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犬がすっかり兄弟になりまして。  作者: 萬田ぷぷっぴどぅ


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犬がすっかり兄弟になりまして・36


 2~3センチぐらいの大きさのカプセル状のものがふたつずつ混ざったリクとカイのウンコを警察に渡し、航と美馬は空港へ向かった。

 当然のごとくリクとカイも連れて行こうとしたが警察に止められる。まだ体内に何か細工がされてないか検査されるらしい。涙目で着いてきたがるリクとカイを航は宥めた。

「俺だってすぐ連れて帰りたいんだけど、こればっかりはしょうがないから。身体ん中まだなんか残ってたらイヤだろう?俺だって心配だよ。だから、な?後でちゃんと迎えにくるから。な?」

 しぶしぶ警察について行くリクとカイを見送り、航と美馬、曹操とパーカーは航の車に乗った。


 爆弾を着けたハスキーを街に放ったと警察に脅迫メールが届いたらしい。メールには、ハスキーが身に着けていたベスト型ハーネスが爆発する画像が添付されていたという。イタズラだと警察は思ったらしいが、実際にそれを身に着けたハスキーが現れたので、警戒態勢に入ったという。

 そしてそれは本当に爆発し、美馬からの電話で一斉に警察が動いたのだそうだ。

 とはいえ爆発物とも違法薬物とも全く関係の無い一般市民が「犬がそう言っている」と言って動く警察ではない。そもそもアタリはつけてあったのであろうが、ギリギリのところでショージとフスマを助けられたのは、やはり美馬の電話と、そしてムエイと宮子のおかげであった。



「ショージ!フスマ!」

 航と美馬、曹操とパーカーが走って空港のロビーに駆け込むと、警察官に保護されたショージとフスマを見つけた。美馬は即座に駆け寄り抱きしめた。

「怖かったねえ……、怖かったねえ……」

 美馬は泣きながらふたりを撫で、ふたりも泣きながら美馬にしがみついた。

「よかった……、間に合ったんですね……」

 航が息を切らしながら言うと、カウンターの前で揉めている親子を刑事が目で指した。

「あちらの方たちのおかげです」

「え?あれ……?」

 見覚えのある車椅子に乗った年配の男性とその車椅子を押す若い男性。そして妙齢の綺麗な女性とその夫らしき人物。

「お父さんのせいですからね!文句ばっかり言うから、飛行機まで遅れたじゃないの!」

「おまえが酷いことしようとするからだ!もう飛行機なんか乗らなくていい!」

「あの、ムエイさんですか……?」

 航は恐る恐る声をかけた。

 親子は恐ろしい顔で航を振り返ったが、一瞬にして柔和な表情に変わった。

「あら」

「天道くん」

「あ!聞きましたよ!火事からわんちゃんをたくさんお助けになったんですってね。素晴らしいわ」

 目を輝かせて言う宮子に、いったいどこから聞いたんだろうと航は冷や汗をかく。ムエイの後ろでセイヤが苦笑いしている。間違いなくムエイからだ。仲が良いのか悪いのかこの親子。

「そうだ、天道くん、聞いてくれ!宮子がゆうゆまでイギリスに連れて行くと言うんだよ!イギリスだよ、イギリス!何時間かかるんだ!その間ずっとゆうゆは貨物室で我慢しなきゃならないんだぞ!悪魔の所業だ!」

「失礼ね!誰が悪魔よ!仕方がないでしょう!?ペットは貨物室に預けるしかないんだから!」

「さっきのトイプードルは飼い主と一緒に入ってたじゃないか!」

「あの子は介助犬なのよ!ペットとは違うの!」

「じゃあゆうゆも介助犬と言って中に入れてもらえ!」

「無茶言わないで!ゆうゆのどこが介助犬に見えるのよ!」

「おまえはゆうゆが大事じゃないのか!?」

「大事に決まってるでしょう!?だから連れて行くんじゃない!」

「もういい!お父さんが預かる!ゆうゆは置いて行きなさい!」

「タマちゃんの面倒も見れなかったくせに!お父さんに預けられるわけないじゃないの!」

「あのう……」

 一向に収まりそうにないので、思い切って航は口を挟んでみた。

「イギリスにお引っ越しなんですか?」

「いえ。ひと月ほど仕事で」

 ふうと一息つく宮子に、航は「ああ、結構長いですねえ」と言った。ペットホテルを勧めてみようかと思ったが、予算的にも気持ち的にも、もう連れて行った方が良いと判断されたのだろう。

「あの、よかったらうちで預からせていただけませんか?」

 フスマを抱っこした美馬が近づいて来た。いつもの光景だが、細いとはいえ成人女子を軽々抱っこしている美馬のなんと頼もしいことよ。見えているのが自分だけというのが実に惜しいと航は思った。

「この子たちを助けてもらったお礼です。お留守の間、ぜひその『ゆうゆ』ちゃんの面倒を見させてください」

「助ける?」

 首を傾げるムエイ親子に、美馬の後ろにいた刑事が言った。

「我々がここに着いたときもこちらの方たちが『あのトイプードルは介助犬だから客室に入れるんだ』っておっしゃってて」

「……いったいいつから揉めてるんですか……」

 呆れて航が言うと、ムエイの後ろでセイヤが恥ずかしそうに眼を伏せた。

「かれこれ1時間になります……」

 そしてたぶんエンドレスで同じことを言っているのであろう。宮子の夫も宮子の後ろでため息をついていた。

「私、犬の保護施設を経営している美馬といいます。施設内には病院もドッグランもありますし、『ゆうゆ』ちゃんにはきっと満足してもらえると思います」

「以前、お話した保護施設ですよ。僕も利用してたから保証します」

「天道くんがそう言ってくれるなら、大丈夫なんじゃないか?」

「でもそんな、初めて会った方に……」

 ムエイの援護にもまだ渋い顔をする宮子に航は耳打ちする。

「実はあの火事場から犬たちを助けたもうひとりの人です。で、そこから助け出された犬を預かってた施設です。あの2頭もそう」

 途端に目を輝かせると、宮子は美馬の手を取って言った。

「ぜひよろしくお願いします!」




 

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