向かった。

 ミュラー公爵家が代々受け継いできた至宝の数々。それらはテオドルにとって、自身の権威と力を何よりも雄弁に物語る、美しき僕たちだった。


「さあ、今日も俺様のために輝いているか?」


 分厚く、魔法的な防護が幾重にも施された扉を開ける。いつものように、ずらりと並んだ魔剣たちが放つ荘厳なオーラが彼を迎えるはずだった。


 しかし。


 テオドルの目に飛び込んできたのは、信じがたい光景だった。


 がらん、としていた。


 壁一面を埋め尽くしていたはずの陳列棚は、ことごとく空っぽだった。かつて伝説の魔剣たちが鎮座していたビロードの台座が、今はただ虚しく並んでいるだけ。照明の魔道具の光が、埃一つない床に反射して、その空間の虚無感をいや増しにしていた。


「……は?」


 テオドルは一瞬、何が起きているのか理解できなかった。悪い夢でも見ているのか。あるいは、昨夜のワインがまだ残っているのか。

 彼は数度、強く瞬きをし、己の頬を抓ってみる。痛みだけが、これが現実であることを無慈悲に告げていた。


「な……、なんだ、これは……? どこへ行った? 俺の魔剣たちが……!」


 おしゃべりカリバーンが。月光を浴びて輝くムーンライトソードが。吸血のダインスレイフが。そして、我がミュラー家最強の至宝、終焉のグラムまでもが。一つ残らず、影も形もなくなっていた。


 テオドルの背筋を、氷のように冷たい汗が流れ落ちた。彼の思考が、ようやく最悪の可能性へとたどり着く。


「そうだ……、建国記念祭……!」


 あと半月もすれば、王国の建国記念日を祝う盛大な祭りが開かれる。その席で、ミュラー公爵家は代々、家宝の魔剣を国王に献上し、その忠誠と武威を示すのが慣わしだった。

 今年の献上品として、テオドルはコレクションの中でも特に見栄えのする数本を、王家に献上すると約束してしまっている。

 彼にとって魔剣は家の格を示すための道具に過ぎない。だが、その道具がなければ、公爵家の威信は地に堕ちる。


「家宝を管理できぬ公爵。王家への誓いを違える不忠者。……そうなれば、我が家は終わりだ……!」


 貴族社会からの嘲笑、政敵からの攻撃、そして王家からの懲罰。

 破滅への道筋が、鮮明に脳裏を駆け巡る。血の気が引き、全身がわななく震え始めた。


 誰が。一体、誰がこんなことを。

 厳重な警備を潜り抜け、魔法の防護を破り、これだけの魔剣を運び出すなど、並大抵の賊にできることではない。国家ぐるみの陰謀か? それとも、伝説級の盗賊団か?


 いや、違う。


 テオドルの脳裏に、昨夜の妻の顔が浮かんだ。侮辱され、絶望の淵に沈みながらも、その翠色の瞳の奥に、凍てつくような静かな光を宿していた、あの顔が。


「フ……、リーダ……ッ!」


 テオドルの顔が、蒼白から憤怒の赤黒い色へと変わった。喉の奥から獣のような咆哮が迸る。彼は踵を返し、宝物庫を飛び出すと、すれ違う使用人たちを怒鳴りつけながら玄関ホールへと向かった。


「フリーダはどこだ! あの女を俺の前に連れてこい!」


「お、奥様でしたら、今朝早くに荷馬車で実家へ戻られましたが……」


 侍従の言葉を聞き終える前に、テオドルは馬を駆って公爵邸を飛び出していた。行き先は一つ。フリーダの実家、ミュラー公爵家から見れば格下の伯爵家だ。


 伯爵家の門を乱暴に突破し、玄関前で馬から転げ落ちるように降り立つ。テオドルのただならぬ様子に、出迎えた伯爵家の執事は言葉を失った。


「フリーダを出せ! 今すぐだ!」


 案内も待たずに、彼は応接室へと乗り込んだ。そこには、旅支度を解いたばかりのような、しかし落ち着き払った様子のフリーダが、一人静かに座っていた。


「テオドル様。そのような格好で乗り込んでいらっしゃるとは、公爵家の品位が疑われますわ」


 彼女の口調は、以前と何も変わらない。丁寧で、物腰の柔らかい貴族女性のそれだ。だが、その声には、かつての頼りなげな響きはなく、鋼のように強く、凛とした芯が通っていた。

 その揺るぎない様に、テオドルは一瞬、気圧される。


しかし、すぐに怒りが再燃した。


「貴様ッ! よくも……! 俺の魔剣をどこへやった! 白状しろ!」


 テオドルはテーブルを拳で叩きつけ、怒鳴りつけた。

 しかし、フリーダは眉一つ動かさない。

 彼女はゆっくりと立ち上がると、テオドルを真っ直ぐに見据えた。

 その翠色の瞳は、深く、静かで、もはや彼への侮蔑さえ浮かんでいなかった。ただ、事実を告げるだけの、無感情な色をしていた。


「テオドル様。わたくしは、本日をもってあなたとの婚姻関係を解消させていただきます」


「な……、何を馬鹿なことを……」


「そして、あなたがおっしゃった通り、わたくしには慰謝料を受け取る価値もないようですので」


 フリーダはそこで、ふっと息を吸った。その唇から紡がれた言葉は、テオドルの脳天を直撃する雷鳴となった。


「慰謝料の代わりに、あなたの『家のための飾り』は、わたくしがすべて処分させていただきましたわ。ええ、中古装備を扱うリサイクルショップに、すべて売却いたしましたの」


「…………は?」


 テオドルの思考が、完全に停止した。売った? リサイクルショップに? あの、国宝級の至宝を? 建国記念祭で献上する、ミュラー家の命運がかかった魔剣を? 冗談だ。そんなことがあるはずがない。


「お前のような女が……! そんなことができるはずがないだろうが!」


「ええ、できましたわ。あなたがわたくしを『飾り』としか見ていない間に。あなたが、愛人の元で夜を明かしている間に」


 フリーダは、もはや夫ではない男に、最後の言葉を告げた。


「あの魔剣たちは、あなたのような方を主と仰ぐにはあまりに気高い存在です。もっとご自身を大切にしてくださる方の元へ行くべきですわ。それが、あの方々にとっての幸せでしょう」


 さようなら、ミュラー公爵。フリーダはそう言って、小さく頭を下げた。その姿は、まるで長年の呪縛から解き放たれたかのように、晴れやかでさえあった。


 フリーダは用意させておいた質素な荷物を手に取ると、誰にも見送られることなく伯爵家を後にした。


 テオドルは、ただ愕然と立ち尽くすことしかできなかった。怒りも、屈辱も、焦りも、すべてが巨大な絶望の塊となって彼を呑み込んでいく。

 空っぽの陳列棚と、妻の冷たい決意。すべてを失った公爵の、破滅の足音が、静かな応接室に確かに響き渡っていた。



 ~~~ 



 リカルメの古びた扉が、ここ数日、かつてないほど頻繁に軋んだ音を立てていた。

 テオドル・フォン・ミュラー公爵が血眼になって探している家宝の魔剣たちが、その価値を知る者、あるいはその輝きに純粋に魅せられた者たちの手に、驚くべき速さで渡っていったからだ。


「店主、こいつは面白いな! なんだか手に馴染むぜ」


 陽気な冒険者が、柄に青い宝玉が埋め込まれた片手剣を手に取った。フリーダが屋敷から運び出した際、賑やかな声が響いた気がした、あの魔剣である。


「そいつは『おしゃべりカリバーン』。口は悪いが、物は確かだそうだ」


 マサルがぶっきらぼうに答えると、剣の柄頭の宝玉がチカッと強く光った気がした。


 冒険者は

「口が悪い剣だと? そいつは愉快だ!」

 と笑い、銀貨の詰まった袋をカウンターに置いた。


 こうして、ミュラー公爵家のコレクションの一つは、新たな主を得て再び世に放たれた。


 それが、王都を揺るがす噂の震源地となることを、この時のマサルはまだ知らない。フリーダは店の奥で息を潜め、自分の起こした行動がどんな波紋を広げているのか、ただ静かに見守るしかなかった。


 〜〜〜 


 噂の始まりは、冒険者たちが集う酒場だった。


「聞いてくれよ! 俺の新しい相棒が、とんでもない秘密を教えてくれたんだぜ!」


 おしゃべりカリバーンを手に入れた冒険者、赤髭のアーサーが、エールを片手に大声で自慢していた。


 仲間たちが

「剣が喋るなんざ、酔ってるのか?」

 とからかうと、アーサーの腰の剣がカシャリと揺れ、宝玉を明滅させる。


「本当なんだぜ! 前の主人のテオドル様は、そりゃあ見事な金髪だったが、中身はからっきしでな!」


 まるで腹話術のように、剣から直接、甲高い声が響き渡った。酒場は一瞬で静まり返る。


「俺様みたいな一級品の魔剣をただの飾りとしか見ないし、何より、妻の誕生日の夜会をすっぽかして、燃えるような髪の女とよろしくやってたんだぜ! それを奥様に見つかった時の言い訳がまた傑作でな、「お前は家のための飾りだ」って言ったんだ! ひどい話だろ!?」


 酒場は、先程とは違う意味で騒然となった。ミュラー公爵のスキャンダル。しかも、その暴露元は公爵家が秘蔵していた魔剣そのものだというのだから、信憑性は抜群だった。


 この一件を皮切りに、噂は驚くべき速度で王都を駆け巡った。


 鍛冶職人の工房では、新しく持ち込まれた魔剣が

「テオドル様は鑑定眼がなくてな。俺の本当の価値も分かっていなかった」

 とぼやき、貴族御用達の高級武具店に買われた儀礼剣は、その美しい刀身で溜息をつきながら

「テオドル様は、フリーダ様の淹れた紅茶より、リア様の注ぐ安物の葡萄酒を好むお方でした……」

 と物悲しげに語った。


 噂は下町のゴシップから、次第に貴族たちのサロンで囁かれる嘲笑へと変わっていった。

 テオドルが魔剣を権威の象徴として見せびらかしていた相手ほど、その裏切りと愚かさを面白おかしく語り、彼を見る目は日に日に冷たくなっていった。


 〜〜〜 


「馬鹿な! 下賤の者たちの戯言を真に受けるな!」


 当初、テオドルは側近からの報告を一笑に付していた。プライドの高い彼にとって、庶民の噂など意に介する価値もない。

 フリーダが売ったという魔剣も、金に物を言わせて買い戻せば済む話だと、相変わらず短絡的に考えていた。


 しかし、事態は彼の想像を遥かに超えて悪化していく。長年付き合いのあった商会から「公爵閣下との取引は、しばし様子を見させていただきたい」と丁重ながらも明確な拒絶の連絡が入り、予定されていた夜会への招待が次々と取り消された。

 彼の権威は、彼が「飾り」と蔑んだ魔剣たちによって、根底から揺るがされ始めていたのだ。


「一体どうなっている!? 噂の出所を叩き潰せ!」


 苛立ちを募らせたテオドルは騎士たちに命じるが、命令は空回りするばかりだった。

 なにせ、噂を流しているのは特定の人間ではない。王都のあちこちに散った魔剣たちなのだから。犯人の見つからないまま、テオドル・フォン・ミュラーの評判は、まるで沼に沈む石のように、ただひたすらに落ちていった。


「テオドル様、一体どうなさるおつもりですの? わたくしまで笑いものにされておりますのよ」


 愛人であるリアからの突き刺すような言葉が、彼の焦燥にさらに拍車をかけた。


 〜〜〜 


 一方、フリーダはリカルメの屋根裏部屋で、静かな、しかし決して安穏ではない日々を送っていた。マサルは彼女の事情を深くは聞かず、ただ居場所と温かい食事を提供してくれた。


「……外は、大変なことになっているようですわね」


 マサルが運んできたスープを口にしながら、フリーダはぽつりと呟いた。

 彼女の復讐は、思った以上の効果を上げていた。いや、効果を上げすぎていた。夫への怒りと、彼の破滅を望んだはずの自分。それなのに、日に日にやつれていくというテオドルの噂を聞くたびに、胸の奥がちくりと痛むのを止められなかった。


「あんたが気にするこっちゃない。奴が自分で蒔いた種だ」


 マサルは相変わらずぶっきらぼうに言うと、空になった皿を片付けようとした。

 その時、店先に置かれていた、誰も買い手のつかなかった錆びた短剣が、カタリと微かな音を立てた。まるで、フリーダの憂いに応えるかのように。


 マサルはその変化を見逃さなかった。

 彼は以前から気づいていた。フリーダが近くにいると、店の魔道具たちがどこか機嫌よさげに、その魔力を揺らめかせることに。

 彼女には、魔剣や魔道具に好かれる、何か特別な才能があるのかもしれない。それは、テオドルが決して持ち得なかった、真の価値を見抜く力に繋がるものかもしれない。


「明日からでも、店に出てみないか。あんたなら、こいつらをなだめすかすことができるかもしれん」


 マサルの言葉に、フリーダは伏せていた顔を上げた。その翠色の瞳に、迷いの色が浮かんでいたが、やがて静かな決意の光が宿る。ただ逃げ、隠れるだけの日々はもう終わりだ。彼女は、自分の足で、新たな人生を歩き出すことを決意した。



 ~~~ 



 ミュラー公爵邸の豪奢な寝台とは似ても似つかぬ、店の屋根裏部屋に設えられた硬いベッドの上で、フリーダは目を覚ました。

 窓から差し込む朝日は、かつて暮らした屋敷のそれよりもずっと率直に、埃の舞う様さえ映し出している。しかし、不思議と心は晴れやかだった。ここで迎える朝は、もう何度目になるだろうか。


「おはようございます、マサルさん」


 階下へ下りると、革のエプロンをつけたマサルが、すでにカウンターの内側で武骨な指を器用に動かし、傷ついた小手の修繕をしていた。


「……ああ」


 彼は顔も上げずに短く応えるだけだが、その声色に拒絶の色がないことを、フリーダはもう知っている。それが、この口数の少ない店主の常なのだ。


 フリーダのリカルメでの日々は、掃除と洗濯、そして魔道具の陳列整理から始まった。

 マサルが言った「宿代はもらう」という言葉は冗談ではなかった。彼はフリーダを客人ではなく、一人の働き手として扱った。

 貴族令嬢として生まれ、誰かに傅かれるのが当たり前だったフリーダにとって、自分の手で床を磨き、食事を作り、その対価として寝床と食事を得るという生活は、何もかもが初めての経験だった。


 最初は雑巾の絞り方一つ知らなかった。しかし、一度決めたらやり遂げるのがフリーダの性分だ。マサルのぶっきらぼうな指導を受けながら、一つ、また一つと仕事を覚えていく。その過程は、彼女の中に眠っていた何かを少しずつ解き放っていくようだった。


「フリーダ。そこの棚にある売れ残りのランタン、少し磨いておいてくれ」


 ある日の午後、マサルに言われて、フリーダは店の隅で埃をかぶっていた古い真鍮のランタンを手に取った。客に見向きもされず、ただ静かにそこにあるだけの魔道具。フリーダは柔らかい布で、そのくすんだ表面を丁寧に拭き始めた。すると、どうだろう。ランタンは心地よさそうに、ほのかな温かい光をチカチカと灯し始めたではないか。


「あら……?」


 驚いて手を止めると光は消え、再び磨き始めるとまた灯る。まるで、もっと撫でてほしいと強請る子猫のようだ。その様子に、フリーダの口元から自然と笑みがこぼれた。


「……おい」


 いつの間にか、マサルが背後に立ってその様子をじっと見ていた。彼の険しい表情の奥に、隠しきれない驚愕の色が浮かんでいる。


「お前、今、何をした?」


「何も……、ただ、磨いていただけですわ」


「そうか……」


 マサルは何かを確信したように頷くと、カウンターの奥から一つの指輪を持ってきた。何の変哲もない、石も嵌っていない銀の指輪だ。


「これに触れてみろ。何を感じるか、言ってみろ」


 言われるがまま、フリーダが指輪にそっと触れた瞬間、彼女の脳裏に映像が流れ込んできた。

 ――雪深い北の鉱山で掘り出され、一人の若いドワーフの職人が、恋人への贈りものとして必死に槌を振るう姿。

 完成した指輪は、しかし恋人の元へ届くことなく、持ち主を転々とし、やがてこの店に流れ着いた。込められた想いは守護。これを身に着けた者は、小さな幸運に恵まれる。


「……北の鉱山で、若いドワーフの職人さんが……、恋人のために……」


 フリーダが見えたままを口にすると、マサルの目が見開かれた。それは、彼自身が鑑定した内容と寸分違わぬものだったからだ。


「お前には……、才能がある」


 マサルは静かに、しかし確信を込めて言った。


「魔道具に愛され、その声を聞く才能だ」


 かつて、ミュラー公爵邸のコレクションルームで、魔剣たちに見つめ返されているような不思議な感覚を覚えたことがあった。あの感覚は、気のせいではなかったのだ。

 夫の裏切りによって全てを失ったと思っていた自分が、こんな稀有な才能を秘めていたとは。フリーダの翠色の瞳が、驚きと、そして新たな希望の光に潤んだ。


 その日を境に、マサルはフリーダに鑑定の基礎を教え始めた。

 魔力の流れの読み方、道具に込められた意志の感じ取り方。フリーダの吸収力は凄まじく、まるで乾いた大地が水を吸い込むようだった。

 世間知らずで控えめだった令嬢は、日に日に自信をつけ、その表情は洗練された輝きを放ち始めた。マサルは、そんな彼女の変化を、言葉には出さないものの、どこか眩しそうに、そして温かく見守っていた。初めて会った時に彼女の瞳の奥に見た、死線を共にした仲間たちと同じ種類の光が、今や確かな輝きとなって彼女自身を照らしているのを感じていた。


 二人の距離を縮めたのは、日々の仕事だけではなかった。


「マサルさん、お昼の準備ができましたわ」


 フリーダが台所から顔を出すと、マサルの眉がぴくりと動く。彼女が作るまかないは、今や店の裏名物となっていた。その立役者は、フリーダが台所で見つけた、美しい刃紋を持つ一本の万能包丁だった。


 初めてその包丁を握った時、フリーダの脳内に厳格な声が響き渡った。


「違う、火加減がなっておらん! そのジャガイモの切り方では、角が煮崩れるだろうが! もっと心を込めて切れ!」


 それはクッキングマスターと名乗る、頑固な料理職人のような魂を宿した包丁の魔剣だった。彼のスパルタ指導のおかげで、料理経験の乏しかったフリーダが作る料理は、日を追うごとにプロ顔負けの味になっていったのだ。


「今日のスープは絶品だな」


 スープを綺麗に飲み干すマサルの姿を見るのが、フリーダのささやかな喜びだった。彼が時折見せる、目尻に皺が寄る優しい笑顔に、フリーダは自分の胸が温かくなるのを感じていた。それは、夫テオドルに向けたことのある、義務感や見栄の混じった感情とは全く違う、純粋で穏やかな想いだった。


 街からは、今も噂が風に乗って聞こえてくる。おしゃべりカリバーンの大活躍により、テオドル・フォン・ミュラーの評判は地に落ち、貴族社会での信用を失いつつあるらしい。だが、その報を聞いても、フリーダの心はもう揺らがなかった。彼女の心は、過去への復讐ではなく、このリカルメでの未来と、隣にいる不愛想で優しい店主のことで満たされていた。


 夜の帳が下り、店じまいを終えたカウンターで、二人は並んで魔道具の手入れをするのが日課になっていた。カンテラの柔らかな光が、黙々と作業する二人の横顔を照らす。言葉はなくとも、そこには確かな信頼と、互いを想う温かい感情が通い合っていた。


 ここが、私の新しい居場所なのだ。


 フリーダは、自分の手で掴み取ったささやかな幸せを、そっと胸に抱きしめるのだった。



 ~~~ 



 一方その頃、ミュラー公爵邸の一室では、怒号と何かが砕け散る音が繰り返されていた。


「なぜだ! なぜ俺を認めん!」


 テオドル・フォン・ミュラーは、床に転がる銀の酒瓶を忌々しげに蹴り飛ばした。輝く金髪は乱れ、高級な仕立ての服には酒の染みができている。かつての彫刻のような面影はなく、焦燥と屈辱に歪んでいた。


 地に落ちた評判は、回復の兆しを見せなかった。街角の噂話、酒場の揶揄、貴族たちの侮蔑的な視線。

 それら全てが、おしゃべりな魔剣カリバーンがばら撒いた悪評から始まっていた。最初は「下賤の者たちの戯言」と歯牙にもかけなかったが、今やその戯言は王宮にまで届き、テオドルの立場を確実に蝕んでいた。


 建国記念祭の日は刻一刻と迫っている。ミュラー家が至宝を王家へ献上する、その日まで。


「魔剣は……、魔剣さえ取り戻せば……!」


 テオドルは密偵を放ち、フリーダが売り払った魔剣の幾つかの在り処を突き止めていた。持ち主となった冒険者や収集家に接触し、元の数倍、いや数十倍の金貨を積んで買い戻しを試みた。だが、結果は惨憺たるものだった。


 ある魔剣は、テオドルが手に取ろうとした瞬間にその輝きを失い、ただの鉄塊のように重くなった。別の魔剣は鞘から抜くことすらできず、頑なに彼を拒絶した。噂の元凶であるおしゃべりカリバーンに至っては、新しい主である陽気な剣士の腰でけたたましく叫んだという。


「うわっ、なんだいあんた! 前の主人じゃないか! 最低の浮気者! あんたみたいな傲慢な男のところに戻るくらいなら、自分で自分をへし折ってやるぜ!」


 その時の屈辱は、テオドルのプライドをずたずたに引き裂いた。金でも権力でも、魔剣の心を取り戻すことはできなかった。

 彼がただの権威の象徴としか見ていなかった魔剣たちが、明確な意志を持って彼を拒んでいる。その事実が、彼の焦りを底なしの沼へと引きずり込んでいった。


「テオドル様、いつまでこのような無様な真似を続けなさるおつもりですの?」


 追い打ちをかけるように現れたのは、浮気相手のリアだった。彼女の声は氷のように冷たく、かつての猫なで声の欠片もなかった。


「魔剣の一つも取り戻せず、街中の笑いものになって……。これでは、わたくしが公爵夫人になったところで、何の価値もございませんわ」


「黙れ! お前のような女に何がわかる!」


「あら、わかりますわよ。テオドル様には、もう価値がない、ということですわ」


 挑発的な紫の瞳が、テオドルを射抜く。その視線は、彼の最後の理性の糸を焼き切るのに十分だった。


「価値がないだと……? 俺が……、ミュラー公爵である俺が!」


 そうだ、とテオドルの脳裏に狂的な閃きが走った。他の雑多な魔剣などどうでもいい。

 ミュラー家の権威の真髄、最強の至宝である終焉のグラム。

 あれさえ取り戻せば、全てを覆せる。あれだけは、テオドル自身もその力を畏怖し、屋敷の最奥に厳重に封印していた。リサイクルショップの店員も、その価値を理解できず、まだ手元に置いているに違いない。


 そこへ、密偵が新たな報告をもたらした。


「公爵様。いくつかの魔道具を取り扱う店を調査しました。『わけあり道具店リカルメ』についてですが……、店の奥には、凄まじい魔力を放つ品が一つ、厳重に保管されているとのこと。その特徴は……、光さえ吸い込むような、漆黒の両手剣……」


 間違いない。終焉のグラムだ。


「しかしながら……、店主はマサルと名乗っており、その正体は、かつて魔王を討伐した伝説の勇者パーティーに所属していた鑑定士『神眼のマサル』である可能性が極めて濃厚とのことにございます」


「……伝説の勇者パーティーだと?」


 テオドルの口元が歪んだ。なるほど、だからこそ、あの女もまんまと匿われているのだろう。だが、それがどうした。


 テオドルは、哄笑した。追い詰められた獣のような、乾いた笑い声だった。伝説の勇者パーティーの一員だろうが関係ない。金で動かぬのなら、力で奪うまで。俺は公爵なのだ。自分の家の宝を取り返すのに、何の遠慮がいるものか。


「騎士団長を呼べ! 今すぐだ!」


 テオドルの声は、もはや怒りではなく、全てを破壊する衝動に満ちていた。


「城外れのリカルメとやらを包囲する。抵抗する者は一人残らず斬り捨てろ。目的はただ一つ、我が家の至宝、終焉のグラムの奪還だ!」


 騎士団を、私兵ではあるものの、公的な理由なく動かす。それが何を意味するのか、彼の狂気に染まった思考にはもはやなかった。

 あるのは、失墜した権威を取り戻すことへの執着と、自分を裏切ったフリーダ、そして自分をコケにした世界そのものへの、破壊的な復讐心だけだった。


 黄金の髪を振り乱し、血走ったサファイアの瞳をぎらつかせながら、テオドルは騎士団の先頭に立った。

 その先にあるのは、王都のはずれで静かに佇む一軒のリサイクルショップ。そして、彼が愚かさゆえに手放した、かけがえのない全てがそこにあることを、彼はまだ知らなかった。



 ~~~ 



 リカルメに差し込む午後の陽光が、埃をきらきらと踊らせる。

 フリーダが古びた魔導書のページを丁寧にめくっていた、その穏やかな静寂は、店の扉が蹴破られんばかりの勢いで開け放たれたことで無残に引き裂かれた。


 地響きのような足音と共に店内に雪崩れ込んできたのは、ミュラー公爵家の紋章を掲げた私兵騎士団だった。

 鈍色の鎧がぶつかり合う無機質な音と、抜き身の剣が放つ冷たい光が、温かみのある店の空気を一瞬で凍てつかせる。その先頭に立つ男の姿を認め、フリーダは息を呑んだ。


「テオドル様……」


 輝いていた金髪は乱れ、サファイアの瞳には焦りと狂気が混じり合った濁った光が揺らめいている。かつて夫だった男は、もはや見る影もなかった。

 その目は獲物を追い詰めた獣のように、店の奥の一点だけを凝視している。そこに鎮座する、光さえ吸い込む漆黒の両手剣、――終焉のグラムを。


「見つけたぞ……、俺の魔剣を!」


 テオドルの野獣のような咆哮が、店内に響き渡った。しかし、彼の視線がフリーダを捉えるより早く、屈強な背中が彼女を守るように立ちはだかった。


「何の御用でしょうか、ミュラー公爵閣下。当店は、強盗の類をお相手する場所ではございません」


 革のエプロン姿のまま、店主マサルは腕を組み、静かに言った。彼の声には、騎士団の威圧にも揺るがない鋼のような落ち着きがあった。


 テオドルは、鼻で嗤った。


「どけ、マサル。元勇者一行の荷物持ち風情が、この俺に指図するな。お前の素性など、とうに調べはついている」


「それは光栄ですな」


マサルは眉一つ動かさない。


「ですが、ここは俺の店だ。そして彼女は、俺の店の従業員だ。何人たりとも、ここで好き勝手はさせん」


「黙れ!」


 テオドルが怒鳴り、騎士たちが一斉に剣を構える。多勢に無勢。

 フリーダはゴクリと喉を鳴らした。だが、マサルの背中は微動だにしない。その揺るぎない姿に、フリーダは不思議と恐怖よりも強い信頼を感じていた。この人は、決して自分を見捨てない。


 業を煮やしたテオドルが、騎士たちに目配せをする。


「邪魔立てするなら容赦はせん! あの女ごと、店を更地にしてでもグラムは取り戻す!」


 その言葉が、フリーダの心に凍てつくような怒りの火を灯した。この人は、何もわかっていない。魔剣を力と権威の象徴としか見ていない。自分の過ちを認めず、全てを暴力で解決しようとする。


 騎士たちがマサルに襲いかかろうとした、その瞬間だった。


「おやめなさい!」


 凛とした声が店に響き渡る。それは、フリーダ自身の声だった。守られるだけのか弱い存在ではない。自らの足で立ち、自らの意志でここまできた一人の人間としての、決意の声だった。


 騎士たちの動きが一瞬止まる。しかし、構わずマサルを回り込んで前へ出たテオドルが、勝ち誇った笑みを浮かべて終焉のグラムへと手を伸ばした。


「そうだ、それでいい。お前は俺の物だ。ミュラー家の至宝として、再び俺の権威を示すのだ!」


(違う……!)


 フリーダは心の中で叫んだ。


(その方は、あなたを認めない。力や家柄で縛れる存在ではない。誇り高く、気高い魂を持つお方なのだから!)


 それは、この店で働き、多くの魔剣と心を通わせる中で彼女が確信した真実だった。彼女はただの復讐心で魔剣を売ったのではない。夫に飾り物として扱われる彼らを、もっと大切にしてくれる主の元へ送り出してあげたかったのだ。


 テオドルの指先が、グラムの柄に触れようとした、その刹那――。


 ズゥンッ、と空気が震えた。


「なっ……!?」


 終焉のグラムが、地鳴りのような咆哮と共に激しい光の衝撃波を放った。

 テオドルはまるで巨人に張り飛ばされたかのように無様に吹き飛ばされ、商品棚に叩きつけられて呻き声を上げる。


 驚愕に目を見開く騎士団と、呆然とするテオドル。その視線の先で、信じられない光景が繰り広げられた。


 漆黒の両手剣は、自らの意志でゆっくりと鞘から抜け出すと、ふわりと宙に浮き上がった。そして、まるで長年連れ添った主の元へ帰る鳥のように、滑らかな軌道を描いてフリーダの眼前に静かに降りてきた。


 フリーダは、導かれるようにそっと両手を差し出す。ずっしりとした、しかし驚くほど手に馴染む重みが、彼女の手の中に収まった。


 その瞬間、フリーダの魂に直接、荘厳で絶対的な意志が響き渡った。言葉ではない。音でもない。だが、はっきりと理解できた。


 ――汝こそ、我が主。


 強大な力が、奔流となって全身を駆け巡る。穏やかだった翠色の瞳に、誰も抗うことのできない威厳の光が宿った。フリーダは、ゆっくりと顔を上げ、無様に床に這いつくばる元夫を見据えた。


「テオドル様」


 その声は静かだったが、店の隅々にまで響き渡り、聞く者すべてを傅かせるような絶対的な響きを持っていた。


「あなたは、最後までご自身の過ちを認めませんでした。私の心を踏みにじり、ミュラー家の誇りを汚し、そして今、この聖なる魔剣をも力で奪おうとしました」


 フリーダは終焉のグラムを、まるで体の一部であるかのように軽やかに構える。


「この方は、あなたの道具ではない。そして私も、あなたの飾り物ではない」


 怯えた騎士の一人が、恐怖を振り払うように「ええい、かかれ!」と叫び、フリーダに斬りかかった。しかし、フリーダは慌てない。ただ静かに剣を横に一閃する。


 放たれたのは、斬撃ではなかった。殺意のない、純粋な力の波動。その波動に触れた騎士たちの鎧や剣が、カシャン、カシャン、と音を立ててひとりでに分解され、床に散らばった。武器を失い、丸裸にされた騎士たちは、ただ腰を抜かしてへたり込むことしかできない。


「な……、にが……」


 テオドルは、目の前の光景が信じられず、ただ震える声で呟いた。かつて自分が「価値もない」と侮辱し、捨てた妻が、ミュラー家最強の至宝に主として選ばれ、歴戦の騎士団を指一本触れずに無力化している。

 彼のプライドも、自信も、権威も、その光景の前で木っ端微塵に砕け散った。


「あなたの罪は、法の下で正しく裁かれていただきます」


 フリーダは冷徹に言い放ち、剣先を降ろした。ちょうどその時、店の外から多数の足音と鎧の音が聞こえてくる。騒ぎを聞きつけた王都の衛兵隊が到着したのだ。


 絶望に顔を歪めるテオドルを一瞥した後、フリーダは傍らで静かに成り行きを見守っていたマサルへと向き直り、ふっと安堵の笑みを浮かべた。


 マサルは、驚きと感嘆が入り混じった、それでいてどこか誇らしげな眼差しで彼女を見つめ返していた。それは、か弱き令嬢が真の強さを見出した瞬間であり、二人の関係が新たな始まりを迎えた瞬間でもあった。



 ~~~ 



 ミュラー公爵家が王家の裁きによって爵位を剥奪され、その財産の大半が元公爵夫人フリーダへの慰謝料として正式に認められてから、季節は一つ巡っていた。

 テオドル・フォン・ミュラーという名を失った男は、最後まで彼の側にいたリアにもあっさりと見限られ、今や王都のどこで何をしているのか、フリーダの耳に入ることはもうない。長きにわたる悪夢のような結婚生活に、ようやく完全な終止符が打たれたのだ。


 王都で最も人通りが多い中央広場の一角。かつては格式張った宝飾店が軒を連ねていたその場所に、ひときわ人々の目を惹く新しい店が、今日の開店を静かに待っていた。


 ガラス張りの大きな窓からは柔らかな陽光が差し込み、磨き上げられたオーク材の床を明るく照らしている。

 壁には、かつてリカルメの薄暗い棚に並んでいたのとは比べ物にならないほど丁寧に手入れされた魔道具や武具が、まるで誇らしげに胸を張るようにディスプレイされていた。


「本当に、夢のようですわ」


 真新しい革のエプロンをつけたフリーダは、感慨深げに店内を見渡しながら、そっと息を吐いた。

 あの日、絶望の底で夫の家宝を荷馬車に詰め込んでいた時には、想像もできなかった光景だ。隣で、同じように店の最終チェックをしていたマサルが、ぶっきらぼうな口調ながらも、その声には確かな温かみを滲ませて応える。


「夢じゃない。あんたが自分の手で掴み取った現実だ。……いつでも開店できるぞ」


 彼の言葉に、フリーダはこくりと頷く。その表情は、かつての控えめで地味な令嬢の面影はなく、穏やかな自信と輝きに満ちていた。自らの足で立ち、愛する人と、そして愛してくれる家族と、新しい人生を始めるのだという喜びに溢れていた。


「なあなあ、フリーダ! 俺様をどこに飾るか、もう決まったのか? やっぱ一番目立つ窓際がいいよな! 俺様の美しい刀身で客を呼び込むって寸法よ!」


 カウンターの上に置かれていた片手剣が、柄頭の宝石をチカチカと点滅させながら騒ぎ立てた。おしゃべりカリバーンだ。彼は結局、新しい持ち主の元へは行かず、フリーダの側にいることを選んだのだった。


「カリバーン、あなたは黙っていると本当に美しいのですから、少しだけ静かになさって。お客様が驚いてしまいますわ」


「なんだとぉ!? 俺様の魅力はこのトークだってのに、わかってないぜ!」


 ぷんぷんと光を明滅させるカリバーンに、フリーダはくすりと笑う。すると今度は、店の奥の炊事場から、いかめしい声が飛んできた。


「おい、女主人! 開店祝いの料理はできているのか! 今日のスープは火加減が命だと言ったはずだぞ! 手を動かせ、心を込めろ!」


 万能包丁の姿をした魔剣、クッキングマスターの叱咤だ。彼? もまた、フリーダの作る料理の味わいを高めることに生きがいを見出し、この新しい店の炊事場に収まっていた。フリーダは慣れた様子で「はいはい、今向かいますわ」と応じながら、マサルに悪戯っぽく微笑む。


「マサル。わたくし、本当にやっていけるでしょうか」


「……あんたなら大丈夫だ」


 マサルは、店の隅に静かに立てかけられた、荘厳な両手剣に一瞬だけ目をやった。

 光さえ吸い込むような漆黒の刀身を持つ、終焉のグラム。

 あの日、テオドルではなくフリーダを真の主と認めたミュラー家最強の至宝は、今や言葉を発することなく、しかし絶対的な信頼を以て彼女の魂に寄り添い、静かにその門出を見守っていた。力だけではない、フリーダの持つ魂の気高さと優しさが、気位の高いこの魔剣をも惹きつけたのだ。


 マサルは、そんな彼女の姿を眩しそうに見つめる。

 初めて店で会った時、震えながらも覚悟を決めた瞳をしていた公爵夫人。鑑定の才能を開花させ、自立していく姿。そして、最強の魔剣に選ばれ、己の力で運命を切り開いた一人の女性。その全てを、彼は誰よりも近くで見守ってきた。その驚きは、やがて尊敬へ、そして愛へと変わっていった。


「……行くか」


 マサルが手を差し出すと、フリーダは迷うことなくその無骨で大きな手を握り返した。二人は店の外に出て、真新しい看板を見上げる。


「さあ、開店の時間ですわ」


 フリーダが晴れやかに宣言する。マサルは何も言わず、ただ、彼女の手を強く、優しく握りしめた。


 教会の鐘が鳴り響き、新しい店の扉が、輝かしい未来へと向かって、ゆっくりと開かれていく。

 もうフリーダは、誰かのための飾りではない。孤独な夜会の主役でもない。愛する人と、個性豊かな魔剣たちと共に、新しい物語を紡いでいく、一人の店主として、今、ここに立っているのだった。

まず普通に窃盗では? って話には目を瞑っておいてくださいw


読んでくれた皆様、本当にありがとうございます!


 感想や誤字報告など、皆さんのお言葉が何よりの励みになります。どんなものでも気軽にリアクション頂ければとても嬉しいです! よろしくお願いします!


20250624 幾つかの細かな表現の変更、誤字修正を行いました。

20250706 同上

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
窃盗… は見えない見えない。おしゃべりカリバーン戻ってきたんだ、冒険者が手放しちゃった?
2025/07/01 00:20 退会済み
管理
鍵を侍女に持たせて妻が難なく出入りできる状態なら窃盗ではなく横領か…もしれない。 主人公は最終的に物でも金でも慰謝料貰ってるから、実は二重取りどころの額じゃないのかもしれない。けども! 個人的に、倍々…
王国の建国記念日を祝う盛大な祭りが開かれる。その席で、ミュラー公爵家は代々、家宝の魔剣を国王に献上し、その忠誠と武威を示すのが慣わしだった。  今年の献上品として、テオドルはコレクションの中でも特に見…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ