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犬がすっかり兄弟になりまして。  作者: 萬田ぷぷっぴどぅ


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犬がすっかり兄弟になりまして・38


 ショージとフスマを警察に渡し、さて施設に戻りましょうかと航が美馬と話しているときだった。

 かかって来た電話を切った警察関係者が航のもとへ来た。

「天道航さんですよね?ご同行願えますか?」

「は?」

 航と美馬は同時にキョトンとしたが、リクとカイを迎えに来いということかと納得した。

 だが、航はひとり両脇を刑事に挟まれ警察の車に乗せられ、心地悪い思いをしながら警察署へ連れて行かれた。

 そして通されたのは取調室だった。

「まずはご協力感謝します」

 目の前に座ったしゃがれた迫力のある年配の刑事はにこやかに頭を下げた。航もいえいえと頭を下げる。にこにこしているが絶対油断ならない人物だというのが雰囲気でわかる。気崩したスーツに無精ひげに荒れた肌。笑ってても刻まれてる額の怒り皺。テレビでよく見る典型的たたき上げデカではなかろうか。

「盲導犬を使って船か飛行機で運ぶと、よくおわかりになりましたね」

 はいはいそれね、と航はため息をつく。いよいよ本当のことを犬好きではない人たちに告白せねばならぬ時が来たようだと。

「ライが教えてくれたんです」

「ライ?」

「あの、爆弾着けられてたハスキー犬です」

「あれがライ?」

「はい」

「知ってる犬だったんですか?」

「はい。飼い主の露口さん共々、ドッグランでよく会います」

 この際火事の話は面倒くさいので割愛する。

「ライじゃなくて露口さんがおっしゃったんですか?盲導犬に偽装して運ぶようだと」

「いえいえ。露口さんは何も知らないです。慌ててたでしょう?あの現場でも。ライが教えてくれたんですよ。捕まったところで盲導犬がどうとか、出るまでの時間を稼ぐのどうとか言ってたって」

「犬が?」

「ええ。犬のライが」

 目の前の刑事も、後ろで何かを書きつけている刑事も顔を伏せて失笑した。

「犬の言葉がおわかりになるんですか?」

 あからさまにバカにした顔で訊いてくる刑事に、航はそんな顔になりますよね~とあきらめの境地で答えた。

「わかるんですよ、これが。信じられないでしょうけど」

 それどころかヒトに見えてる。でもここまでは教えてやらない。さすがに頭おかしいと思われるだろうから。いや、今でも充分おかしな人扱いになっているのだが。

「ライは知っている犬だとおっしゃってましたが」

「はい。しょっちゅうドッグランで一緒になりますね。うちの犬たちも含めてよく遊んでます」

「結構あなたに懐いてる?」

「そうですね。懐いてる……っていうのかな?好かれてはいますね、はい」

「じゃあ」

 刑事は机の上で手をゆっくり組んだ。

「そのライに爆弾をつけることは簡単だったでしょう?」

「んん~?」

 航は思い切り首を傾げた。これは……。

「え?もしかしてなんか疑われてます?」

 刑事はにっこりと笑った。

「爆発現場に都合よく現れ、盲導犬を使ったクルーズ船の密輸現場を都合よく暴き、空港まで都合よくたどり着く」

 言われてみれば本当に都合よくたどり着いたもんだと航も感心する。まさにお犬様様である。ヒトだけど。

「吐け!アジトはどこだ!?他に仲間は!?」

 机をたたいていきなり激昂する刑事に一瞬驚きはしたものの、航はまた別のことで驚いていた。

「え?そんなことも知らずに捜査してたんですか?」

「この野郎!!」

 航に掴みかかろうとする刑事をもう一人の刑事が押さえ、航は椅子から飛び退く。だがいたって冷静に言った。

「いや、僕、何にも知らないですよ。関係ないですって。自分ちの犬を、密輸ですか?それに使われそうになったんですよ。ケツの穴になんか入れられて、顔まで白く塗られて。そんな僕がなんで犯罪者の一味なんですか」

「全部知ってただろうが!」

「だから全部犬が教えてくれたんですって」

「そんな自己啓発本のタイトルみたいな言い訳通用すると思うなよ!」

「本当ですって」

「おまえは犯人の一味だった!だが自分の犬が密輸に使われると知って慌てて改心したんだ!そうだろう!?」

「うっわ、冤罪ってこうやって作られるんだ。引くわ~」

「正直に言え!今ならまだ罪は軽い!」

「だーかーらー。犬が喋ってることわかるんですって、僕。会話できるんですって、犬と」

 刑事は肩で息を整える。あらかた落ち着いたところで押さえていた刑事も離れ、航に椅子を勧めた。航も恐る恐る椅子に戻る。

「犬と喋れるなんて言って、誰か信じると思うか?あん?」

「いや、まず信じないでしょうね、誰も」

「わかってるならなんでそんな嘘つくんだ?あん?」

「嘘じゃないんですね、これが」

 航が腕を組んで目を閉じ深く頷くと、刑事はまた机を叩いた。

「ふざけるな!」

「ようするに僕が犬と喋れることを証明すればいいわけでしょう?今、ここで」

 航は目を開けると、人差し指で机を叩いた。2人の刑事は胡乱な目をした。

「誰か、犬か猫飼ってる人いません?話してもらいましょう。家族以外は絶対知らない家の中のこと」

 


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