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犬がすっかり兄弟になりまして。  作者: 萬田ぷぷっぴどぅ


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犬がすっかり兄弟になりまして・37


「天道くんとこの犬だっけ?」

 警察関係者たちの後ろでおとなしく立っている曹操とパーカーを見てムエイが言った。

「いえ。美馬さんのボディガードです」

「おお、ボディガード!それっぽいね。おいでおいで」

 ムエイが曹操とパーカーを手招きするがもちろん2頭は動かない。

「曹操。パーカー」

 美馬が呼ぶとふたりはすたすたと美馬のもとへ来た。

「おお。さすがだねえ。飼い主の言うことしか聞かないんだ」

 感心するムエイのところへ美馬は曹操とパーカーを導く。ムエイは「触ってもいいかい?」と美馬に確認してから曹操とパーカーを順に撫でた。

「はあ~、立派だねえ、格好いいねえ」

 ご満悦でムエイは曹操とパーカーを撫でている。頭を撫で、頬を伸ばしてぐりぐりし、肩も胸も「いい身体だ、いい筋肉だ」と撫でたり叩いたり擦ったり、いつぞやの美馬母の狼藉を思い出す。無言でそれに耐えている曹操とパーカーを見ている航は今にも吹き出しそうになるのを堪えるのに大変だった。正直何度も床のスリップ音のようなものが口から洩れた。

「お待たせしました!」

 貨物室から戻って来たゆうゆを連れて宮子が戻ってきた。

 結局警察の捜査が入ったことで出発が遅れている飛行機からゆうゆを下ろし、宮子夫妻はふたりだけでイギリスへ行くことになった。

「突然のことだから、ちょっとだけゆうゆに説明させてもらってもいいかしら?」

「ええ。もちろんです」

 宮子は小型犬用のペットクレートを下に置くと、扉を開けた。どうやって収まっていたのか、中から等身大の少女の形をしたロリータファッションのゆうゆがにゅるりと現れた。

「ちょっともう、なになになになんなの。怖いんですけど」

 ガタガタと震えながらも気の強い口調で出てきたゆうゆに航は目が座った。そりゃそうですよねー、宮子さんも抱っこできますよねー、しょせんチワワですもんねー。

「ごめんね~、ゆうゆ。イギリスにはパパと行ってくるから、日本でお留守番しててくれる?突然決まっちゃったの、ごめんなさいね」

 眉を下げて甘い声で諭す宮子だが、すらりとしているとはいえ腕の中には背の高いロリータファッションの少女を軽々と抱えている。

 ゆうゆは宮子の肩に手をつき、はっとして顔を放す。

「え!?まさかジジイのところに預けられるの!?1か月も!?ムリなんだけど!」

 安定の口の悪さである。だが何故だか航は落ち着く。

「このお姉さんのところはとても居心地の良いホテルらしいから、お利口にして待っててくれるかな?」

「ホテル?ホテルなの?ホテルならいいわ、我慢できる。でも広くて綺麗なホテルじゃないと……」

 言いかけているところで宮子はぎゅっとゆうゆを抱き締めた。

「んも~、お利口さん!ゆうゆはホントお利口さんだね!」

 ゆうゆの口からぎゅむと変な音が漏れる。

「寂しいけど我慢してね!ママ、お土産いっぱい買ってくるからね!」

 ぎゅうぎゅうと抱きしめるものだから、ゆうゆの口から舌がべろりと出ている。いや、チワワだからいつも出ているのか?などと航が思っていると、宮子の夫が「いい加減にしなさい、ゆうゆが死にそうだよ」と宮子を剥がした。

「じゃあ、ママとパパ、行ってくるね」

 名残惜し気に腕の中のゆうゆに言うと、宮子はペットクレートの中にゆうゆを戻そうとした。

「一緒にお見送りしますよ」

 航は言って、ゆうゆを受け取ろうと手を伸ばす。反射的にゆうゆも航に移ろうとして、はたと止まった。

「あんた知ってる」

「お。覚えてたか」

「誰だっけ?」

「覚えてねーじゃんよ」

「……誰だっけ?」

 思い出せないながらも、顔をじっと見て航の腕の中に収まる。そして腕の中のゆうゆの軽さに航は感動する。小型犬って軽い。見た目は普通のロリータファッション少女なのに。

 何度も振り返る宮子とその夫を見えなくなるまで見送り、さて帰ろうかとしていると、セイヤが美馬に言った。

「美馬さんの施設って、たしかドッグカフェとかドッグランもありましたよね?」

「ええ。ドッグカフェは犬を連れてなくても利用できますので、ぜひいらしてください」

 美馬が笑顔で答えると、セイヤはゆうゆの頬を撫でながら言った。

「ええ。うちも犬を飼っているんで。ゆうゆ。寂しくないように、タマちゃん連れて会いに行くからな。待っててね」

「ちょっ、えっ、なに、やめてよ……!」

 ゆうゆは焦って真っ赤になる。そしてそっぽを向いてぶつぶつと言った。

「……来るんなら……ひとりで来なさいよ……」

 荒れそうだなと航は思いながら、ゆうゆをペットクレートに押し込んだ。頭から突っ込んでもデカいロリータファッション少女はするすると四つん這いでクレートの中に収まっていった。扉を閉めてもう一回中を確認する。扉の網目からゆうゆの顔は確認できるが、奥の方はどうなっているのか皆目見当がつかなかった。あまりにじろじろ中を確認しようとしていたので、

「なによ」

 と、ゆうゆに訝しがられた。



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