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犬がすっかり兄弟になりまして。  作者: 萬田ぷぷっぴどぅ


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犬がすっかり兄弟になりまして・30


 結局日付が変わる直前、乗り捨てられた車の中からゴールデンレトリバーとラブラドールレトリバーの被毛が見つかったと警察から知らされた。色はゴールドとブラック。間違いなくリクとカイだろうということだった。

 憔悴している美馬と曹操・パーカーを自分の車に乗せ、航はマンションへ戻った。次の日も美馬たちを送りがてら、航も朝から施設にいた。何ができるというわけではない。だがマンションでひとりただ待つより、ショージとフスマの情報が入る施設にいた方が良いと思った。

「ごめんなさい、大変なときに……」

 不安げな表情で事務所に来たのは露口だった。

「ライくん、見つかりましたか?」

 美馬が迎えると、露口は頭を横に振った。

「まだ……。それよりリクくんとカイくんの方が」

 露口と目が合った航は立ち上がった。

「やっぱりショージやフスマと一緒にいるみたいです」

「まだどこにいるかはわからないんですか?」

「そこまでは」

 航も首を横に振る。

 しばらくの沈黙ののち、露口はため息をつくと言った。

「まさかと思うんですけど、駐車場でたまたまリクくんとカイくんを見つけて、ライも追いかけたんじゃないかって……」

 美馬も航も水口も、事務所内の誰もその可能性を否定できなかった。

 ライはリクとカイと仲が良い。と本人は思っている。そしてライは好奇心が旺盛だ。ただ事ではない何かを感じたら、間違いなくその方向へ走って行ってしまう。繁殖場乗り込み事件のときのように。

 そしてなにより、乗り捨てられていた車の近くに、シベリアンハスキーの被毛が落ちていたのだ。ライの被毛かどうかわからないし、ライの被毛であったとしても、同時刻同じ場所にいたライの被毛がたまたま飛んで来たものかもしれない。一緒に連れ去られたという決め手にはならないのだ。

 だがそれでも、保護施設内の誰もが、ライはリクとカイを追っていると思っていた。

 ライは大型犬の部類に入る。警察にも保健所にも迷子の届け出は出した。まだ1日も経ってはいないが、あれだけ目立つ犬が今の今までなんの目撃情報も無いのがむしろ不自然なのだ。それはリクとカイも同じことだ。

 誰も口にできないが皆が不安なのはただひとつだった。

 犯人がショージとフスマに固執するのは、なにか犯人にとって利益があるからだ。その利益が何なのか航たちにはわからないが、その利益を享受するまではおそらくショージとフスマは無事だろう。

 問題はリクとカイ。そして一緒にいるかもしれないライなのだ。

 勝手について来た3頭には、犯人にとってなんのうまみもないはずだ。むしろただデカいだけで言うことも聞かない犬だったら邪魔なので、殺される確率の方が高い。

 だが本当に邪魔だと思ったら、車を乗り換えた駐車場で捨てるか殺すかして、その辺の林の中にでも捨てておけばよかったのだ。いまのところ近くの草むらや川から犬の死体が見つかったという話は聞かない。まだ捨てられてないだけなのかと、青くなりながら航は考えるが、どうにもリクとカイが死んでいるとは思えないのだ。家族の希望的観測でしかないのかもしれないが。

 普段は出ない貧乏ゆすりで揺れる膝を手で押さえようとすると、横の露口が震えているのが見えた。

「……大丈夫ですよ。ライも、リクもカイも、うまいこと立ちまわってますよ」

 露口は航を見上げると、泣きそうな顔で頷いた。

 根拠の無い慰めと言えば慰めなのだが、やっぱり航にはリクもカイもまだ生きていると確信があった。

 わざわざ訓練所から盗まれたトイプーのショージとフスマを取り返しに来た犯人。

 リクと同じゴールデンレトリバーもカイと同じラブラドールレトリバーも訓練所から盗まれていた。

 もしルイたちがまだ訓練所に戻っていなかったら、ルイたちも連れ去られたのだろうか。

 たまたま乗っていたリクとカイに、犯人は喜んだのではないか。

 わざわざ訓練所から盗んだ理由はなんなのだろうと航は考えていた。



 クスリの実験にされた、何かお腹に詰められていた。

 ルイの証言と動いている警察。なんとなく航でも察しはついているが、とにかく何か早いところリクとカイ、そして一緒にいるかもしれないライを助け出さなければ大変なことになるのは明らかだ。だがこれ以上素人の航がどこから何を調べようもない。頼みの綱の『犬がヒトに見えて会話ができる才能』も、現場にいた当事者たちが近くに誰もいなくなったので、話の聞きようもない。今から他県の保護施設にに預けられているという、あの繁殖場から保護した犬たちに会いに行く時間も無い。いや、今からでも会いに行って話を聞くべきか……。

「……いや、待てよ」

 航ははたと思い出した。

 あの近くで、近くと言ってもほぼ航の実家の裏で、腹を裂かれて子供を取り出され放置されていた女性がいたことを。

 航はスマホを取り出すと、ブロックを外して電話をかけた。

「もしもし!藍沢さん!」

「いや~、天道くん、嬉しいなあ、やっとブロック解いてくれたんだ」

 ご陽気な声だった。

「今どこですか!?橋本さんいます!?」

「何言ってんの。おじさん今ドッグランいるよ。なに、はしもっちゃんに用事?妬けるなあ」

「橋本さんは!?」

「むこうだよ。今日も何か狩ってんじゃない?」

「会いたいんです!連絡先教えてください!」

 えー、なにー、妬けちゃうー、ずーるーいーなどとぶうたれながらも藍沢は、航を橋本のところまで車に乗せて行った。


  


 

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